まさに
労働地獄
実働16時間、休日なしの肉体労働、周囲は極寒の海。 度を超えたパワハラに耐えかねた1人の男が今立ち上がる——!
僕は【まんがで読破】の大ファンで、全139冊読んでいます。
今回はその中から『蟹工船』を簡単5分でご紹介します。
結論
この本が教えてくれるのは、労働者の権利とは何かです。
感想
『蟹工船』との出会い
経営者に歯向かう労働者、というイメージでした。
読む前は「どうせ勝てっこないんだからやめとけ」と思っていましたが、会社に媚びを売って、長いものに巻かれながら生きるのが正しい働き方だと、自分の子どもに言えるのか? そう思えてきました。
簡単あらすじ
労働者は資本家に労働力を提供し、資本家は労働者のその日の仕事量に見合う労賃を支払う……
これが労働力と賃金の「等価交換」である
しかし実社会ではその労賃以上の価値が出るように働かせるシステムができており
その生まれた価値「もうけ」はすべて資本家のモノになる……つまり「搾取」である
「おい、地獄さ行くんだで」
昭和初期——……北海道・函館
「なんだって?」青年〈森本〉は中年男に尋ねた。
中年男は「地獄さ行くって言ったのさ! カムサッカだぜ。北オホーツクの海の上で4ヶ月仕事だぜ」と言った。
そうこうしていると、青年と同じ日雇い労働者がぞろぞろと集まってきた。彼らは、借金をつくらされて来た者、出稼ぎに来た者、遊びにお金を使い果たした者だった。
蟹工船・経営者〈須田〉は重役たちにこう言う。
「金! 女! 酒! ここの連中はどうしようもないくらい頭が幼稚だ……」
重役の1人は「考えようによってはあれほど都合のいい連中はないですな!」と言うと、須田は「1番やっかいなのは”労働組合”です。しかし、あの連中に組織を組む知恵など一寸もない」と言って、フーッとタバコの煙を吐いた。
主任監督〈浅川〉は300人余りの労働者たちに、この蟹工船事業は単なる儲け仕事ではなく、日本帝国軍の食料を生産する「国家的事業だ」と宣言した。
蟹工船の実情
森本は船内に入るとまず労働者の宿泊部屋に入った。
「ウッ」
扉を開けた途端に悪臭が鼻につく。箱詰めになった乗員たちの休息場。まるで豚小屋……こんな中で4ヶ月も……。
蟹工船 博光丸
・総重量 3000トン
・水線長 60メートル
・速力 3ノット
・川崎船(=小型漁船) 8隻設備
・乗員 300名余り
第一次大戦時、サケ・マス・カニなどの缶詰類が保存食として需要が増すが、北洋でタラバガニを水揚げしても陸の工場へ運ぶまでに鮮度が落ちてしまう。ならば、船の中で加工場を作ってしまえ——というわけで蟹工船はそういう船なのである。
パワーハラスメント
函館を出発し、宗谷海峡に入った頃、波のうねりに飲み込まれた。
主任監督〈浅川〉が怒鳴る。「おい、川崎船(=小型漁船)の綱、しっかり縛りやがれ! 船ひとつ失くしてみろ。お前らの命がなんだってんだ!」
森本は乗員〈昭幸〉と〈宮口〉と共に、川崎船が流されないように綱を掴んだ。
その瞬間、昭幸が船内に押し寄せた波に体を流され、船から投げ出されかけた寸前のところで森本が昭幸の手を掴んだ。
ほっとしたのも束の間、浅川は「そこの野郎ども何してやがる! メシ抜きにするぞ」と怒鳴った。
すると宮口は「うるさい。こっちは人ひとり死にかけたんだ」と言い返すと、浅川は宮口の顔を力一杯張り倒した。
食事時、ご飯と腐った塩漬けが出され、乗員たちは文句を言わずに食べていた。
宮口はさっき殴られて耳が痛くてフラフラすると言う。昭幸は森本に助けてもらった礼を言った。
昭幸はとんでもない噂を聞いたと言う。
深夜の2時、秩父丸からのSOSを受信した。秩父丸の乗員は400名以上だった。
