まさに
妖美怪奇物語
幽霊・怨霊・もののけ。 情愛の影に潜む執念が織りなす、恐ろしくも不思議な愛の物語——。
今回は【マンガ日本の古典】から『雨月物語』を簡単5分でご紹介します。
結論
この本が教えてくれるのは、人の情愛とは何かです。
感想
『雨月物語』との出会い
興味はあったのですが、読書が苦手なせいで断念していました。
やっぱり漫画にしてくれているとどんな本でも読めそうな気がしてきます。
簡単あらすじ
この紹介ブログでは筆者の思い入れが強かった巻之二『浅茅が宿』をご紹介します。
——下総国 葛飾郡 真間の郷(=千葉県北部と茨城県南西部)に〈勝四郎〉という男がいた。
祖父の代から豪農だったが、勝四郎の農業嫌いと坊ちゃん育ちが災いして没落していた。
そこで勝四郎は商売をすることを思い付き、絹を商う〈雀部〉という男に相談した結果、商人となって京へ上ることになった。
けれど勝四郎の妻〈宮木〉は心配だった。勝四郎は素直でのん気なお調子者の性格。だから商売には向いてないんじゃないの……と。
しかし、勝四郎はやる気満々。そんな夫の思いの強さに宮木は送り出すことを決めた。とは言ってもこのご時世、女ひとりで待つのは心細い。宮木は「できるだけ早くお帰りになってね……」と涙をこぼした。
そして勝四郎は京を目指して出発していったが、その年の夏——戦が始まった。
鎌倉公方・足利利成と関東管領・上杉が仲違いを起こし、この下総に逃げ込んできたとのだ。村に残れば村を焼き払われて殺されてしまうだろう。
村人たちは一目散に逃げって行った。
しかし、宮木は逃げなかった。夫が帰ってくるまでこの家で待とうと誓った。
……そして秋になったが、勝四郎はいっこうに帰ってこない。
時間だけが過ぎていく中、宮木の美しさに言い寄ってくる男もいたが頑としてそれを拒み、夫の帰りを待ち続けた……。
話は戻って、勝四郎の方は……
京で大儲けをしていたのだが、下総の戦の話を聞いて大急ぎで京を発った。
ところが……中山道の峠で盗賊にすべてを奪われてしまった。命は助かったものの、その後で世話になった村人によると「ここから先は軍勢が関所を作って通れない。下総のほとんどが焼き討ちされ、全滅した村が多いと聞いた」と言うのだ。
「で……では、妻も……」恐ろしい戦場と化した村で女ひとり生きていけるはずもない。宮木は死んでしまったんだ……!
7年後
勝四郎は京へ引き返そうとしたが失意のあまり、近江国(=滋賀県)で行き倒れてしまった。
しかし、幸いなことに、その土地は絹商人・雀部の妻の実家があったのでこころよく世話をしてくれた。
そして7年が過ぎた……。
勝四郎は生来の素直な人柄で仕事に励み、雀部の家の居候となっていたのだが、その年、河内国(=大阪府南東部)で動乱が起こった。
勝四郎は、行き倒れる民衆の姿を目の当たりにして「たとえ故郷は戦火に荒れ果て、宮木は死んでいようとも、この手で亡き妻の塚のひとつも建ててやるのが夫ではないか!」と思い立ち、下総国へ帰ることを決意する。
10日ほどで帰ることができたが村は焼け落ちて人ひとり見当たらず、どこもかしこも荒れ果てていた。
勝四郎は不安な思いを抑えながら、伸びに伸びた雑草をかき分けて自宅へと戻った。すると、格子窓から明かりが見える。
「まさか……」勝四郎は玄関扉をドンドンと叩いた。
「……どなた?」
「その声……宮木か!! 勝四郎だ。今、帰ったぞ……」
2人は7年ぶりに再開を果たした。そしてこれまでの経緯を話しながら大いに喜び、2人は寝床についた。
一途な想い
——翌朝
勝四郎は額に雫が落ちて目を覚ました。
体を起こして辺りを見ると、屋根は抜けて壁は外れ、床は割れて下からススキが顔を出している——それは廃墟だった。
「ゆうべはたしかに部屋だったのに……。宮木! 宮木はどこだ……」勝四郎の足に花瓶が当たって倒れる。そこには……土が盛り上がっており、木の棒が立てられている——宮木の墓があった。勝四郎は泣いた。
事情を知る老人によると、宮木は村人が逃げた後もここに残り、年を越して病にかかり、その年のうちに亡くなったと言う。墓を作ったのもこの老人で、時々お詣りに来てくれていたのだった。
老人は、昔このあたりにいた真間の手児奈という美少女を巡って争いが起き、それを憂いて自殺したその少女よりも宮木さんの一途な心の方が悲しいものに思えると言った。
勝四郎は決して上手とは言えないが歌を詠んだ。
いにしへの真間の手児奈をかくばかり 恋ひてあらん 真間のてごなを
昔の人も今、私がなき妻を恋しがるように手児奈を恋い慕っただろう。
収録4編 タイトル
収録作品は以下の通りです。
●巻之一 『菊花の約』
●巻之二 『浅茅の宿』
●巻之三 『吉備津の釜』
●巻之四 『蛇性の婬』
さまざまな愛と憎しみの様子が描かれています。
ドロドロというよりはしっとりのイメージです。
読み方
ホラーの奥に情念あり。
「怖ーっ」と言うようなホラーではなく、発端に愛があり、それが成就できずに爆発してしまう。そのさまになんとも言えず共感しました。
人はどうして恋に愛に人生を翻弄されてしまうのか。どうして切なく辛い想いをしなければならないのか。
そんな悲しき運命を背負った人たちですが、ひとつひとつの話を読み終えるたびにハッピーエンドで終わったような感覚がありました。
それは悲しき運命を肯定したい気持ちから来るものなのかもしれませんが、悲しき運命を肯定することに意味があるような手応えを感じました。
最後に
まずは漫画で読むことをオススメしていますが、書籍で読むのもいいと思います。
書籍は、図書館や中古本など、たくさんあると思います。
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