【対話形式】【1】〈気にしすぎ〉は性格じゃなくて気質が原因だった。

 

——これは、僕と同僚Aさんとのたわいもない会話です。

 

■図太い性格のOさんが

同僚A「あ、よーいちさん。ちょっと聞いてくださいよ」

僕「どうしたの?」

同僚A「この前ね、1課の仕事(物品を所定の場所に運ぶ業務)が遅れてたから、担当のOさんに“そっちの状況はどんな感じですか?”って聞いたんですよ」

僕「うんうん」

同僚A「そしたら、Oさん。”ああ、忘れてましたわ。今から仕上げるので、後で取りに来てくれます?”って言うんですよ」

僕「すごいな。その図太い神経」w

同僚A「でしょ? それでもまあ仕事だから取りに行きましたよ。文句言わずに。で、取りに行ったらなんて言ったと思います?」

僕「え? ”遅れてすいません”とか?」

同僚A「だと思うでしょ。”ああ、そこに置いてあるから持っていって。それと、持っていったら(運ぶの使った)台車は元の場所に戻しといて”って。遅れといて平然とよくそこまで人を使えるものだなと思って。こっちから連絡までしてあげてるのに」

僕「本当ですね。あきれちゃいますね」

同僚A「本当にOさんは人のこと全然考えてくれない。普通なら申し訳ないなぁとか思いません?」

僕「思う思う」

同僚A「ですよね。もうなんなんでしょうね、Oさん。すいませんの一言ぐらいあってもいいと思うんですよ」

僕「うん。確かにそうですね」

同僚A「Oさんって前からそんな所がある人なんですよ」

僕「そうなんだ。僕だったらそんなこと絶対できないですね。だって、相手に悪いですから。自分が原因で相手に負担をかけてる訳ですから」

同僚A「そうなんですよ。Oさんみたいな人がいると本当にイライラしていまいます」

僕「分かります。でもね、それが当たり前なんですよ。相手のことを考えないことが当たり前なんですよ」

同僚A「えっ? どういうこと?」

■人は人のことを考えない

僕「普通の人は相手のことを考えないのが当たり前なんです。だから、配慮してくれないことに対して〈なんでしてくれないの!〉と思うことはストレスでしかないんですよ」

同僚A「よーいちさんってなんか、心療内科の先生みたいですね」w

僕「いえいえ。本当にそうなんですよ。普通の人は配慮しない。だから、それを不満に思わずに〈そういうもんなんだ〉と捉え方を変えると気持ちが楽になれますよ」

同僚A「ああ、なるほど。すごいですね。捉え方ですか……」

僕「まともに受け止めてたら疲れるでしょ?」

同僚A「はい、そうなんです。時々、私が間違ってるの? って思ってイライラするし、落ち込んだりして……」

僕「多分Aさんはいろんなことに気がついてしまうんだと思います。だから、それが出来ていないとイライラしまう」

同僚A「……うーん。よーいちさんはそんなこと絶対しないと思います」w

僕「僕だったら相手のことをついつい考えてしまうので、考えないことが逆に出来ないんです」

同僚A「そうなんですか?」

■床に落ちたゴミ

僕「ええ、無意識なんです。無意識に相手のことを考えてしまって気遣ってしまう。僕はそういう気質なんです」

同僚A「キシツ……ですか」

僕「ええ、気質です。性質みたいなもので性格とは違います」

同僚A「それは何ですか?」

僕「例えばですね、床に小さなゴミが落ちていたとします」

同僚A「どれくらいの?」

僕「何でもいいですよ。紙くずでも埃でも」

同僚A「じゃあ、紙くずにします」w

僕「実は、僕の性格はめちゃくちゃ大雑把なんです。でも、気質の部分がゴミをそのままにしておくことを許してくれないんです。頭の中で〈ゴミを無視して放っておきたい性格〉と〈ゴミを片付けたい気質〉が戦って、結局、ゴミを捨てに行くんです」

