まさに
群衆の心理術
弁護人〈ロベスピエール〉は腐った社会を正すため、議員に立候補する——!
僕が大好きな漫画 『群集心理』を簡単5分でご紹介します。
結論
この本が教えてくれるのは、群衆の心の掴み、あやつる方法です。
感想
『群集心理』との出会い
『群集心理』は、NHKのテレビ番組「100分de名著」を観て知っていました。
でも、よく分かりませんでした。
人の集まりを群衆と呼ぶのは小馬鹿にしてるようで嫌でしたし、人の心を操るなんて非人道的だと思いました。
しかし、それから少しして、本屋で〈講談社まんが学術文庫〉の『群集心理』があることを知り、とりあえず読んでみようと思いました。
何事も、使う人次第だと思ったのです。
簡単あらすじ
「群衆」とは何か?
群衆は……ある刺激によって、あらゆる感情や観念を操られた個人の集合である。
そして、群衆にある個人はもはや自分の意思を失った一個の自動人形となる。
1774年 フランス 絶対王政の時代
フランス国王・ルイ16世の戴冠式が行われていた。
民衆は「国王陛下万歳!」と歓喜しています。
動物にせよ、人間にせよ、生物の群れは本能的に権力者に屈服する。
その権力を圧倒的にするものが「威厳」である。
人の集団は小さな権力には反抗するが、圧倒的な権力には簡単に屈服する。
1784年 アルトワ州アラス
ある法廷で、1人の男が身に覚えのない罪で裁かれようとしています。
「裁判長! 彼は無実です」そう発言したのは弁護士〈マクシミリアン・ロベスピエール〉。
告発人は聖職者。
当時、聖職者は第一身分。貴族が第二身分、その下に第三身分の民衆という絶対的な階級制度がありました。
しかし、〈マクシミリアン〉は、告発人が女性にフラれた腹いせに、その兄である被告人に盗みの罪を着せていたことを明らかにします。
そして、被告人の心に傷をつけた罪と慰謝料を請求し、こう言います。「聖職者の特権にあぐらを書くなよ。罪の償いに身分や地位など関係ないのだ!!」
裁判が終わると、妹の〈シャルロット〉が功を労うように「さすがは貧しき者の弁護士、ロベスピエール」と嬉しそうに言います。
〈マクシミリアン〉は「おかげ様で上流階級に嫌われていつも生活はカツカツだ」とぼやくように言って表情は変わりません。
ふと目線の先に路地に座り込む人たちが見えます。
「最近、増えてきたね。道ばたで寝てる人……」と、〈シャルロット〉は彼らを見て悲観します。
ひどく痩せた小さな男の子もいました。
「私たちは運がよかった。父には捨てられたが祖父に助けられ、奨学金で教育を受けるチャンスがあったからね」〈マクシミリアン〉はそう言って振り向きもせずに歩いていきました。
その日の夕食、〈シャルロット〉はパンとスープを眺めながら、路地にいたあの男の子のことを考えていました。
〈マクシミリアン〉は言います「貧富の差は無くならない。身分制度がある限りね」
しかし「希望はある」とも言います。
それは、国王陛下が変えてくれるのだと熱弁します。
これまでの王と違って聡明で新しい考えを受け入れる柔軟な度量を持っているからだと言うのです。
1788年
貴族たちは国王に〈三部会〉の開催を要求しました。
(※三部会……聖職者代表、貴族代表、平民代表の議員で構成された議会)
なぜ、そんなことをしようするのかと言うと、農作物が不作で第三身分からの税収が思うように取れないため、王は貴族の免税特権を廃止しようとしていたからです。
王といえども、三部会の決定(国民の代表が決めたこと)を無視することは出来ません。
だから、貴族たちはこれに勝って免税特権を守ろうと考えたのでした。
——すぐに三部会の招集が決定されます。
〈マクシミリアン〉は三部会の議員選挙にはまったく興味はありません。
パン屋でパンを大量に買うと〈シャルロット〉と共にあの路地へと足を運びます。
あの痩せた男の子〈メルシェ〉に会うためだ。久しぶりに会うようです。
「おーい、メルシェ」
……2人は息を飲みました。
〈メルシェ〉は動かなくなっていました。足の骨を折り、飲まず食わずだったらしいのです。
「すまない、メルシェ。古びた社会制度にいつまでも執着する俗物のせいで犠牲になるのはいつも弱者の……さらに弱者」〈マクシミリアン〉は〈メルシェ〉を抱きかかえて叫びました。「私は三部会代議員に立候補する。陛下とともに新しい社会をつくる……生涯をかけて!!」
群衆心理とは
著者のル・ボンはこう分析しています。
1. 群衆は衝動的で、動揺しやすく、興奮しやすい
2. 群衆は暗示を受けやすく、物事を軽々しく信ずる
3. 群衆は感情が誇張的で単純である
なんか、ものすごい言いようです。
まるで、人間は安易に感情的になり、周囲に流されやすく、しかも愚直だと見下しているように聞こえます。
果たして本当にそうなんでしょうか。
そして、群衆を操る手段として、次の3つがあげられています。
断言
反復
感染
この3つの手段を効果的に行うことで、群衆は指導者の意思に従ってしまうと言います。
〈断言〉とは、言い切ること。
根拠がないことを言い切ることが、群衆を興奮させると言います。
例えば、選挙の時に言うマニフェスト(公約)。「私が当選した暁には〇〇をします!」と言う約束事です。
でも実際に公約が果たされたかどうかを確かめたりはしないことがほとんどです。
出来るか・出来ないか、ではなく、物事を単純化して言い切ることが重要だと言います。
〈反復〉とは、その断言した言葉を繰り返すこと。それによって、群衆の心に刷り込まれていくのだと言います。
同じことを、少し言い方を替えて何度も繰り返すほどに効果があります。
そして〈感染〉とは、反復して刷り込まれた群衆の心は他の人にも広がっていく。これを感染と呼びました。
群衆はただ何かに熱狂したいだけなのかも知れません。
読み方
まずは客観的に読んでみて、現実的に当てはまっているかを考えてみました。
個人に対してというより、大勢の人に対して演説などを行う際に、効果がありそうなことは分かりました。
まさにテレビのCMや広告も何度も繰り返し繰り返し、キャッチコピーや簡単で耳障りのいい言葉を断言しています。
会社でのスローガンなんかも当てはまる部分を感じます。
『群集心理』はビジネスなどにも役立ちそうです。
最後に
まずは漫画で読むことをオススメしていますが、書籍で読むのもいいと思います。
書籍は、図書館や中古本など、たくさんあると思います。
ぜひ探してみてください。
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