まさに
正義の殺人
「俺に殺人は許されている」 ある思想の実践が人類や社会全体のためになるのなら……その時、非凡人は法を踏み越える権利を持つ——!
今回は【講談社まんが学術文庫】の中から『罪と罰』を簡単3分でご紹介します。
結論
この本が教えてくれるのは、あなたの誇りとは何かです。
感想
『罪と罰』との出会い
【まんがで読破】の罪と罰を読んでみて、恥ずかしいくらいに共感しました。
別の漫画でより深く理解したいと思っていたら【講談社まんが学術文庫】でありました。
しかも、作画の岩下博美先生の絵は外国人がドンピシャで、男性も女性も丁寧に描かれていてとても綺麗なのです。
簡単あらすじ
殺人は許されている。
いや……俺にはその権利がある!
〈ラスコーリニコフ〉は屋根裏の小さな部屋で思案した。
彼は法学部の学生だったがもう行っていなかった。貧乏が原因だったが、家庭教師のアルバイトも辞め、下宿の家賃も随分滞納していた。
——1865年 ロシア ペテルブルグ
この時代のロシアは農奴解放という歴史的な事件が起き、人々は自由な社会の到来を感じていた。若者は皆”新しい世界”について熱心に論じ合い、我先に革命論を学び、受け売りした。
一方、地主に有利な解放によって生活の場を失った農民達は職を求めて都市部に流入し……その貧困は新たな社会問題となっていた……
不況……格差社会……人々は新しい社会規範を求めていた……。
「730歩!」ラスコーリニコフは下宿からある建物までの歩数を数えていた。もう何度も来て、歩数を覚えてしまっていた。
建物に入り、階段を登って4階に向かう。彼が向かう部屋の向かいに住むドイツ人の部屋から荷物が運ばれている。引っ越しをするようだ。
呼び鈴を鳴らすと老婆が顔を半分だけ見えるように開け、ラスコーリニコフが挨拶をすると中へ入れた。
彼は部屋に入るなり、間取りを確認し始めた。そして自然を装って懐中時計を渡すと、老婆は時計をギロッとした目で隅々まで凝視した。老婆は高利貸しだった。
ラスコーリニコフは数日前、偶然寄った酒場でこんな話を聞いて”あれ”を思いついたのだ。
見知らぬ学生達が言うには、老婆は大金持ちで、利子は月5%も取っている!(ときには7%も取る)
次は老婆の腹違いの妹〈リザヴェータ〉の話。彼女は35歳で、老婆に昼夜こき使われているのに稼ぎは全部、手渡しているらしい。
そして学生はこう言った。「あの強欲ババアなら殺されてもいい……そう思わないか?」こうも続けた。「一方には社会に害をなし、財をたくわえ、今にも死にそうなババアがいる。一方には才能はあるが援助の手がなく消えゆこうとする人間がいる。ババアのその金があれば何百という立派な仕事が成し遂げられ、社会が改善されるんだ!」
「1ルーブル50コペイカ」(とても安い金額のようです)
「そ、それで結構です!」
老婆が奥の部屋に入るとラスコーリニコフは耳をすました。タンスの1番上の引き出しからお金を出した……のか。
契機
ラスコーリニコフは居酒屋で酒を飲んでいた。
すると、貧乏くさい中年男が相席してきて勝手に喋り出した。
「お役所で九等官をやっておりましてな……ところが今の世の中は新思想、社会改革とやらで役所も定員改正されてクビですよ」
中年男は娘が1人、再婚した妻と幼い連れ子が3人いると言う。今は借金をして家財を質に入れて生活しているらしい。そんなある日、妻が娘〈ソーニャ〉に売春をすすめ、3時間ほどして30ルーブルを持って帰ってきたと涙ながらに語った。
ラスコーリニコフの元に1通の手紙が届いた。母からだった。
妹〈デューニャ〉が貧乏を理由に金持ちの男と結婚すると書かれていた。それはつまり、合法的な妾となって、兄であるラスコーリニコフの学費を稼ぐという同じ意味だった。
……俺に何ができると言うんだ!? 大学を卒業して弁護士になって金を稼ぐ!? そんな悠長なことは言ってられんぞ!
街に出たラスコーリニコフは通りでリザヴェータが露天商の夫婦と話しているのを見た。
どうやら老婆に内緒でこの露店で働くらしい。「明日7時」
ラスコーリニコフは部屋に戻ってベッドに突っ伏した。「なんてことだ……」
決行
6時を知らせる鐘が鳴った時、ラスコーリニコフは偽のたばこケースを作ってそれをヒモをきつくぐるぐる巻きつけた。
外に出た彼は路地の庭番小屋が無人なのを目視してからそこにお造作に置いてあった”斧”を手に取り、あの場所へと足を進めた。
誰にも見られないように建物に入り階段を登る。ドクン、ドクン。動悸がだんだん強くなる。
呼び鈴を鳴らして部屋に入ると、ラスコーリニコフはさっそく偽たばこケースを老婆に渡した。
老婆は「明るい所で見させてもらうよ」と言って背を向けた。
その瞬間……!
ラスコーリニコフは隠し持っていた斧を老婆にの頭頂部に力一杯に振り下ろした。
老婆が頭から血を流してその場に倒れると、ラスコーリニコフは彼女のポケットから鍵を抜き取り、奥の部屋に向かった。思った通り、たくさんの金品が隠してあった。
——外から足音が聞こえる。
その足音の正体はリザヴェータだった。
ラスコーリニコフはすかさず彼女の頭に斧を振り下ろした。
……逃げろ!! 逃げるんだ!! ラスコーリニコフは斧についた血と衣服についた血も拭き取った。
すると、部屋のドアが開いていることに気がついた。リザヴェータが開けたのか? いや、ドアは開いたままだった!! ラスコーリニコフは慌ててドアの内鍵を閉めた。
「おいバアさん! 来たぜ」男がドアを開けようとしてきた。が、ドアが開かないので「庭番に開けさせるぜ」と言って引き返して行った。
その隙にラスコーリニコフは何とか脱出する。
そして、斧を元の場所に置き、部屋に戻ると、そのまま泥のように眠った……。
罪の意識と罰の執行
ラスコーリニコフは夢を見る。あの光景を、あの瞬間を。
飛び起きた彼は衣服に血がついていないか何度も調べるのを繰り返し、盗んだ金品を壁紙の裏に隠した。しかし、それでも悪寒は止まらない。冬物のコートを引っ被って眠ったが、5分後に再び飛び起きる。そして、ポケットと靴下に血がついているのを見つけた。
「もう罰は始まっているのか……!?」
ラスコーリニコフの精神にはすでに罪の意識が侵食していた……。
読み方
ラスコーリニコフにあるのは非凡人は犯罪は許されるという思想です。
ナポレオンのように秀でた人間は世界に変革をもたらす時、それに伴うあらゆる犯罪は法を乗り越えるというのです。
さらに、歴代の偉人や指導者は旧社会の伝統や倫理を破壊して新しい思想を実現するため、皆が犯罪者、時として殺人者にならざるを得ないというのです。
つまり、勝者が正義で敗者が悪であるという論理です。仮にそれが正論であるならば、ラスコーリニコフはいったい何に苦しんでいるのでしょうか……。
最後に
まずは漫画で読むことをオススメしていますが、書籍で読むのもいいと思います。
書籍は、図書館や中古本など、たくさんあると思います。
ぜひ探してみてください。
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