まさに
フロンティアの闘争
1800年代後半のアメリカ。開拓民たちはならず者〈ヘイゲン〉の横暴に困り果てていた。しかし、町に流れ者の〈ジャック〉が来てから、少年〈ヒュー〉は前向きに行動するようになる——。

今回は【講談社まんが学術文庫】の中から『プラグマティズム』を簡単7分でご紹介します。
結論
この本が教えてくれるのは、トライ&エラーです。
感想
『プラグマティズム』との出会い
講談社まんが学術文庫シリーズは全て読破するつもりです。
なぜなら、分かりやすくて綺麗で読みやすく、ずっと手元に置いておきたくなる良書だからです。
簡単あらすじ
——1800年代後半 アメリカ
〈クリス牧師〉が乗った馬車が盗賊に襲われています。
馬車が転倒し、クリス牧師の額に銃が向けられた瞬間、1人の男が颯爽と現れ、盗賊を銃で撃ち倒してくれました。
「よう! 大丈夫か? 俺は〈ジャック〉。よろしく!」
「ありがとうございます! な……なんとお礼を言ったらいいのか……」クリス牧師が礼を言うと、ジャックはクリスが町を出た時からならず者たちが荷馬車を付け狙っていたことを知っていたと言いました。
それならもっと早く助けれくれればよかったのに、とクリス牧師が言うと、ジャックは何もしてない奴を殺せないと言い、「俺は正義の味方なんだ」と笑います。
クリス牧師は助けてもらったお礼に仕事を紹介することになり、町へ案内した。
1880年代 アメリカ
コロンブスのアメリカ大陸発見から400年……
新世界での成功を夢見て世界中の人間がこの土地にやってきていた。
自分で土地を開拓すればその土地の所有権が国によって約束されたので、人々は先を争って荒野を開拓していった。
……そして、未だ開拓されていない前人未到の土地はフロンティアと呼ばれた。
フロンティアは常に危険と隣り合わせだったので、そこに集まる人間は命知らずの荒くれ者や他の町で問題を起こして逃げてきた者、新しい可能性に人生を賭ける者などで溢れ、さらにまだ町として機能していない部分が多く、保安官もいない。一種の無法地帯と化していた。
町に着くと、クリス牧師は町長〈パーカー〉の元に連れて行った。
パーカーは積み荷とクリス牧師の命を守ったジャックの人柄をたいへん気に入り、その腕を見込んで、この町の保安官に任命した。
ジャックのジョーク混じりのおしゃべりは、町の人たちにもウケがよく、すぐに受け入れられた。
その晩、パーカーはジャックに早速仕事を依頼した。
パーカーは町長という立場ではあるが、仕事は雑貨商を営んでいた。クリス神父が襲われた荷馬車の積み荷もほとんどがパーカーの物だった。
今回、盗賊が襲ってきたように、開拓民に品物を届けるのに苦労していたが、開拓民の方も品物を受け取ってお金を支払わない者がいて困っているらしい。要するに、お金を徴収してほしいと頼むので、ジャックは快く引き受けた。
——後日、ジャックが言われた場所に行くと、小さな農園に少年〈ヒュー〉とその母親〈エリー〉がいた。
エリーの話を聞くと、この辺りの土の中に大きな石がゴロゴロしているせいもあって収穫も良くないらしい。他にも原因があって、毎日のように荒くれ者の〈ヘイゲン〉が数頭の馬を引き連れて畑を踏み荒らしていくので困っていると言う。
ホームステッド法により、この土地が自分の土地になるのは半年後。旦那は病気で亡くなり、嫌がらせのせいで収穫は増えず、パーカーへの借金は増えるばかりだった。
「なるほどね……あいつらが飼っている牛は元々メキシコ人達が南部で育てていたものでね……」とジャックは説明した。アメリカがメキシコとの戦争に勝った後、繁殖して増えたメキシコ人の牛を勝手に自分の物にしただけ。つまりは牛泥棒だと言った。
「そんなのズルいじゃん!」ヒューは言った。
「そうだ……でもヒュー、それはお前さんの土地も一緒だよ」
この土地も元々はインディアンが住んでいた。彼らに定住する考えがなかったので奪っていないかもしれない。アメリカは自分で畑を耕せば所有権を与えると法律で決めたが、メキシコ人からしたらアメリカ人が勝手に決めた話だとジャックは説明するが、ヒューは納得できない。
