まさに
世俗エッセイ
世間から離れ、草庵で静かに暮らす〈兼好法師〉。 心地のよい退屈さを楽しみながら、周りで起こった出来事を思い返し、心のままに書き連ねていく——。
今回は【マンガ日本の古典】から『徒然草』を簡単3分でご紹介します。
結論
この本が教えてくれるのは、生の楽しみ方です。
感想
『徒然草』との出会い
どこの職場にも出世欲の強い人はいて、その人を見るたびに何とも言えない嫌悪感を覚える。
お金持ちであることを自慢したり、人を上から指図して優越感に浸っている人たちに長い間むなしさを感じていました。
楽しく自分らしく生きたいけど、どうすればいいのか……。
簡単あらすじ
序段
つれづれなるままに 日くらし 硯に向かひて 心に映りゆく よしなし事を そこはかとなく 書きつくれば あやしうこそ もの狂ほしけれ
「たいしてすることもないし……ものさびしい……一日中ずっと硯に向かって次々心に浮かんでくることを書こう あれこれ書いていると妙に気分が高まってきて狂おしい……」
作者:兼好は、欲にまみれた世の中に生きづらさを感じて官吏(=公務員)を辞め出家します。そして、遁世して1人の時間を過ごしながらいろんなことを思い返します。
第一段
この世に生まれてきたからには 誰しもあこがれはある
なかでも天皇の御位を望むことは恐れ多いことだ
皇族は一般人と違って尊い身分である
またそれにつかえる貴族らもたとえ位は落ちても品はいいものだ
それにくらべ 成りあがり者の得意顔は傍目に見苦しく情けない気がする
「坊主ほどつまらないものはない。清少納言も『枕草子』で”人は木の切れはしのように思われている”と言っている。もっともなことである。僧が権勢を誇っていばるのもたいしたものではない。増賀聖が言ったように名声を得てちやほやされるのは仏の御教えにそむくことで僧にとっては心苦しいはずだ。人間は見栄えのするほうがよい。しゃべり具合もはきはきしていて愛嬌があって……口数の多くないのがよいわい。しかし外見がよくても教養のない者は氏素性の劣る下卑た者と同じになって……もろくも圧倒されてしまう。だから学問は必要なのだ。宴席では声がよく通り音頭を取って酒を勧められても遠慮しながらも多少いけるほうが男としてはいいな」
第二段
昔の優れた天皇の政治も忘れ 国民が苦しみ 国が衰えていくのにも気づかずに万事ぜいたく三昧でそれをりっぱなことだと思いあがっていばっている者はどうしようもない
九条師輔公の遺された訓戒の中には”衣冠をはじめ馬具や牛車にいたるまで決して派手にせずありあわせのものを用いるのがよい”とあり……順徳院が宮中の諸事についてお書きになったものにも”天皇のお召物は粗末なものがよい”とある
第三段
すべてに優れていても色事を好まない男はまことにもの足りなくて底の抜けた盃のようなものだ
恋をすると夜の露や霜にぬれてしょんぼりし……あちこちさまよい歩き 親の忠告や世間の謗りなどに気を配るゆとりもなく あれこれ思案にくれ 結局ひとり寝することが多く そんなところに恋の情趣というものはあるものだ。だからと言って好色にふけるといういうのではなく女からは安っぽく見られないのが男の恋愛術というものさ
後醍醐天皇
後醍醐天皇は精力絶倫だった。
しかも、独断専行型の強烈な個性の持ち主で、真言密教・立川流の信奉者だった。
立川流とは、平安後期の真言僧・仁寛阿闍梨を祖として般若理趣教に基づき、淫欲即是道、性欲こそ菩提、男女の性的結合を即身成仏の秘術とする徹底した性欲肯定の思想であった。
手当たり次第に性をむさぼる後醍醐天皇を兼好は、ダメな生き方の例としてしばし作中で批判しています。兼好自身が理想とする生き方とは180°真逆の人だったのですね。
兼好という人
兼好は神職を世襲する家の生まれでした。
(今で言うところの公務員です。)
しかし、周囲の人間が出世争いに躍起なっているのを見て、出世争いに人生をかけることに虚しさを感じるようになり、すべてを捨てて出家してしまいます。
寺で修行を積んだ後、人里離れた草庵に移り住み、時間にとらわれずに日々の変化をしみじみと感じる生き方を選びます。
先ほども述べた通り、作中で後醍醐天皇を批判する記述がいくつか出てきますが、兼好は「天皇のあなたが欲望をむさぼる生き方をしてるから世の中がよくならないんだよ。民衆の見本となって国の繁栄に導くような生き方をしてくれよ」と、国のトップだからこその想いが強かったのだと思います。
兼好自身は元より、時代に翻弄される民衆の幸せも願っていたのだと読み取れます。
善い生き方
兼好は自然と調和がとれた生活がよいと言っています。
例えば、”家”は自然を趣とした作りがいい。あえて手を加え過ぎずに、何気なく季節の移り変わりを感じれるのが奥ゆかしい。
”生活”はつつましく質素なのがいい。財産や名声に執着せずにいると世間の煩わしさから離れられて身軽でいい。
そんなに頑張ることはない。人生は儚く幻のようで虚しい。どこにいようと己の死と向き合っていれば、武士が戦場にいるのと変わりはない。
読み方
『徒然草』には243のエッセイが収められています。
例えば、子供に難しい名前をつける親の話、労働が雪仏のお堂を建てるのに見える話、贅沢三昧・色欲を貪り尽くす天皇の話などなど。時代が変わっても今にも通じる人間の滑稽さがこの本の魅力です。
出世欲、性欲、物欲を求める生き方が当然の世の中に嫌気がさして生きるのが虚しくなった時、『徒然草』はあなたの疲れた心をそっと癒してくれます。
最後に
まずは漫画で読むことをオススメしていますが、書籍で読むのもいいと思います。
書籍は、図書館や中古本など、たくさんあると思います。
ぜひ探してみてください。
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