まさに
精神科学の惨劇
青年が目覚ますと、そこは精神病棟の一室だった。何も思い出せない……。すると、〈若林博士〉と名乗る男が現れ、ある恐ろしい事件に関わりがあると言うが——。
僕は【まんがで読破】の大ファンで、全139冊読んでいます。
今回はその中から『ドグラ・マグラ』を簡単5分でご紹介します。
結論
この本が教えてくれるのは、自分(私)とは何かです。
感想
『ドグラ・マグラ』との出会い
”これを読む者は一度は精神異常をきたす”といわれる奇書です。
小説よりも漫画の方が気が狂わずに読めそうな気がしました。(気が狂う前提で読もうとしているのも変ですが)
それに、「読むな」と言われて読みたくなるのが人間のサガです。
簡単あらすじ
胎児よ
胎児よ
なぜ踊る
母親の心がわかって恐ろしいのか……?
柱時計が12時を刻む。
ヴゥゥーン、ヴゥーン
と、大きな音が鳴り響いた——。
青年が目を覚ますと、そこは見知らぬ部屋の中だった。
「僕は……誰だ?」
——九州大学病院
法医学教授〈若林鏡太郎〉は看護師から青年の意識が戻ったとの報告を受けた。
若林は不安げな面持ちで青年の部屋に向かう。そして、青年の部屋で自己紹介をした後、ここが九州大学精神科の7号室であることを説明した。
「えっ、精神病科……!?」青年は若林博士の話に驚きの表情を見せた。
1ヶ月前に精神病科の担当主任が亡くなり、後任が決まるまでの間ここを預かることになったと言うのだ。
「どういうことなんですか? どうして僕は自分の記憶をなくしているのですか? それに……なんで僕は精神病科なんかにいるんです?」
若林博士は意を決して口を開く。
「実を申しますと……あなたは、ある恐ろしい事件による精神的ショックで、過去のいっさいの記憶をなくしてしまっているのです!」
手がかり
「さま……お……お兄様……」
隣の部屋から若い女性の声が聞こえる。
若林博士と青年は6号室に行き、ベッドで眠る少女を眺めた。が、青年は少女のことは記憶にない。
若林博士いわく、少女も事件の影響を受け、たまに目を覚ましてはすぐに昏睡するのを繰り返していた。そして、青年の記憶の中に迷宮入りの事件を解決する鍵が隠されている、と言う。
青年は頭が混乱しそうになりながら若林博士が誘う方へと歩いて行った。
そして、若林博士はある部屋の前で足を止めた。
「さあ、どうぞ、こちらへ」
「……!? なんなんですか、この部屋は!?」
「精神医学科・教授室です。珍しいものばかりでしょう。ここの精神科の教授が方々で集めたものや……精神病患者たちがこの大学病院に残したものです」若林博士は言った。「実はこの部屋にはあなたの過去の記憶に結びつく、重要な手がかりが保管されています。何か、気になるものはございますか?」
青年は薄気味悪い資料を見てげんなりしていると、本棚にある一冊の本に目が止まった。
「あの……これは?」
青年が若林に尋ねるとこう言った。
「これはこの大学病院の精神病患者が書き上げた小説のようなものでして……それがどうにも読んでるうちに頭がこんがらがって来るという内容なんですよ」
「そうですか……」
青年はゾッとして本を本棚に直した。すると今度は、壁にかかる肖像画が視界に入ってきた。
「……この人は誰だっけ?」
青年は絵の人物を思い出せないが知っているような気がした。
「ようやく見つけましたね。さっきの『ドグラ・マグラ』の暗示が効いてきている証拠です。いいですか。この人は人類のために研究に自身の人生と魂を捧げた偉大な科学者……九州大学精神医学科教授〈正木敬之氏〉——あなたの担当主任だったのですよ」
新学術
「正木先生は天才でした……」若林は語り始めた。
「我輩はここにっ、空前の最新研究学を打ち立てることを宣言する!」
正木は大学病院の玄関前で、医者や看護師、大学生らに向かって、精神科学という新しい学問を確立することと表明した。
「腹を痛めた病人と精神を痛めた病人になんの差があろうか!? 我輩は精神病患者のための活気的治療法をつくり出すのだ」
それを聞いていた人たちは揃って、正木先生は正気なのか? と狼狽えていた。
「ふふふ。騒ぐでない。まあ聞け」正木は言う。「この世はストレス社会の万人狂人地獄。正常と異常とを分け隔てる境界線などすでになくなっている」——要するに、ストレスが蓄積してある瞬間、その狂気が熱狂し、誰でも犯罪に手を染める可能性があると言ったのだ。
「過激な人ですね」青年はたじろいだ。
若林は思い出すように言う。「正木先生は早くから人間の精神構造を研究しようとしておられました。私もよく正木先生にご指導いただいておりました。先生の卒業論文”胎児の夢”こそ、精神科学の核心であります……」
「あの……その……胎児も夢を見るんですか?」
胎児の夢
「正木先生はよくおっしゃってました」
正木は壇上で熱弁する。
「人間は母親の胎内にいる10ヶ月間に、はるか太古からの[万有進化の実況]を追いながら人の形へと変わっていくのである。その成長の間に胎児は夢を見るのだ。先祖の単細胞生物時代以来の、生存競争の記憶という夢を……。そして、胎児が人の姿になったとき、もうひとつの悪夢がはじまるのだ。それは人類の悪行という夢だ。自分の先祖の記憶という悪夢だ!」
会場がざわつく。
しかし、正木は弁論を続ける。
「そしてだ……、先祖の精神心理は、人の30兆といわれる細胞のひとつひとつに刻まれ……子孫に受け継がれていく。そこで我輩はこう結論づけた。人の記憶や意思は脳髄だけにあるのではなく、全身に行きわたっているのだと。これこそ! 我輩が提供する精神科学の根幹——心理遺伝である!」
若林は言った。「しかし——正木先生は先月、自殺してしまわれました……」
登場人物
主となる登場人物は5人です。
●青年
何も覚えていない
おぞましい怪事件に関わっているらしい
●若林博士
九州大学法医学教授・医学部長
事件の真相を明らかにするために、青年の記憶を呼び戻そうとする
●6号室の少女
青年の隣の病室に入院中
記憶喪失と意識混濁が見られる
●正木教授
九州大学精神医学教授
精神病治療を確立するため、独自の理論を提唱する
●呉一朗(くれ いちろう)
正木教授の心理遺伝研究の対象者
迷宮入り怪事件の中心人物
青年の記憶を取り戻す物語です。
そこにはサスペンスあり、謎解きの要素ありで、青年は何者なのかを推測しながら読むことができます。
読み方
現実にありそうでないような、異次元の世界(パラレルワールド)の話を聞いているようでした。
怪事件についてを話していたかと思うと、それを思い出すために精神科学の話になり、また事件の話に戻ります。
「何がどうなってるの?」と理解できずに不安になり、話が前に進んでいるのか分からないような錯覚に陥りました。この不快感こそが著者の意図なのかもしれません。
ラストはものすごい衝撃が待ち受けています。
筆者は10回以上読み返していますが、『ドグラ・マグラ』の”痛いけど気持ち良い”感覚にやみつきになるのもうなづけました。これこそ、うつ小説の極みです。
最後に
まずは漫画で読むことをオススメしていますが、書籍で読むのもいいと思います。
書籍は、図書館や中古本など、たくさんあると思います。
ぜひ探してみてください。
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