まさに
痛快モンキー
石から生まれた石猿は、不老不死になろうと思い、仙人から72の術を修得するが、その傲慢さゆえに破門され、下界で持てる力を存分にふるう——。
書籍『西遊記』を簡単7分でご紹介します。
■結論
この本が教えてくれるのは、世界はワクワクであふれてるです。
■あらすじ
『西遊記』の冒頭は、石猿誕生の様子を天界のトップ・玉帝が見下ろすシーンから始まります。
そして、生まれたばかりの石猿は、腹が減って桃を食べていると、本物の猿たちと出会い、度胸試しをして勝ち、猿たちの王様となって、水簾洞に住みつきます。その時、名を美猴王としました。(美猴王の意味は、美しい猿の王様)
ある日、1匹の猿が死にました。死を知らなかった美猴王は初めて死というものを知って、死を恐れ悲観します。すると、1匹の猿が「神仙にでもならないかぎり、死を避けられない」と言ったので、「だったら神仙になってやろうじゃないか!」ということで、神仙に不老不死の術を習いに行くことにしました。
何日か探すうちに、山道を進んでいくと、仙人が住む洞窟にたどり着いた。仙人は菩提祖師といい、弟子になる際に〈孫悟空〉と名付けられた。
孫悟空は他の弟子たちよりも覚えがよく、どんどん武術を修得していった。やがて何年もの月日が流れたある日、他の弟子たちに変化の術を見せびらかしたのが菩提祖師の怒りに触れることとなり、破門されてしまった。
悟空が水簾洞に戻って来ると、猿たちが叫んでいる。昨夜、妖魔の襲撃を受けたらしい。悟空は怒って、妖魔の頭〈混世魔王〉を簡単に倒してしまった。その噂はあっという間に広まり、たくさんの妖魔たちが悟空に忠誠を誓ったり、義兄弟の契りをかわしにやってくるようになった。
そのうちの一人、〈牛魔王〉の助言で、4人の竜王から靴や鎧や冠、武器(如意棒)を手に入れた。しかし、あげくに、閻魔王の帳簿を墨で黒く塗りつぶす始末。
天界の玉帝やその臣下たちは悟空を危険分子と見なして、どうしたものかと思案した。力でねじ伏せようとしても、却って災難をまねいてしまうかもしれない、ということで、逆に天界に招いて官職をあたえることに決まり、悟空は弼馬温(=馬の世話係)となった。
しかし、しばらくして、悟空は、弼馬温という職の位が天界でもっとも低いと知って、激怒して下界へ降りてしまった。玉帝は悟空の職務放棄を理由にして、天界軍の司令官・托塔李天王に命じて捕えようとしたが、悟空が強過ぎていったん退却。結局、悟空は前より上の官職・斉天大聖の位をあたえられることになった。
■孫悟空 ・ 三蔵法師
ここまで読んだ人は「あれ? 『西遊記』ってこんな話だっけ?」と思うかもしれません。
堺正章さん主演のドラマ『西遊記』では、三蔵法師との出会いから物語が始まりますが、実は、三蔵法師や猪八戒、沙悟浄がそろって旅をするまで、まあまあそれなりの時間(話)があるんです。
自分勝手でやりたい放題の孫悟空は、案の定、天界で大暴れすることになります。またも天兵と戦うことになった孫悟空でしたが、今度は強敵がぞろぞろと出てきて悪戦苦闘。とうとうお釈迦さまによって封じ込められてしまいます。
そして500年後、ようやく三蔵法師(玄奘)の登場です。
ちなみに、斉天大聖とは、天と斉しい聖人の意味。それを自ら名乗るなんて傲慢にも程があります。でも、天をも恐れない孫悟空を応援したい気持ちが芽生えてしまうのはどうしてなんでしょうね。
■本書の構成・詳細
上・中・下、全3巻です。
ページ数はおおよそ240ページほど。1ページ600文字ほど。
1冊読むのに、4〜6時間といったところです。
新しい登場人物が出ると、文章に邪魔にならない程度に、小さなイラストが随所にさし込まれています。例えば、、托塔李天王と言われてもどんな風貌なのか想像もつきませんが、強うそうな天界人のイラストが物語の理解を深めてくれます。
注釈も、短い言葉で簡潔にまとめられているので、子供でもわかりやすいだろうという丁寧な印象を持ちました。
内容は、3巻全部で22章。
たくさんの災難とユニークな妖怪たちがコミカルに描かれていて、「あの話も?」「この話は?」という話もふくまれていると思います。
下巻の巻末には、中国に古くからある道教と道教の神々、『西遊記』誕生秘話と裏話、人物事典が載っています。
上巻初版の発行日は、2001年1月3日。
出版社は、偕成社。
ハードカバー。
寸法は195mm × 135mm。(縦は、青年コミック・B6判の、ひとまわり大きいくらい)
■ハイライト
・大人向け(ルビ多め)
・妖魔との戦い
・孫悟空、誕生の秘密
・玄奘三蔵の生い立ち
・美しい文章