【解説】有島武郎『一房の葡萄』|結論|感想|読み方

葡萄

まさに

少年の過ち

欲しい! あの子のキレイな絵の具が欲しくてたまらない——!

よーいち
ほっこり。「そういえば、自分もこんな時期があったなぁ」と、同時に、子供の見本たる大人にならなければと気が引き締まりました。

僕が大好きな本 『一房の葡萄』を簡単3分でご紹介します。

結論

この本が教えてくれるのは、子供心と教育です。

 

感想

『一房の葡萄』との出会い

母は唐突とうとつに「こんなのあるよ」と言って、1冊の本を僕の前に置きました。

僕が〈まんがで読破〉や〈ドリヤス工場著の文学漫画〉を読んでるのを見て、何かを思い出したようでした。

母の母——つまり、僕の祖母は昔、教師をしていました。

母はこう言いました。

昭和50年頃、祖母は勤めていた学校に本を売りに来ていた業者から「これはいい本だから」と思って買い、私(母)に渡したのだと。

今から40年以上前の話です——。

 

簡単あらすじ

主人公〈僕〉は絵を描くことが好きな少年です。

〈僕〉は海岸通りの景色を絵に描こうとしますが、持っている絵の具では色をうまく出すことできません。

ふと学校の友だちの西洋人〈ジム〉が持っていた絵の具を思い出します。

絵の具

〈ジム〉は〈僕〉より年が2つくらい上で、背も見上げるくらい大きい子でした。

しかも、〈ジム〉は絵は下手でした。

〈僕〉は、あの絵の具さえあれば、本当の海に見えるように描いて見せるのになあ、と思いました。

でも、パパやママに「絵の具を買って」とお願いする気にはなれませんでした。

それから幾日か経ったある秋の日、〈僕〉はある授業の時、〈ジム〉の絵の具欲しくて欲しくてたまらなくなります。

そっと〈ジム〉を見ると他の生徒と話をしていて笑っています。

〈僕〉はあちこちを見回してから手早くその箱を開けて、藍色と洋紅色(カーミン)の2色の絵の具をポケットの中に押し込むのでした……。

 

 

著者:有島武郎(ありしまたけお)

僕が母に「いつの本?」と聞くと、「大正時代の本みたいよ。でも、これは復刻版なのよ」と言いました。

本の奥付(最後のページ)には

大正十一年六月十日 印刷

大正十一年六月十七日 発行

著者 有島武郎

名著復刻 日本児童文学館 昭和48年12月 ほるぷ出版

と記載されています。

朱色のハードカバーで、タイトルと著者は右読み。

本文の紙はうすく焼けていました。

それは形見のようにも思え、祖母の顔を思い出し、じわっと胸が熱くなりました。

 

他の収録作品

この本は短編集で、ひとつ30ページほどの話になっています。

おぼれかけた兄妹きょうだい

友だちと妹と海水浴に行って溺れる話。

碁石ごいしんだつちやん

小さい八つちやんが碁石を呑んでしまって喉を詰まらせる話。

●僕の帽子ぼうしのお話

お父さんに買ってもらった格好いい帽子をなくした話。

どの話も、子供が一度は誰もが経験するような失敗ばかりです。

読んでいると「子供ってなんでこんな危ないことをしてしまうのだろう」と最初は思いましたが、次第に自分も似たようなことをして親に迷惑をかけた記憶が蘇ってきました。

そうすると、その未熟さがなんとも愛しいものに思えてきます。

読み終わった後、ほっこりと優しい気持ちになれました。

 

現代の親たちが子供のしたことに怒鳴ったりせずに、優しく諭してあげてほしいと願います。

子供は叱られた内容よりも、親の叱り方を見ているような気がします。

もちろん、子供が危ないことをしないように読み聞かせるのにいい本だと思います。

 

読み方

児童文学のためか、文字は大きめで、ほとんどの漢字にはルビ(ふりがな)がふられています。

旧字体が多く、読みも、

學校(がくかう)

西洋人(せいやうじん)

會社(くわいしや)

と、少々読みづらい箇所が随所に見られます。

ですが、読んでみるとそれほど気にならず、スラスラと読めました。

子供に返ったように懐かしくて心が温まりました。

 

最後に

有島武郎ありしまたけおはたくさんの文学作品を残しているようです。

これからも探してみます。

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よーいち

高校中退→ニート→定時制高校卒業→フリーター→就職→うつ→休職→復職|うつになったのを機に読書にハマり、3000冊以上の本を読みまくる。40代が元気になる情報を発信しています。好きな漫画は『キングダム』です。^ ^

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