まさに
怪人の復讐
透明になる光線銃によって、皮膚だけが半透明になってしまった男——アラバスター。彼は、自分を醜いと罵った世界に復讐する——!
僕が大好きな漫画 『アラバスター』を簡単3分でご紹介します。
結論
この本が教えてくれるのは、人の評価とは何かです。
感想
『アラバスター』との出会い
『火の鳥』『ブラックジャック』を読んだ僕は、もっと手塚治虫先生の作品を読みたくなりました。
本屋で目を引く2冊の本がありました。
それが『アラバスター』です。
アラバスターの意味は知りません。何の話なのか全く分かりません。
ただ、何か不気味で暗い雰囲気だけは分かり、内心ワクワクしました。
簡単あらすじ
突然、血管剥き出しの顔をした怪人が現れます。
怪人は、女優・スーザンに復讐するために現れたのです。
——彼は何年か前に金メダルを6つも取ったことがある元体操選手でした。
彼はスーザンに一目惚れし、彼女との交際を繰り返しますが、スーザンは何とも思っていませんでした。
なぜなら、彼は醜かったからです。(肌の色の違いもありました)
彼はスーザンによる侮辱に怒り、襲いかかります。
すぐに周りの人たちに抑えられますが力づくで振り払い、車に乗って逃げようとするスーザンを車で追いかけようと、乗ったこともない車を発車させます。怒りの感情で訳がわからなくなっていました。
その結果、人を轢いてしまいます。
彼は逮捕され、裁判にかけられ、実刑5年を言い渡されます。
……彼は刑務所の中でスーザンへの復讐を誓います。
そんなある日、刑務所で変なお爺さんと出逢いました。
そのお爺さんは自称科学者で、実の娘を殺してしまったと言います。
「あんたは透明人間の小説を読んだことがあるかね?」そう言って、〈無い左手の小指〉を見せます。
触ってみると、目には見えませんが小指の感覚が確かにありました。
お爺さんは〈透明〉にする装置を発明したと言い、彼にそれを譲ると言います。
月日は経ち、5年の刑期を終えた彼はお爺さんに教えてもらった隠し場所へ行き、その透明になる装置=光線銃を手に入れました。
早速、彼は醜い自分の体を消すために自分の体に光線を当てます。
しかし、光線には副作用がありました。全身を透明にすると死んでしまうのです。
あまりの苦痛に光線の外へ逃れた彼は、命は助かりましたが〈皮膚の表面だけが透明〉になり、血管や内臓や骨が剥き出しになったような醜い姿へと変わり果ててしまったのでした……。
もう1人の主人公
マッドサイエンティストの祖父によって透明人間として生まれた〈亜美〉です。
〈亜美〉は透明の光線銃を作ったお爺さんの孫です。
亜美のお母さんはお爺さんの実験で透明にされて死んでしまいますが、死ぬ前に赤ん坊を産んでいました。
産まれた直後は普通の赤ん坊でしたが、徐々に体が透明になっていきました。
——亜美は小学生になり、いつも同級生にいじめられていました。
なぜなら、亜美の顔が白粉で真っ白だからです。
亜美の養母は亜美の特異体質に気づき、化粧で亜美の体に白粉を塗っていたのです。
亜美は透明の姿がバレないように暮らしていましたが、ある雨の日にある1人の少年に見られてしまいます。
〈ゲン〉という不良少年です。
亜美の秘密を知った〈ゲン〉は亜美を犯罪に利用しようとします。
職員室へ忍び込んでテストの答案用紙を取って来させたり、裕福な夫人から宝石を盗むように指示します。
仕方なくゲンに従う亜美ですが、このことがきっかけで度重なる災難を引き寄せることになります……。
ルッキストのロック・ホーム
ロックは100%紛れもないルッキスト(外見至上主義者)です。
彼は個性的な顔、ギリシア人以外の人間を極端に嫌い差別します。
動物でも醜ければ足蹴にするほどです。
その反面、1人になると「僕は美しい」と、鏡の前で裸になって自分の体と重ねるように鏡に張り付く嗜好を持っています。
そんな固定観念バリバリなロックがFBIから派遣され、アラバスターや亜美を追い立てます。
ロックとの対決がさらにストーリーを悲劇に染めていきます。
容姿が美しい者と醜い者との対決。それこそが『アラバスター』の醍醐味であり、手塚治虫先生の言いたかったことだと思います。
読み方
ホラーで不気味で感性的で感情移入しやすく、サクッと読めました。
人の評価は容姿なのか? 中身なのか?
この論争に決着をつけてくれる作品です。
最後に
原作コミック、手塚治虫全集、文庫本があります。
ぜひ探してみてください。
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