同僚A「はははは」

僕「こんな感じで、性格と気質の不一致が日常茶飯事にあって、気疲れするんですよ。でもね、これって普通の人は感じないことなんですよ」

同僚A「どういうことですか?」

僕「普通の人は床に落ちてるゴミのことは目に入ってないんです。もし、目に入ったとしても気になっていないんです」

同僚A「それはどうしてですか?」

僕「それは、多分情報として見えていないからだと思います」

同僚A「えっ、見えてないんですか?」

僕「はい。でも、それが当たり前なんです。僕は見えるから気になる。普通の人は見えないから気にならない。そういうものなんです」

同僚A「ちょっと納得できないですね……。おい、見ろよ!って思います」

僕「僕もずっとAさんと同じように思ってました。でも、自分と他人は違う。だから、これは仕方がないことなんだって」

同僚A「それだと、こっちが損してるような気がしません?」

僕「そうですね。でも、あくまで気になってしまうのは自分の中での問題なので、誰かのためにするというよりも自分のためにしたと考えるようにしています」

同僚A「は〜、すごいですね。そんな話、もっと聞きたいです」

僕「ああ、いいですよ」

■HSPって何?

同僚A「よーいちさんは、自分が他人と違うことに気がついたのはなんでなんですか?」

僕「3〜4年前に一時期話題になったことがあって、SNSでそういう特徴を持った人がいることを知ったんです。それで、調べてみたらその特徴が自分と似てるんですね。知れば知るほど自分のことを言ってる!って。それで、もっと知りたい!と思うようになって本を買ったりしてました」

同僚A「へぇ〜」

僕「〈HSP〉っていうんです。そういう特徴を持った人がいることが海外できちんと研究されているんですよ」

同僚A「……エイチ・エス・ピー? 何かの略ですか?」

僕「はい、ハイリー・センシティブ・パーソン。訳すと、〈とても敏感な人〉という意味です。これは精神疾患やうつ、その人の性格・気性ではなくて、周りの情報を多く感じ取ってしまう気質を持った人のことです」

同僚A「よーいちさんはその……HSPなんですか?」

僕「はい、そうです。HSPの存在を知ってからいろんなHSPの本を何冊も読みました。自分がHSPだと分かって気持ちが楽になりました。子供の頃、よく〈気にしすぎ〉とよく言われてました。だから、自分は気にしすぎているのかと自分を責めることが多かったんです」

同僚A「気にしすぎ!? 私もよく言われていました。細かいことをいつまでも考えてたり、悩んだりしてたので親によく言われてました」

僕「もしかしたらAさんもHSPに当てはまるのかも知れません」

同僚A「じゃあ、私、病気じゃないんですね?」

僕「もちろんですよ」w

同僚A「よかったぁ。たまに病院に行った方がいいのかと悩んだりすることもあって……」

僕「HSPかどうかが分かる診断テストというものがあって、23の質問に答えて半分以上”はい”があればHSPでしょうというものです。ちなみに僕は22項目が”はい”」だったので、間違いなくHSPだなと」w

同僚A「へぇ〜、そうなんですね」w

僕「自分がHSPだと分かったらすごく気持ちが楽になりました。自分はそういう気質なんだ。だから、しょうがないことなんだって。このHSPの特徴を持つ人は全体の5.6人に1人の割合でいるそうです。15〜20%ほどです」

■だから 心が疲れやすい

同僚A「私、時々、すごく疲れるんです。例えば、家の中で片付けが出来てなかったりすると、なんで片付けないままにしてるの! 信じられない!って」

僕「うんうん」

同僚A「家族が片付けたらそれで済むのに誰も片付けようとしないまま夜になったりして、寝てる途中に急に目が覚めて、あ! 片付けよう!って深夜に片付けてしまうんです」w