ジャックは白人もインディアンもどっちが良いとも悪いとも思えないと言う。確かなことは、弱い人間は何一つ主張できないと言う。主張しても力がなければ意味がない。自分の主張を正しいと思うなら力で証明しなければならない。つまり……「力は正義」
民主主義の意味
「お前は民主主義とは何か知ってるか?」ジャックはヒューに言います。
民主主義とは”人民が国に勝る存在”という意味。間違えてならないのは、国が人民の生活を保障する意味ではないこと。人民には貧乏にもいれば金持ちもいる。つまり、弱者もいれば強者もいるのが人民。国は人民の意思に従い、人民の意思は強者によって決められる。これが民主主義だ。
「ヒュー、強くなれ」
要はへばらなければいい。絶対に負けを認めず闘い続ける。勝ちという答えが出るまで”トライ&エラー”を続ける、それが強い奴だ。
ジャックとヒューは手始めに、畑の邪魔になっている大きな岩を砕き始める……。
弱者と強者
ジャックは徴収したお金をパーカーに届けた。
しかし、その中にエリーとヒューの分は含まれていなかった。問題なのは畑を荒らすならず者の方だと訴えた。
そこにならず者〈ヘイゲン〉が来て、自分たちは放牧をしている土地に畑を作られて迷惑していると主張した。
ジャックは話が平行線なので帰って行った。
パーカーは農民たちの借金を増やして、その担保として土地を奪おうと企んでいたのだった。
アメリカ 戦争の歴史
後日、ジャックはクリス牧師に会いに行った。
実は、ならず者のヘイゲンらはパーカーに雇われていて、クリス牧師もその片棒を担がされていたのだ。
しかし、ジャックはクリス牧師を責めなかった。ここアメリカで生きる人間は皆自分が罪人だと知っていると言う。
コロンブスがアメリカ大陸を発見した後、大量に移民してきたイギリス人は利権を守るために本土イギリスと戦争を始めた。
独立戦争……と言えば聞こえはいいが、要は本土に納める税金をブッチ(=反故)しただけ。
そしてインディアンの虐殺。お次は南北戦争。
奴隷解放はお題目に過ぎず、実際は北部の人間による南部の人間からの権益収奪が目的だった。
当初、イギリスとフランスは南部を支持していた。そこで北部は”奴隷解放”を宣言し、結果はリンカーン率いる北軍の勝利だった。
ジャックはこう付け加えます。
人間は、力がすべてでは空しくなる生き物なんだ。そんな時に「あなたは正しい」って言ってくれる人間が必要なんだと。
「重要なのは……お前さんが何を守りたいと思っているかだ」
現実だけを見る
プラグマティズムとは、まさに”時計”です。
ジャックの言う通り「皆が知りたいのは時刻だ。中の仕組みはどうでもいい」という文言で、とても分かりやすく表されていると思いました。
実用主義ともいわれるこの哲学は、宇宙の理論よりも実際に自分にとって役に立つか、どう活用できるかを重視とした理論です。
もちろん、「ダメなものはダメ」とすぐ決めつけるのではなく、ダメなものかどうかはしっかり検証することが必須です。
あなたにとって役に立つものは取り入れ、欲しい物は獲得するまで何度でもトライ&エラーを繰り返す。
「理論うんぬんよりも今をどうにかしたいんだ!」そんな現実的な考え方です。
読み方
1人の流れ者がフロンディアの町の自由と権利を守るストーリー。
ジャックが天使に見えるか悪魔に見えるか、それは読み手次第です。
人が争う以上そこに善人はおらず、いるのは自己主張をして力を振るう生きた人間だけです。
ジェームズは、世界の真理(物理の理論・世界の秩序・神の教え)よりも、今を生きる現実だけを見て、自分にとって何が必要かを問いかけます。そして「夢を叶えようぜ」と、ドンと背中を押してくれました。
改めて、行動が大事ってことを感じさせてくれました。
最後に
まずは漫画で読むことをオススメしていますが、書籍で読むのもいいと思います。
書籍は、図書館や中古本など、たくさんあると思います。
ぜひ探してみてください。