ある女性(仮にAさん)が特定の男性(仮にBさん)を嫌っていた。
Bさんの何がそんなに嫌いなのか尋ねてみると、「いつも愚痴ばっかり言ってて、目が合うと愚痴を聞かされる」らしい。その愚痴はなかなか終わりが見えないので、Aさんは自分のペースが乱されると言うのだ。そもそも、愚痴を聞かされていい気分な訳もない。
もっともな意見だ。
Bさんは、思ったことを喋っているだけなので悪気はこれっぽっちもない。つまり、口下手なのだ。口下手だから自分のことを理解してもらうために、話を聞いてくれそうな人がいるとついつい一方的にお喋りしてしまう。
愚痴を言う人と言われる人。両者にはギブアンドテイクの関係が不釣り合いなので当然、会話は成立しない。
それでも僕は、Bさんを嫌うのはAさんにとって損だと思った。
■嫌いレベル(持論)
『嫌い』という感情の度合いには4つのレベルがあると考えます。
●一つ目は、苦手。
考えが合わない、馬が合わないなどの性格の不一致。仕事や短時間だけの関係なら我慢できるレベルの嫌い度。「なんとなく苦手だな」というレベル。
●二つ目は、嫌悪。
近くにいてほしくない。なるべく避けたい。仕事や短時間だけの関係であっても一緒にいたくないレベルの嫌い度。近くにいるだけで気分が悪くなるレベル。
●三つ目は、害悪。
顔を合わすのも、声も聞きたくない。近くにいるのも我慢できないレベルの嫌い度。その人の存在が自分を苦しめ、イライラさせ、怒りが込み上げてくる。平常心が保てないレベル。
●四つ目は、殺意。
その人の存在を許せない(認めない)。100%修復不可能。怒りを超えたパニック状態。こうなってしまったら離れるのが賢明です。
中でも、三つ目と四つ目は、特別嫌いな相手。
個人的な感情がその人の原因にあるため、その原因が解消されない限り、嫌いな感情を和らげるのは難しい。つまり、話し合って解決できないような関係なのだ。
このような関係は頻繁ではないにしろ、自分が所属する職場やグループ・コミニティにの中いるのなら距離を取るしか手立てがない。職場にいるなら配置換えや転職、グループやコミニティなら脱退や新規の発掘などがおすすめだ。我慢していれば、いつか大きなトラブルが起ききてしまう危険が常に付きまとってくる。それも相当なストレスになる。
話を戻すが、AさんのBさんに対する嫌い度は二つ目の嫌悪なので、工夫次第で人間関係を緩和できる。嫌いな人がいるからといって、人間関係に支障をきたしてしまうことがもったいない。
まずすることは、仕事やコミニティ以外のことでは関わらない——ある程度の距離をとること。
注意点は、離れ過ぎること。離れ過ぎると、大事な用事や課題を取りこぼしてしまう可能性が出てくる。愚痴だとしても、その中に大事な内容が含まれているかもしれないので、付かず離れずがベスト。
それでも執拗に愚痴を言ってくる(距離を詰めてくる)際は、用事があるフリをして離れよう。しかし、多用は禁物。ギクシャクしない程度に、10回に1回は愚痴を聞いてあげるゆとりを持つようにしてみましょう。
■なぜ嫌いなのか? を考えてみる
性格が嫌い、顔が嫌い、声が嫌い、などなど。
たくさん理由はあるだろうが、今回考えて欲しいのは相手のことではなく、自分のこと。自分はどうしてあの人が嫌いなのか? ということ。
Bさんの話でいうと、Bさんを嫌っていない人もいるはずで、その人たちはなぜ嫌っていないかということも考えてほしい。
自分の中にBさんを嫌いな本当の理由があるはず。それを見つけてほしい。その理由が見つかれば、自分がどういう考え方をしているかが分かるはずだ。
ネガティブな人が嫌いな場合
自分の中で嫌いな理由は、相手のネガティブが自分にうつるからだ。ということは、自分はポジティブな気持ちでいたいという考えを持っていることが分かる。自分はポジティブな気持ちを大事にする性格なのだ。だったら、相手のネガティブな会話の中に、ポジティブな返しをすればいいのだ。
具体的には
「そんなに困っているなら、上司に私から話してみましょうか?」
「(仕事で大変なことがあった日は)まあ、そんな日もありますよ」
と返してみるといいだろう。
共感するものいいが、共感し過ぎると、相手はもっと話を聞いてもらえると思ってしまうのでおすすめしない。
共感は一言に留めておこう。
「へぇ〜、そうなんですね」くらいの返しがちょうどいい。
相手の気持ちを受け止めずに受け流す。突き放さないが、共感もしないのがベスト。
顔は、嫌そうな顔・怪訝な顔はせずに穏やかに平静を心がける。決して動じない。そうすると、相手は隙がないので愚痴を言う面白みがなくなって自分からやめてしまう。
こちらが顔に感情を出すと、相手はそれを面白がっておしゃべりを助長することになるので注意してもらいたい。
嫌がらせをしてくる人が嫌いな場合
何かしら文句を言ってくる人、損失を与えてくる人には、動じないのがベスト。何も言わず、表情を変えず、何事も起きなかったかのように振る舞う。
実際にするのは難しいが、鏡を見て特訓すれば短期間で意外にも簡単に習得できる。家でこっそりやってみてもらいたい。
嫌がらせをする人は、した人のリアクションを楽しんでいるので、リアクションがない人ほどつまらないものはない。
注意点は怒ってしまうこと。怒れば、相手が萎縮してやめてくれるのではと考える人もいると思うが、これは逆効果。仮にめちゃくちゃ怒ったとしても絶対に負けないと思っているから嫌がらせをするのだ。だから、怒るのは相手の思う壺にハマっている。
あまりにしつこい場合は、上の人に相談するのもいい方法だ。しかし、相手と敵対するのが目的ではなく、円満な解決を望んでいることを伝えよう。
■結局、嫌いな人をつくらないのが一番いい
しかし、一番の解決方法は、嫌わないこと。嫌いな人をつくらないに越したことはない。
好きになる必要はないが、自分の中で好きでも嫌いでもない存在に変えて仕舞えば、仕事やコミニティの中だけの関係だと割り切れる。割り切っている人はかっこいいものだ。好き嫌いの念にとらわれずに、仕事や作業に集中している人は”できる人”に見える。
結局、仕事を成功させるのも、コミニティを円満にするのも、雑念を払うのが一番効果が高い。
☆嫌いな人の対処法 まとめ
・嫌いな度合いには、「苦手」「嫌悪」「害悪」「殺意」の4つのレベルがある。(持論)
・「苦手」「嫌悪」レベルの相手であれば、適度な距離をとろう
・自分の中にある嫌いな理由を考えてみる
・相手の話に共感しないが、突き放さない。「そうなんですね」と返す。
・嫌がらせをする人には、ノーリアクションで対処する。
・嫌いな人を作らないことが一番。
・好き嫌いのない人はかっこいい。
嫌われる人はその人に問題があるのかも知れないが、だからと言って毛嫌いしたままで良いとは思えない。
相手も自分が嫌われていると分かれば、コミュニケーションの機会が減るだろうし、貴重な情報や指摘をもらえなくなってしまうことも考えてみよう。良いことはほとんどない。
しかし、無理は禁物。
嫌いな人との距離をいきなり詰める必要はないので、Aさんには自分のペースに合わせて適度な関係を築いてほしいと今日も願っている。