僕「それ、疲れるでしょう? 体も心も」

同僚A「そうなんです。片付けること自体は別にいいんです。けど、そのままにしてあることが気になってしまって……」

僕「ひょっとして家族の人は”後で片付けよう”ぐらいに思っているのかも知れませんよ」

同僚A「えー! そうなんですか。それで、家族に片付けてよ、気にならないのって言ってもポカーンって顔で、全然片付けてくれないんです」

僕「気になるけど〈片付けるのを我慢〉するのも必要だと思うんです」

同僚A「えっ?」

僕「だって、Aさんが片付けてしまうと家族の人が片付ける機会を失ってしまうじゃないですか。それだと片付ける習慣が身につかない」

同僚A「……ああ、そうか。確かにそうですね。でも、気になるんですよ」

僕「それを我慢できるようになるとイライラしなくなりますよ」

同僚A「無理ですよ。人がするのを待つより自分がした方が早いですから」

僕「そんな時は……例えば、ここにピシッとそろってない書類があるとします。僕はこれを直します」

同僚A「私も直します。でも、会社ではそれがよくあることなのであまり気にしないようにしてます」

僕「そうですよね。僕もそうです」

同僚A「あの、本当のことを言うと、会社の至る所が整理できてないのが分かっているんですけど、考えないようにしてるぐらいなんです。時間と指示さえくれたら掃除したいと思いますが、本心では掃除をしたいとは思ってなくて、乱れてるのが気になってイライラするからなんです」

僕「僕もそうです。だから、僕は取捨選択してます。これは〈自分にとって必要な情報〉と思うものは拾って、〈必要ではないと思う情報は捨てる〉という感じで」

同僚A「そうなんですか……」

僕「だって、見えるものを全部拾っていたら処理しきれなくなって、頭がキャパオーバーしてしまいますから」

同僚A「そっかぁ。だから、私、しんどかったのか」

僕「今の話を聞いてると分かりましたが、Aさんはいろんな物が見えすぎてるんです。いろんな物が見えすぎて、普通の人なら気にしなくていいことも気にしてしまっている」

同僚A「あー、それ、よく言われます。気にしすぎだって」

■気にしすぎは〇〇で解決

僕「でも、気になるものはどうしようもない。だって、目の前にあるゴミを無視できないじゃないですか」

同僚A「そうなんですよ。”誰が落としたの? ゴミ捨ててよ”って思うんですけど、誰も捨てない。っていうか、ゴミの存在に気づいてない」

僕「見えてないんですよ。だから、見え見ぬふりをしてるように見えます。でも、それが当たり前なんです」

同僚A「じゃあ、どうすればいいんですか?」

僕「僕だったら、さっき言った取捨選択をします。でも、見返りは一切求めません」

同僚A「というと?」

僕「ゴミの話で例えると、ゴミを捨てに行っても誰かに感謝されることを求めない。これは自分が気になる気持ちを抑えるためにした事なんだと思うようにしてるんです」

同僚A「は〜、なるほど。他人の為じゃなくて自分の為か」

僕「自分がしんどくならない事が1番大事ですよ。損得で行動するとどうしても、”どうしてしてくれないの?”とイライラすることがいくらでも出てきますから」

同僚A「確かにそうですね。いつも誰かのせいで自分がしんどくなってましたね」

僕「HSPの特徴として、つい他人のことを考えてしまうので、自分のことが後回しになりがちなんです」

同僚A「まさに、私がそうです」

僕「周りが見えすぎてるから周りのことばかりを考えて、自分のことを考える時間が少なくなって、挙句に落ち込みやすくなる。本当は、自分が1番大事なのに!」

同僚A「……本当ですね。自分のこと、あんまり考えてなかったかも……」

僕「僕もそうですけど、自分のことを考える割合を少しでも増やすように日頃から意識しています」

同僚A「どうやってるんですか?」

僕「自分の時間を作るようにしています。自分1人だけの時間です。そうするとイライラしたり落ち込んでた気持ちがリラックスしてホッとするんです」

同僚A「あー、それ、分かります。めちゃくちゃ肩に力入ってる!って思ったりして」w

僕「24時間、休みなくたくさんの情報が入って来ては取捨選択して処理してるとヘトヘトになるので、実際に休まなくてもコーヒーを飲むとかちょっとそこまで歩くとか、気分転換をするようにしてるんです」

