【解説】石ノ森章太郎『劇画 家畜人ヤプー』|結論|感想|読み方

女神 イギリス人女性

まさに

40世紀の階級制度

”白上主義”、”女尊男卑”、”人種差別” 婚約中の〈麟一郎〉と〈クララ〉は墜落したUFOに乗っていた〈ポーリーン〉を助けたことが発端となって、2人の関係は劇的に変わる——!

よーいち
悪書も禁書も使いよう。これからは無益な人間関係に苦しまなくて済みそうです。

僕の大好きな漫画『劇画 家畜人ヤプー』を簡単10分でご紹介します。

結論

この本が教えてくれるのは、人間の優劣とは何かです。

 

感想

『家畜人ヤプー』との出会い

石ノ森章太郎先生の作品が読みたくて検索していたら目にしました。

刺激的なタイトル——そういえば、以前、書店で見かけた記憶があります。

確か、”ヤプー”はガリバー旅行記の”ヤフー”からとったものだとか。

 

簡単あらすじ

宇宙船

——異空間を飛来するUFO。船内に淑女が1人。

彼女はソファに寝そべり、人間の形状をしたモノの背中に両足を乗せ、悠々自適な旅行をしているようだった。そして、その人間の形状をしたモノの口からペニスの形をした舌(もしくは本物のペニス)が出て、それを彼女の股にあてがった……。


ドイツ とある草原地帯

麟一郎りんいちろう〉と〈クララ〉は乗馬を楽しんでいた。

馬に遠慮気味な麟一郎に、クララは「調教に同情は禁物よ」と忠告した。

クララ・フォン・コトヴィッツ

クララ

東ドイツの名家の生まれ

両親、兄弟と死別して天涯孤独の身

豊かな遺産と父の友人の庇護により、現在は大学生

瀬部麟一郎(せべ りんいちろう)

麟一郎

クララと同じ大学の日本人留学生

柔道五段

——2人は婚約者同士。来春、大学卒業後、日本で挙式の予定だった。

小屋に戻った2人は雑談を少ししたあと、麟一郎はシャワーを浴びると言ってバスルームへ行った。

すると突如、UFOが落下し、小屋を粉々に破壊した。

クララは泳ごうと思って外に出たので助かった。麟一郎も怪我はなかったが、入浴していたせいで裸のままだった。

2人は互いの無事に安堵すると、UFOの中を探索した。

中に倒れる女性と奇妙な生き物がいた。

麟一郎が気絶していた彼女の頬を引っくと、彼女は目を覚まし、英語で礼を言った。

ポーリーン・ジャンセン侯爵嗣女マーショネット

ポーリーン

本国星カルーで地区検事長を務める大貴族。

西暦3970年から196X年に兄と妹らを連れて旅行に来ていた。

ポーリーンは麟一郎のことを「ヤプー」と呼んだ。

 

イース(百太陽帝国)

ネアンデルタール・ハウンド

勢いよく船内の扉から犬のような形状をしたモノが飛び出してくると、麟一郎の右腕にグワっと噛み付いた。

その瞬間、麟一郎の体はしびれて指一本動かせなくなり、その場に倒れ込んでしまった。

ポーリーンはそれを「古石器時代人狩猟犬ネンデルタール・ハウンド」だと言い、そして動けなくなったのは「衝撃牙ショック・ファングによるものだから心配いらない」と言う。

ポーリーンは3970年から来た未来人だった。

国の名は”イース(EHS)”=”The Enpire of Hundred Sunsジ エンパイア オブ ハンドレッド サンズ百太陽帝国ひゃくたいようていこく)” イースでは英語が共通語だった。

しかし、そんなことより、クララは麟一郎が心配でたまらない。

ポーリーンが「緩解薬アンティドウトの注射を打てばすぐ元通りになる。時間がたっても効果は同じだから楽にして」と言うと、腹這はらばいに横たわる麟一郎の手足の関節をまるで家畜を扱うように足を使って折り曲げて四ついにし、当然のようにその上に座った。

四つ這いの男 座る女

当然、クララはその様子を見て心を痛めた。すぐさまポーリーンに麟一郎に腰掛けるのをやめるよう迫ったが、ポーリーンは「ヤプーは人間じゃない」と、ヤプーとは何かを語り始めた。

 

畜人論と三大発明

イースでは白人(英国人)が支配しており、黒人を奴隷化していた。

論文

元来、「ヤプーは類人猿の一種だ」という俗説があったが、いつしかそれが一般に信じられるようになり、家畜化が推進されるようになった。

ヤプー奇形者の交配によって短脚・畜人犬の原種が作り出され、もはやヤプーは人間としてまかないきれなくなった。

地球起源23世紀末、ローゼンベルクは第2の進化論といわれる『家畜人の起源』を発表し、ヤプーは人類学的に裏付けされた非人間であることが立証された。

そして、ヤプー文化史上の三大発明——”生体縮小機ディミニッシング・マシン”、”読心装置テレパシー”、”染色体手術クロモゾーム・オペレーション”が登場した。

その技術によって、矮人ピグミー肉便器セッチン、その他生体家具リビング・ファニチュアが各家庭の常備品となった。さらに皮革ヤプー、食用ヤプーが飼養された。かくして、帝国の発展のため、ヤプーは大量生産されていった。

 

