まさに
幽霊の子
幽霊の夫婦から生まれた鬼太郎は、人間社会から爪弾きにされ、全くとけこめませんが、独自の世界で今日もたくましく生きています——。
『墓場鬼太郎 貸本まんが復刻版』を5分でご紹介します。
■結論
この本が教えてくれるのは、強い心・胆力です。
『墓場鬼太郎』——のちの『ゲゲゲの鬼太郎』というタイトルは、1968年にテレビアニメ化された時に、「さすがに”墓場”はまずいだろう」ということで”ゲゲゲ”になったとか。
※NHK 100de名著 「100de水木しげる」より
■あらすじ
ある血液銀行に勤める会社員の男は、ある日、社長に呼び出された。
会社の製品に”幽霊の血液”が混じっていたので、原因を調査してきてほしいと命じられる。
男はまず、輸血をした人を見に、病院へ行ってみた。すると、幽霊のような姿をした患者がベッドに座っている。医者が言うには、心臓が止まっていて、体温が死人と同じで、何も食べずに生きているらしい。
供血者の住所を調べてもらうと、男と同じ住所(近所)であることがわかった。
男はその夜、その場所へ行ってみることにした。外をのぞくと、スーッと火の玉が飛んでいる。火の玉は寺の中に吸い込まれていった。
男が寺に入ると、幽霊の夫婦がいて、身の上話を話し出した。彼らは大昔から地球に住む古代人だったのだが、人間が増え始めたせいで、棲み家を失い、同族の数は減り、今は2人しか残っていないのだと言うのだ。
そんな時、幽霊の夫が不治の病になり、人間界に出てきたのだ。そして、生活に困り、幽霊の妻が血液を売ったのだった。しかも、妊娠3ヶ月なので誰にも言わないでほしいと頼んできた。
男は、幽霊の夫婦が不気味で、気分が悪くなり、逃げるように立ち去った。
——やがて8ヶ月の月日が流れた。
男が寺に訪れると、幽霊の夫婦は死んでいた。
夫の方は腐乱していたが、妻の方は外に運べそうだったので、土を掘って墓を作ってやった。
それから3日後、外から「オギャー」と泣く赤ん坊の鳴き声が聞こえてきた。あの墓の下である。墓場から、赤ん坊が這い出てきたのである。気味の悪い赤ん坊が。
こうして生まれたのが、墓場鬼太郎である。
■『墓場鬼太郎』と『ゲゲゲの鬼太郎』の違い
ひとことで言うと、『墓場鬼太郎』は陰険です。
『ゲゲゲの鬼太郎』は、妖怪たちをメインとした問題解決の構成となっています。いろんな妖怪たちと手を取り合うシーンが多いです。
それのに対して、『墓場鬼太郎』は社会の大人たちが幽霊や妖怪に怯えるさまをメインに描かれています。鬼太郎は「イヒヒヒヒ」と笑う意地悪な性格です。絵は黒のベタ塗りが多いのも特徴的です。
妖怪に関しては、『ゲゲゲの鬼太郎』ではいろんな妖怪がピックアップされて活躍する姿が描かれています。
『墓場鬼太郎』では、ねずみ男が出てきますが、その他の妖怪はせいぜい、妖怪を知ろうとしない大人たちを怖がらせる役割として出てくる感じです。そういう意味でいうと、幽霊や妖怪を信じない大人たちにその存在を知らしめる(思い知らせる)内容となっているのが『墓場鬼太郎』です。
当時の子供たちにとっては鬼太郎はヒーローだったのでしょう。
おそらく、普段えらそうにしている大人たちが、小さな鬼太郎に恐れおののく姿を見て、日頃の鬱憤を晴らしていたのでしょう。子供たちにとって、ストレス発散の手段になっていたのだろうと想像できます。
■内容・タイトル
全6巻。単行本、文庫本があります。(内容は同じです)
1巻
・兎月書房版『怪奇伝』より 「幽霊一家」「墓場鬼太郎」の2編
・兎月書房版『墓場鬼太郎』より 「地獄の片道切符」「下宿屋」「あう時はいつも死人」の3編
2巻
・三洋社版『鬼太郎夜話』より 「吸血鬼と猫娘」「地獄の散歩道」の2編
3巻
・三洋社版『鬼太郎夜話』より 「水神様が町へやってきた」「顔の中の敵」の2編
4巻
・兎月書房版『墓場鬼太郎シリーズ』より 「怪奇一番勝負」「霧の中のジョニー」の2編
5巻
・佐藤プロダクション版『墓場鬼太郎』より 「おかしな奴」「ボクは新入生」の2編
6巻
・佐藤プロダクション版『墓場鬼太郎』より 「ー怪奇オリンピックー アホな男」の1編
・東考社版『墓場鬼太郎長編読切』より 「ないしょの話」の1編
目次と巻末のあとがきに書かれている内容をまとめてみました。
”貸本まんが”だったからか、あらすじを簡潔に説明している(重複)箇所がいくつかあります。
■不当・不適切な表現
読む前に注意してほしいのが、不当・不適切な表現です。
ひと昔前の漫画や映像には、”時代背景や制作意図を尊重してそのままとしています”と表示されていることがあります。
『墓場鬼太郎』には、違反や犯罪、非道徳的な表現が描かれていますので、読むときはそれを十分に注意してもらえたらと思います。
■ハイライト
・貸本の雰囲気
・強めのホラー色
・鬼太郎、出生の秘密
・鬼太郎の怒り
・人間(大人)が恐怖するシーン
・ねずみ男のヤケクソ感
人間社会に憂う。
今からでも”まともな大人”になろうと思いました。
↓アニメもある↓
↓ゲゲゲはこちら↓
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