まさに
仮想・古代中国
中原——さまざまな民族が混在する大陸はやがて7つの国に分かれ、それぞれの国王たちが覇権を主張し、終わりの見えない争いが繰り返されていた——。
僕は【まんがで読破】の大ファンで、全139冊読んでいます。
今回はその中から『孫子の兵法』を簡単7分でご紹介します。
結論
この本が教えてくれるのは、戦争とは何か、真の勝利とは何かです。
感想
『孫子の兵法』との出会い
戦争に興味はありませんでした。
そういえば、ジョジョ第2部でジョセフ・ジョースターが「兵は詭道なり」と、『孫子の兵法』を活用して戦うシーンがありました。
簡単あらすじ
中原——
広大な大陸にさまざまな民族が住む大国。開闢(=天地の始まり)以来この地では多くの血が流れ、戦乱の歴史が繰り返されていた——
この地には太古より王朝が栄え、中原全土を支配していた。
だがあるとき、父王が急逝すると、各地を治めていた息子たちはそれぞれ覇権を主張し争い始めた。大小さまざまな国が生まれては消えてゆき、20年にわたる内覧ののち、7つの国家が形成されていった。
岑——
[岑]の国王〈江建〉は軍師〈孫无〉に先の[蘓]と[晟]の戦いについて論じていた。
勝ったのは[晟]で負けたのは[蘓]。[蘓]は中原一の国力を誇っているものの、戦力の浪費を避けて戦線離脱した。[晟]も同じ理由で当分は戦争を仕掛けないだろうと〈孫无〉は自身の読みを伝えた。
〈江建〉は「今、このまま我々がおとなしくしていれば、これ以上戦は起こらないのではないか?」と言った。
〈孫无〉は冷静な態度でこう解説した。「権力者が国家を分立させている以上、争いは絶えない。もし仮に当代の王たちが平和を守っていたとしても、その子孫たちがいつまた野望を抱き、戦乱の世にするともかぎりません」と。さらに他にも脅威となる輩も存在していることも危惧します。
「また怖気づいてんのか、江!」と、バシッと背中を叩いてきたのは将軍〈梁丘〉だった。「男なら天下のひとつやふたつ、サクッと取っちまえばいいだろ!?」
〈江建〉は大勢の民が犠牲になることを懸念していのだが、その反面、〈孫无〉と〈梁丘〉を信頼していた。
蘓——
[蘓]の国王〈梅盛〉の耳に、[晟]で異国風の武器や騎兵を見たとの報せが入った。
重臣は[晟]打倒を進言したが、〈梅盛〉は「ならん。捨ておけ」と言って睨みつけた。仮に今、[晟]に勝ったとしても、蛮族たちがこの隙に乗じて攻め入ってくることを察知していたのだ。
拑——
[拑]の重臣たちは[岑]の動向をあーだこーだ論議していた。
[拑]の国王〈周呉(※正しい表記は口に天)〉はその様子を静聴していた。
盗賊団
[岑]の国王〈江建〉、軍師〈孫无〉、将軍〈梁丘〉は次の戦いの軍略を練っていた。
真っ先に狙うべきは[拑]。[拑]は交易の中心地。この地を奪ってしまえば、中原の物流や交通を支配することができる。
問題は、[拑]を狙う国は他にもいることだ。[爰]は資源が乏しい国なので先手を打ってくるかもしれない。[蘓]や[晟]もこちらを意識しているに違いない。もしも[萇]と[沂]が[蘓]や[晟]に和平を申し入れたとしたら……。
「あー、こいつを崩すのはしんどそうだな」と〈孫无〉は頭を掻いた。
「そうだな。時間はかかるだろうが……相手を誘い込むのは案外楽かもしれないぞ」と〈孫无〉は言った。
晴天の中、〈孫无〉は調整池(=ダム)を建設していた。
しかし、堤防に使う煉瓦が届かないので作業が滞っていた。その犯人は……[爰]の将軍〈孔督〉と[拑]の将軍〈太叙〉だった。彼らは盗賊団を装って、[岑]の北側にアジトを作っていた。
〈孫无〉と〈梁丘〉はアジトに向かった。が、小ぎれいな砦に軍馬に兵士。その正体が軍隊なのは一目瞭然。
