まさに
異世界往来
河童・死神・タヌキ・小人——異世界の住人たちと三平の心あたたまる物語。
■結論
この本が教えてくれるのは、孤独のすすめです。
■あらすじ
河童に似た少年〈三平〉はお爺さんと二人暮らしです。
小学校に行く年になり、遠く離れた小学校に行くと「河童が来たぞ」と馬鹿にされています。
ある日、三平が釣り船で居眠りをしていると、河童が2匹現れました。
すると、河童たちは三平の顔を見て「人間の世界に逃げようとしたんだな」と、間違えられて河童の国へ連れて行かれてしまいます。
河童の国に着くと、たくさんの河童が集まってきて「こいつ人間の子じゃないのか?」「殺してしまえ!!」と騒ぎ始めま、村長が出てきて「とりあえず、牢に閉じ込めておこう」ということになり、ひとまずは難を脱しました。
三平が「人間の世界に戻りたいよう」と嘆いていると、見張りの河童が「そんなに人間の世界はいいものか?」と聞いてくるので、「そりゃそうだよ」と三平は「テレビや電車、飛行機もある」と人間の世界の素晴らしさを語ります。
見張りに河童はすぐに村長にそれを報告します。
それを聞いた村長は「河童の国の発展のために、留学生を出そう」と言い出し、三平に一緒に人間界を見物させるように強制的に命じます。
人間界に戻った三平と河童は腹が減ったので、畑から取ってきたスイカを食べていると、〈死神〉が現れました。
聞くと、死神は三平のお爺さんの命を奪いに来たと言います。
「そりゃ大変だ」と、三平は死神にスイカをたらふく食べさせ、神棚から眠り薬を持ってきて飲ませてしまいます。
一方、河童の方はというと、三平が学校に行くと言うので自分も行ってみたいということになり、1日おきに交代で行こうということになります。
しかし、小学校に行った河童は水泳の授業でぶっちぎりの1位を取ってしまい、「世界新記録だ!」と生徒や教師を驚かせてしまいます。
挙げ句の果てに「三平をオリンピックに行かせよう」という話にまで発展してしまうのです。
■のほほんとした世界
三平にはたくさんの災難が続きます。
河童の面倒を見ることになったり、死神からお爺さんの命を守らないといけなかったり、オリンピックに出ることになったりします。
結局、お爺さんは死んでしまいますが、死神や狸もいろんな事情があって生きていることが分かります。
しかし、死や孤独、寂しさが描かれる世界の中で〈三平〉は実にのほほんとしているのです。もちろん、お爺さんの死を悼んでいるし、死神やタヌキを軽んじているワケでもない。ただスゴく仲が良くてベッタリすることもないし、友だちに媚びることもないし、絆をアピールすることもない。
いつも1人。全く馴れ合いをしないのです。
■ゆかいなキャラクターたち
大まかなキャラクターはこんな感じです。
●河原三平(かわらさんぺい)
小学一年生の男子。
顔が河童に似ている。
●河原藤兵衛(かわらとうべえ)
三平のお爺さん。
両親がいない三平を1人で育てている。
●河童の留学生
人間世界を見物しにくる。
三平と顔が似ている
●死神
お爺さんの命を取りにやってくる。
ドジで真面目な苦労人。
●タヌキ
子供のタヌキ。
三平にイタズラをするのが趣味。
■おなら・うんち
所々で、おならとうんちが出てきます。
泳げない三平が河童に泳ぎ方を教わりに行くシーンがあります。
河童の泳ぐ姿を見て三平は「そのまたの間から出ている気流はなんだ?」と聞くと河童は「エンジンじゃないか」と言います。
なんとそれは、おならを噴射して進むという、下品極まりない泳法だったのです。
「どうやったらできるようになるんだ?」と三平が聞くと、河童は「大根やレンコンを食べていれば、そういう体になってくる」と答えます。
他にも、タヌキと一緒に畑に行くシーンでは、三平が持っていた肥料(うんこ)がタヌキの顔にかかってしまいます。
するとタヌキは「なあに。少しくらい顔にクソがついたからってへこたれないよ。ボク、生まれつきクソに強いもの」と言うのです。
それを聞いた三平は「たのもしいなあ」と振り向きもしません。
タヌキは続けて「ボク、赤ちゃんの時、こえだめで行水したことあるもの。少々クソがヒタイについたからって、別に心臓は止まらないよ」と言うこのシーン。
おかしなことを言っているはずなのになぜか「確かにその通りだ」と深く納得してしまいました。w
■大好きなシーン
家で1人ふて寝をしていたら、しらっと狸が添い寝をしているシーンです。
お爺さんが亡くなり、独りぼっちになった三平は家で1人ふて寝をします。
すると、いつの間にか隣でグーグーと狸が寝てるんのです。
三平は「タヌキじるにするぞー!!」と言って追い払うのですが、そのシーンが何とも言えず大好きで、何度も読み返してしまいます。
■ハイライト
・愉快なキャラクター(河童、死神、狸)
・身近な死
・のほほんとした雰囲気
・仲間がたくさんいるようで孤独な三平
・貸本版ならではの画風
ほっこりしました。
明日も頑張れそうです。
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