【解説】水木しげる『ねずみ男の冒険』|結論|感想|読み方

ねずみ男 イメージ

まさに

ズル賢い商談

ねずみ男は巧みな話術で、夢見る人・悩める人に徳を売って金品を巻き上げる。 さて、今日は誰が夢を見るのか——。

よーいち
ねずみ男が嫌い? とんでもありません! 資本主義社会の見本としてとても参考になりました。

僕が大好きな漫画 『ねずみ男の冒険』を簡単3分でご紹介します。

結論

この本が教えてくれるのは、幸せな人生・幸せな社会とは何かです。

 

感想

『ねずみ男の冒険』との出会い

ねずみ男が大嫌いでした。

不潔でずる賢くて、正義とは真反対の所にいる妖怪。

でも、ねずみ男がとても人間的で「嫌い」という言葉で片付けられないと思えるようになってきたのは40代になってからでした。

 

簡単あらすじ

この本は、ねずみ男にまつわる短編集です。

その中から、とても印象深かったおすすめのベスト1の短編『幸福の甘き香り』をご紹介したいと思います。

ねずみ男は百姓の男の家を訪ねます。

そして自分を「人生について語り、夢を売り歩いているセールスマン」。ひいては、「幸福のセールスマン」だと言うのです。

ある百姓の男の家に訪ねてきたねずみ男

 

ねずみ男は〈夢の価値〉や〈人生がいかに不幸せなのか〉を”紙芝居”で説明し始めました。

●ある忍者の場合

貧乏な〈初老の男〉は畑仕事をしながらこう思う。毎日せっせと働いていれば、いつかきっと幸せになれると。

そこにねずみ男が現れて「あんたバカね」と指を差す。世の中のエライ人はみんな、人の力を利用して幸福になっている。「お前のような考えをしていたら死ぬまで苦労するぞ」と。

だったら、働かないで幸せになれる方法があると言うのか?

——ということで、ねずみ男は”忍術の巻物”があれば、そのアイデアを売ったり、術を利用すればお金が儲かると言うと、初老の男は道で拾った巻物があると言って見せました。

忍術の巻物

ねずみ男は「ちょっとみせテ」と巻物を確認するふりをして持って逃げると、早速〈術〉とやらをを試します。崖から飛ぼうとしますが体は真っ逆さまに落下し、財布は落ちて衣服は脱げてしまいます。百姓の男はそれらを見事にキャッチして「だからこの商売はやめられねえんだ」と言って去っていくのでした。

●ある役人の場合

江戸時代。

あるガリベンの男。

勉学 ガリ勉

……将来の幸せのために昌平校しょうへいこう(=大学)を出て、女遊びもせず、貯金をし、家を建て、妻をめとり、子供を得て大学にやる。全て老後を幸せにするために……。

しかし、死ぬ間際に自分は幸福ではなかったと悟る。なぜなら、幸福の準備だけして味わうことを忘れていたから。

●ある事業家の場合

成功することが幸せの目標として、”努力”を信条とした商人の男がいた。

商人 仕事

やがて彼は成功者となった。

しかし、膨大な仕事量のせいで家庭をかえりみぬ状態が何年も続き……あげくに過労死してしまった。

紙芝居を見終わった百姓の男は「では、自分の快楽を見失うわぬ遊び人はどでしょう?」と問います。

ねずみ男は「先には煉獄れんごくが待ちかまえている」と、”ある解決”を示します。

それは、”天下もち”というお餅。

天下もち

食べてなくても食べたと同じ快感を味わったとしたら——成功者と同じ気持ちになれば成功したのと同じではないか、という理論。

百姓の男は思いつくままに夢を口走る。「美女をめとり、お金をたくさん持って、うまいものを食べたい」そして、その夢は叶えられる。

……実はこれ、催眠術で眠らせて、その隙にお金をくすねるという詐欺さぎ

しかし、百姓の男の財布には3文しか入っていなかった。

ねずみ男は「あんなに熱演して3文じゃモトがとれねえ」言い残して次の地へ旅立っていく……。

 

ねずみ男=資本主義社会

18ある短編の中で、様々なキャラクターたちは皆、自分や周りの幸せを追い求めています。

しかしながら、そう簡単に幸せを掴むことはできません。

なぜなら、労働・活動=幸せではないからです。

ねずみ男はお得意の話術で、自分が利益を得るために他人に得を与える弁論を展開します。それは時に詭弁きべんだったり、説明不足だったり、一方は徳をしてもう一方は損をするような、恣意的しいてきで八方美人な情報です。

一見、詐欺さぎのようにも見えますが、ねずみ男には”この薄汚れた社会こそが真実だ”という理念があるようです。

それはまさに”資本主義社会”です。水木先生は資本主義社会と幸福は相容あいいれないものと悟られていたのかもしれません。

ねずみ男を資本主義(=お金儲け至上主義)の化身として読んでみると、この『ねずみ男の冒険』や『ゲゲゲの鬼太郎』でのこすずるい振る舞いもすべてが「なるほどな」と、腑に落ちてきました。

 

読み方

ねずみ男はまるでプロのビジネスマンです。

誰かが求めれば誰かが困ったとしてもそれはビジネスになる——そんな商談を見ているかのようでした。

資本主義の利点と欠点——それはねずみ男の姿そのものです。だから、愛おしくて憎らしい可愛い存在でもある。

話によってねずみ男の衣装(布切れ)の柄がボロ・和柄・花柄と変わっています。これは資本主義社会の風潮を表しているのかもと想像しましたが、水木先生にそんな意図はあったのか、気になります。

 

最後に

原作コミック、スピンオフ、ガイドブック、小説や、アニメ、映画、たくさんあります。

ぜひ探してみてください。

ねずみ男の冒険 妖怪ワンダーランド1 (ちくま文庫) [ 水木しげる ]

価格:946円
(2023/3/9 15:49時点)
感想(4件)

  • この記事を書いた人
  • 最新記事

よーいち

高校中退→ニート→定時制高校卒業→フリーター→就職→うつ→休職→復職|うつになったのを機に読書にハマり、3000冊以上の本を読みまくる。40代が元気になる情報を発信しています。好きな漫画は『キングダム』です。^ ^

-漫画
-

© 2024 Powered by AFFINGER5