■他の特徴は

同僚A「疲れてどうしようもない時があります。もう何もしたくない!みたいな」w

僕「僕もあります。だから、そうならないように自分をコントロールしないといけませんよね」

同僚A「なかなか難しくて……」

僕「僕はいつか一人旅したいなぁとよく考えます」

同僚A「私も前にそんなこと言ってた記憶があります」w

僕「だって、1人だと誰にも気を使わなくていいので楽なんですよね」

同僚A「分かります。私も1人が好きって訳じゃないんですけど、1人が1番楽かも知れないです」

同僚A「他にどんな特徴があります?」

僕「HSPの本に載っていた内容で……さっきの一人旅の話の続きで言うと、〈集団行動が苦手〉というのがあります」

同僚A「私、集団行動苦手です。2人でどこかに行くぐらいが丁度いいと思ってるくらいで」

僕「僕もそうです。2人が1番いいです。最大は4人までですね」

同僚「ああ! この前、飲み会したんですよ。仲の良い人だけ集まって。それが4人でした!」

僕「相手の顔や言葉や周囲の状況などなど、5人以上いると情報が多すぎて処理しきれなくなるからだと思います。人が嫌いって訳じゃないんですけどね」

同僚A「そうだ! この前ね、その飲み会仲間の1人でDさんがフレンドリーな性格で、誰とでもすぐに仲良くなっちゃう人なんですね。でね、Wさんを飲み会に誘っちゃったんですよ。それで私、大人数は苦手だから次の飲み会は欠席するって言って断ったんですよ」

僕「あらあら……」

同僚A「まさにコレです!」

僕「AさんはHSPの可能性が高いですね」w

■気持ちをラクに

同僚A「今の今まで私がおかしいの?って思ってたんですけど、よーいちさんの話を聞いてめっちゃ気持ちが楽になりました」

僕「僕も長い間、ずっと苦しんできました」

同僚A「性格と気質は違うってことが分かっただけでもスゴく楽になりました」

僕「よかったです」

同僚A「これって、なくならないんですか?」

僕「なくならないと思います」

同僚A「やっぱりそうですか。たまに、無神経な人間になれたらどれだけ人生楽しいだろうなとか思うんですよ」

僕「そうですね。でも、僕はHSPだからこそ出来ることが多くあると思うんです。ちょっとじゃなくて多くあると思うんです」

同僚A「すごいポジティブ! もっとそういうこと言ってください」

僕「いろんな物が見えてしまうからこそ、人が気づけないことに気づいたり、突拍子もない発想が生まれたり、独特のセンスが発揮できたり、派手さはなくても仕事が一つ一つ丁寧だったり。と、普通の人には出来ないことがたくさん出来ると思います」

同僚A「……それに関して、私は自信ないです」

僕「大丈夫です。自分のことをもっとたくさん考えて、自分を見つめる時間が増えれば、自分のいいところがたくさん見つかります」

同僚A「だったらいいですね」w

僕「本当に、HSPの本には感謝してるんです。この本があったからスゴく気持ちが楽になれたんです。凝り固まった体がほぐされていくようで。誰かがこんな僕の特質を苦しみを分かってくれている。そう思えてきて嬉しかった」

同僚A「私、HSPなんて全然知りませんでした。実は私、心療内科か精神科に行こうかと思うぐらいしんどかったんです。よーいちさんと話ができてよかったです」

僕「心療内科や精神科を否定する気はないですが、HSPは病気ではないので、僕は行かなくていいと思います」

同僚A「よかったです。ホッとしました」

僕「心療内科や精神科に行くことを思えば、本は1500円程度なので安いものです。自分のことを知る本なので、気になったら読んでみてください。本が苦手なら漫画もあります」

同僚A「私、活字は大好きなんです」

僕「そうですか。少しでも気持ちが楽になってもらえたようで嬉しいです」

同僚A「今日はよーいちさんと話ができてよかったです。ありがとうございました」

僕「こちらこそ、いろんな話が聞けて楽しかったです。ありがとうございました」

⚠️これはフィクションです。実在の人物や物事は一切関係ありません。

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よーいち

高校中退→ニート→定時制高校卒業→フリーター→就職→うつ→休職→復職|うつになったのを機に読書にハマり、3000冊以上の本を読みまくる。40代が元気になる情報を発信しています。好きな漫画は『キングダム』です。^ ^

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