浅川は船長に、秩父丸を救助するのは余計な寄り道になるからするな、と言ったが、船長が「仲間の危機を見過ごせない!」と言うと、浅川は「ああ〜?!」と怒鳴りつけて船長をぶん投げたと言う。
船長はそれ以上何も言えなかった。
ほどなくして、秩父丸は沈没した……。
蟹工船は日露戦争の時に使い古された船で、秩父船と同じようにいつ沈んでもおかしくない状況だった。
カニ漁
北海道の北部、カムサッカに着くとカニ漁が始まった。
引き上げられたタラバガニは船内で身をとられ、硫酸紙で紙巻きにし、缶詰となる。
カムサッカの夜明けは午前2時頃……実働16時間、休日なし、過酷な肉体労働。少しでも手を休めようものなら、浅川から身体的攻撃を受けることになる。
乗員たちはカニが水揚げされると、浅川から罵倒を浴びながら加工作業に明け暮れた……。
その夜、宮口は以前勤めていた炭坑の話をした。
夕張の炭坑にいたよ……7年もな。
そこでも命懸けだったよ。炭坑事故さ。
石炭、採るときはガスが出る……ところが会社は何も処理しねぇ。
生き埋めさ。オラ、ワケわかんなくなって逃げてきたんだ。
他の乗員たちの中に、炭坑で働いていた者がいて、彼らも過酷な労働環境だったと告白した。
皆、それぞれ不幸な事情を背負っていて、森本も家族を養うために蟹工船に乗ってきたのだった。
そんな折、とつぜん宮口が姿を消した——。
労働局に相談
蟹工船でのパワハラは現代に無関係とは言えません。
いわゆる、ブラック企業と呼ばれる会社は全国に少なくはないようです。
サービス残業は日常茶飯事。給料安い。有給は使えない。病欠でも休むと嫌な顔をされる。上司から嫌な仕事を押し付けられる。馬鹿にされる。孤立させられる、などなど。
「そんなの、何十年も昔の話でしょ?」と思う人もいるかもしれませんが、過労死や労働を苦に自殺する人が絶えないのはのはなぜ? って、現代の日本にパワハラが存在しているからです。
筆者はこれをとても恥ずかしいことだと思っています。アメリカのように契約社会だったらいいのにな、と何度思ったことでしょうか。
何が言いたいかと言うと、自分の身は自分で守るしかないということです。と言っても、会社ともめろ、と言っているのではありません。労働者の権利が侵害された時、労働局に相談するという選択肢を持ってほしいと切に願っているのです。
会社も人が経営するものですから間違いを犯します。労働基準監督から指導を受けるまで、その悪習を是正しようとは思わないのです。なぜなら、労働者に安く働いてもらう方が儲かるからです。
古くから根付いている慣例や当たり前の風習に慣れてはいけません。
「みんながしているから」、「ずっと前からそういう決まりだから」、なんて言う組織は、労働者が何もできないだろうとたかを括っているのです。
読み方
資本主義が存在する限り、資本家と労働者の対立はなくなりません。
「労働者は泣き寝入りするしかないのか?」、「労働者は諦めて経営者のいいように使われて我慢するしかないのか?」、「お金を持っていれば、何をしてもいいのか?」
雇われるということはどういうことなのかを知っておくには『蟹工船』はちょうどいい本だと思います。
今働いている人もこれから働く人も、労働者としての誇りと権利を持ち続けてもらいたいと思います。それほど、自分らしく働くのはとても難しいことなのです。
「がんばろうぜ! 社会人労働者!」
最後に
まずは漫画で読むことをオススメしていますが、書籍で読むのもいいと思います。
書籍は、図書館や中古本など、たくさんあると思います。
ぜひ探してみてください。
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