実は〈梁丘〉は先日、[爰]の将軍〈孔督〉に接触していた。我々[岑]と手を組み、共に[拑]を取ろうと同盟を持ちかけていたのだ。
「行くぞ」〈梁丘〉は砦へ向かって進んで行った。
戦略
〈梁丘〉は岑軍を率いて砦の前を包囲し、盗賊団に投降するように呼び掛けた。
が、呼びかけに応じるどころか人質を盾にして脅してきたので、〈梁丘〉は「では交渉しよう」と言って砦の中へ入って行った。
中には[拑]の将軍〈太叙〉がいる。
〈梁丘〉は〈太叙〉に「これまで通り物資が届くようになればそれでいい」と言って、[爰]との同盟を切り捨て[岑]と手を組むように持ちかけた。そして、砦の地下に隠し通路があることを教えて、そこから脱出する策を授けた。
——その夜
[拑]軍が姿を消したことを知った[爰]の将軍〈孔督〉は「たった今敵は[拑]に変わった!!」と言い、軍を移動させた。
〈梁丘〉の作戦は、[岑]軍が砦の正面を包囲して、[拑]軍を隠し通路へおびき出し、そこから出てきたところを[爰]軍に攻撃させるというものだっった。
まんまと策にはめられた[拑]軍は[爰]軍の攻撃を受けた。しかし、放った火矢が周囲の木々に燃え移ってやがて大火となり、逃げ場を失いかけた両軍は戦いどころではなくなってきた。
そこには〈梁丘〉が現れ、戦いをやめて兵を避難するよう促し、[拑]軍は[爰]軍を撤退させるに至らしめた。しかも、自ら戦わずして。
新たな戦
[萇][沂]連合国——
[萇]と[沂]の国王は兄弟だった。ゆえの連合国でもあった。
[萇]の国王〈凌胡〉と[沂]の国王〈伍黄〉の目指すのは、中原の支配よりも各国との調和だった。
晟——
[晟]の国王〈杜阮〉は中原の外にある帝国[狄]と同盟を結んでいた。
しかし、それは利害を理由としたドライな関係。帝国[狄]は[晟]を中原の覇者にする見返りの為に協力しているに過ぎなかった。
岑——
国王〈江建〉と軍師〈孫无〉と将軍〈梁丘〉は先の戦いの祝杯をあげ、喜び合っていた。
しかし、[拑]と[爰]を騙すような戦術をしたことに対して、〈江建〉は不満気だった。
そこで〈孫无〉はこう言います。
兵は詭道なり
戦いの真髄は力のぶつかり合いではなく騙し合いだ。
たとえ勝利を収めたとしても損害が大きくては後に苦労する結果となる。ゆえに、敵に力で押し勝つよりも、いかに出し抜けるかが鍵となる。
各国の特徴
7つの国は仮想なので、読む上で手っ取り早く分かる特徴を簡単にまとめてみました。
[蘓]……中原一の国力を持つ大国。
[晟]……帝国[狄]の力を得る。
[萇]と[沂]……国王が兄弟。平和主義な国。
[岑]……軍師〈孫无〉がいる国。
[拑]……中原の中心に位置する国。交易の中心地。
[爰]……資源が乏しい。
[狄]……軍事国家。騎馬民族。
〈孫无〉=孫武、中原=中国と思っていただいて差し支えありません。
読み方
軍師〈孫无〉らが他の6つの国とどう戦い、戦乱の世とどう渡り歩いていくのかというストーリーです。
作中の所々に『孫子の兵法』のエッセンスが散りばめられ、この時代から戦争の勝敗が力の優劣ではなく戦略・戦術にある様子が描かれています。
しかし、舞台が仮想・古代中国という設定なので、却って読みづらさを感じるかもしれません。数々の『孫子の兵法』の著作の中で、極めて異質で風変わりな印象を持ちました。
最後に
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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まずは漫画で読むことをオススメしていますが、書籍で読むのもいいと思います。図書館や中古本など、たくさんあると思います。
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