Oshicko

「はやく緩解薬アンティドウトの注射を……してください!!」クララは懇願した。

しかし、ここに薬はない。薬は3970年にある。

ポーリーンは麟一郎を一端預かり、戻ってから注射をした後に返すと言ったが、心配なクララはで一緒に未来に行くことになった。

妹〈ドリス〉のUFOが迎えに来るのを待っている間、クララはポーリーンに勧められ、服を着替えた。

——と、「ふう……」とクララは息を吐く。「あ、あの……すみませんが、お手洗いを………」

「お手洗い? ……あっ、あしに触れさせたいのね……」とポーリーンが言うと、地面につくほど腕が長いわりに足は短く腹部が膨れたヤプーが近づいてきた。

ポーリーンはそれを”肉便器セッチン”と呼び、使い方が分からないクララのために使って見せた。「Come here Oshickoカム ヒア オシッコ!!」肉便器セッチンの首が亀のように伸び、その唇はポーリーンの局部をおおった。

クララも「O……Oshicko」と言うと肉便器の首が伸びてその唇がクララの局部を覆った。クララは戸惑いながらも肉便器セッチンの中に尿を排出した……。

Oshicko

 

矮人決闘

半時間ほどでポーリーンは兄・妹らと合流した。

クララは記憶喪失をいうことにして口裏を合わせ、未来へ帰還することとなった。一方、麟一郎は黒奴ニガーの2人に別室へと連れて行かれ、怪しげなカプセルに入れられた。

未来に着くまでの間、広間でティータイムを楽しんでいると、「クララの歓迎招宴ウェルカム・パーティーを〈ウィリアム〉と〈ドリス〉どっちがするか”矮人決闘ピグミー・デュエル”で決めよう」という話になった。

タンスのような四角柱の箱には引き出しがついていて、その表には”SOCCER”、"SUMO"、"BOXING"などと書かれており、全部で16種あった。

グラジャートレット・チェスト 箪笥

サイコロでどの競技にするかが決まり、”OLD YAPOON FENCING”のの引き出しが開けられた。ウィリアムとドリスは中からそれぞれ”MUSASHI”、”KOJIRO”と背中に書かれた矮人ピグミーを選び、決闘デュエルが開始された。

決闘 デュエル

壮絶な攻防の末、勝敗は辛くも、ムサシに軍配が上がった。が、ムサシも大怪我を負い、助からないと言う。薬で助けたとしても前よりも弱くなるので、慈悲の死マーシイ・キリングを与えることになった。

「ムサシ、ハラキリをお演りプレイ・ハラキリ!」

クララがそう言うと、ムサシは「バンザイ!!」を唱えて見事に自刃じじんして見せた。

そして、未来の世界に到着した。

 

3970年の世界

イースに到着したクララはそこでの世界観念に驚くばかりです。

●白上主義(白人至上主義)

人間は白人(英国人)のみ


●女尊男卑

女性優位・男性劣位社会

重要な職には女性が就く。男性は主に詩や芸術を嗜む。

よって、女性は夫で、男性は妻と呼ばれる。


黒奴ニガー

黒人は白人の奴隷として生涯労役に勤める。

人間ではあるが、人権はほぼ無いに等しい。


家畜人ヤプー

日本人は人類ではなく類人猿である、そのため、家畜として扱われる。

肉体を変形させられ、玩具だったり生活家具、移動手段、食用などとして消費しょうひされる。

イース階級制度

イースではまさに神業かみわざとも言える科学的技術が恐ろしいまでに駆使されている。また、黒人やヤプーは洗脳され、逆らうといった抵抗観念を持つことはあり得ない。

見所みどころは2つ。

日本の歴史——どうして日本人がヤプーに成り下がってしまったのか。古事記、日本書紀を読んでいるとより面白く感じます。

もうひとつは、クララと麟一郎の関係性——イース世界を見聞したクララの、婚約者・麟一郎への愛情がどのように変化していくか。これにはゾクゾクします。

 

読み方

【復刻版】(全4巻)を読みました。1冊 250〜280ページ。

1巻のみ左読みになっています。セリフもすべて横書きで、半分漫画・半分小説といった構成です。(※2巻、3巻、4巻は通常の漫画と同じ右読みです。)

読み進めていくと、ヤプーの説明がしばしば見られますが、事細かく詳細に書かれており、原作者・沼正三先生は医学・生物学・史学・語学などに堪能な人であることが想像できます。そして、このヤプーの説明が物語のメインであり、また、マゾスティックな甘美を伴う醍醐味でもあります。

この『家畜人ヤプー』を異世界ものファンタジーとして読むのか、官能的SM作品として読むのか、それともmadな作品として読むのかはあなた次第。

実にリアルで丁寧な作りで、排泄や知能という人間の根幹はそこなっていません。あたかもこれが真実と錯覚してしまいそうになるほどです。

「僕はなぜこの作品に興味を持ったのだろう?」——それは、自由・平等な社会といえど、自由・平等ではないと感じているからだと思います。

言いたいことが言えなかったり、したいことができないシガラミが、階級カースト制度・究極の終着地点『家畜人ヤプー』を僕のもとに呼び寄せた気がしてなりません。

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最後に

劇画版と小説版があります。オススメはポット出版の復刻版・全4巻です。

まずは漫画で読むことをオススメしていますが、書籍で読むのもいいと思います。

書籍は、図書館や中古本など、たくさんあると思います。

ぜひ探してみてください。

 

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よーいち

高校中退→ニート→定時制高校卒業→フリーター→就職→うつ→休職→復職|うつになったのを機に読書にハマり、3000冊以上の本を読みまくる。40代が元気になる情報を発信しています。好きな漫画は『キングダム』です。^ ^

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