まさに
被差別部落出身の教師
身分制度は廃止されたが民衆の心に差別の意識は残っていた。 小学校の教師〈丑松〉は父の「隠せ」という戒めを破らないと誓っていたが——。
僕は【まんがで読破】の大ファンで、全139冊読んでいます。
今回はその中から『破戒』を簡単5分でご紹介します。
結論
この本が教えてくれるのは、偏見との向き合い方です。
感想
『破戒』との出会い
僕が小学生・中学生の頃、道徳の授業の延長で、同和問題(部落差別)の全校集会がありました。
全学年の生徒たちが体育館に集められ、先生たちが壇上で差別について語るのです。
淡々と話す先生、怒りを抑えながら話す先生、泣いてしまう先生。そしてそれを静かに聞く全校生徒。……それはまるでお葬式のようでした。
簡単あらすじ
「出て行け!」
1人の男が大勢の民衆に罵られ、塩を撒かれ、石を投げられ、宿から追い出されています。
〈瀬川丑松〉は静かに去っていく男の後ろ姿を眺めていることしかできませんでした。
ふと脳裏に父の言葉が浮かんできます。
「隠せ」
「え?」
「おまえがあの町で生まれ育ったという事をだれにも知られてはならんぞ」
「……」
「たとえ、いかなる目を見ようと……いかなる人に邂逅おうと……いったんの憤怒悲哀にこの戒を忘れたら——……その時こそ、社会から捨てられたと思え」
——明治後期 信州北部
〈瀬川丑松〉は尋常小学校の教師として働いていた。
「瀬川くん!」
同僚の〈土屋くん〉が一緒に校長室に来てほしいと言って来ました。同じく同僚で先輩の〈風間先生〉の退職金が出ないことについて校長と交渉したいようです。
しかし〈校長〉は「規則は規則です。退職金は出ません」の一点張り。退職金は15年以上在職していることが条件。風間先生は在職14年と6ヶ月。あと6ヶ月足りません。
結局、風間先生は退職金を諦め、見送りもないまま学校をあとにしました。
「なにが規則だ! 結局自分の身を守る事しか頭にないのさ」土屋くんは半ばあきれたように愚痴をこぼします。「……まあ、とにかく、俺達だけでもめげずに頑張っていこうじゃないか」
「うん!」丑松と土屋は拳をガシッと合わせました。「ところで土屋くん。例の試験、合格したそうだね」
「これで俺も晴れて植物学者さ」
「俺のぶんまで頑張ってくれよ」
「キミはこれからどうする気かね?」
「え?」
「きみはこんな田舎教師で終わる器じゃない。もっと上を目指すべきだ!」
「いや……この町と子供達が好きなんだ。これで満足さ!」
猪子蓮太郎
「……けしからん。じつにけしからん」
校長は、何かと楯突いてくる丑松と土屋くんが嫌いでした。出世欲の強い〈勝野〉を使って退職させようとしていました。
土屋くんは放っておいても農家大学へ転勤する。残るは丑松……。
丑松は蓮華寺へ来ていた。
庫裏(=住職らが住む所)の2階で、今日から下宿することになる。
中に入ると1人の女が畳に座って泣いていた。〈お志保さん〉という名で、ここの養女らしい。
彼女が寺の奥様を呼んで来てくれて、丑松が泊まる部屋に案内された。
ある日、丑松の部屋に土屋くんと勝野がやって来た。
勝野の目に1冊の本が目に止まった。「なにを読んでいたんですか?」
丑松は猪子廉太郎の著書を愛読していた。本棚には彼の本がびっしり並んでいる。
我は穢多なり。
……それで十分だ。
我々、新平民が不当な差別を受ける筋合いは無い。
誇りをもて! 俺達は人間だ。
猪子廉太郎は部落差別を批判し、自由と平等を訴える思想家だった。
丑松はたったひとりで差別社会と戦う彼に崇拝に似た思いを抱いていた。
土屋くんも丑松に勧められて何冊か読んでみて「すばらしい思想家だ」と言うのに、「所詮はあの人は穢多じゃないか」とバッサリ言い切った。というのも、先日、丑松の下宿で1人の穢多の男が追放され、それが原因でこの寺に移ったんだろうと丑松を心配していたのだ。
「下等人種のためにきみがそこまで気に病む必要はないんだ!」土屋くんは丑松にそう言います。
勝野は黙ってこの様子を見ていました。
苦悩
「出て行け!」「穢らわしい……」「塩まけ、塩!」
大勢の民衆に追い立てられる1人の男。その男が振り向くと……それは丑松だった。
「ひッ」
丑松は飛び起きた。
……絶対に隠し通さなければ。土屋くんは僕の素性を知ったらどんなカオをするのだろう? お志保さんは? 校長は僕を学校から追放し……僕の生活は破綻する——……。
皆と同じように青春を謳歌したいが軽率な行動はとれない。
丑松は先日退職した風間と居酒屋で酒を飲んでいた。
風間は酒がやめられなくて体を壊してしまったらしい。家族は再婚した女房と子供が5人。しかも、蓮華寺のお志保さんは前妻との間に生まれた実の娘で、口減らしのために養女に出したのだが、彼女にとってあの寺は地獄なのだと言う。それは、あそこの住職は病気らしく、性欲が抑えられないらしい……。
風間が酔い潰れてしまったので家まで送っていくと、誰もおらず、一枚の書き置きが置いてあるのみだった。
そんな折、一通の電報が届いた。
「おとっつぁんが……死んだ」
久しぶりの帰郷
丑松は汽車の中いた。故郷に着くまでの間、決して誰かに見つからぬように注意を払って。
駅に着くと、叔父さん(父の弟)が出迎えてくれました。
丑松にとって懐かしい土地。しかし、密集したボロ屋、学校に行けない子供たちを見て言葉が詰まる。
叔父が言うには、父は小屋で飼育していた牛に餌をやろうとした時に腹を突き殺されたらしい。父が息子・丑松に残した最後の言葉は「忘れるな」だった。
読み方
被差別部落出身の主人公がそれをひた隠しにして苦悩するという話です。
子供の頃、「どうして差別なんてするんだろう?」と思った僕はある意味、幸せな人間だったと思います。
今は同和問題(部落差別)の話を聞くことは無くなりましたが、いつ”新種の差別”が生まれないとも限りません。いいえ、気づいていないふりをしているだけで、現に学校や会社で新種の差別が存在しています。
この本には、差別への対処法が指し示されています。
もしもあなたが学校や職場で嫌がらせを受けて悩んでいるとしたら、この『破戒』は新たな一歩を踏み出すメソッドとなってくれるでしょう。
最後に
まずは漫画で読むことをオススメしていますが、書籍で読むのもいいと思います。
書籍は、図書館や中古本など、たくさんあると思います。
ぜひ探してみてください。
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