まさに
自殺物語
「恋は罪悪ですよ」〈先生〉は他の大人とは違っていた。就職を控えていた〈私〉は〈先生〉から人生の教訓を学びたいと思った。
今の僕たちに必要な人間関係のカタチとは何か。友だちや恋人を作るよりも大事なことが分かりました。
今回はその中から「こころ」を簡単5分でご紹介します。
結論
この本が教えてくれるのは、人間関係とは何かです。
感想
『こころ』との出会い
「僕には友だちがいません」
こんなことを言うと、変な人だと思うかもしれませんね。
そもそも僕は友だちが欲しいと思っていないのです。
実際、自分が変なんじゃないかと悩んだ時期がありましたが、この『こころ』を読んでやっと答えを出すことができました。
簡単あらすじ
〈先生〉は縁側で昼寝をしていました。
〈私〉が「先生」と声をかけると目を覚まします。
すると〈先生〉の奥さんがお茶を運んで来て、たわいもない話をし始めました。
時は明治末期。西暦1910年頃——。
〈先生〉は無職でした。いい年をして定職にも就かず、親の財産を食い扶持に隠居生活をしています。
〈先生〉は不思議な人でした。
真面目な話をしていたかと思うと、突然、身も蓋もない絶望的なことを言ったりするのです。その姿は寂しさが滲み出ていました。
〈私〉はそんな不〈先生〉に魅力を感じ、〈先生〉の家に通うほど親しくなっていったのです。
ある日、〈私〉と〈先生〉は大衆酒場で食事をしていました。
隣のテーブルの客が「うまいビールが飲めるのも天子様のおかげだ!「天子様に乾杯!」と言って酒を交わしています。
すると、それを聞いていた別の客が「うるせぇな、天皇陛下は病を患ってるんだろ」「もうすぐ明治時代も終わるのさ!」と文句を言うと、男たちは憤り「無礼者!」「バカヤロウ」とつかみかかり、喧嘩が始まりました
それを見ていた〈私〉はため息を漏らします。「のんきなもんですよね」
〈先生〉は周囲に気に留めず静観して会話を続けます。「悩み事でもあるんですか? お父さんの事?」
「父の腎臓はもう治りません……どうせ助からない人のことなんて考えても仕方ありませんよ!」
〈先生〉は黙って聞いていました。
帰り道、道端で抱き合う2人の男女が目に入ります。
〈私〉はとっさに言いました。「恥ずかしい奴!」
すると〈先生〉は虐げるような目をして〈私〉に言うのです。「君には淋しい人間だね。君は恋をした事がありますか?」
「いっ……いきなりなんですか!?」
「君があの男女に放った冷やかしには、恋を求めながら相手を得られないという不快の声が混じってましたよ。……わかっていますか。恋は罪悪ですよ」
先生という人間
この『こころ』に出てくる〈先生〉は本当の先生ではありません。
語り手である〈私〉が勝手に呼んでいるだけです。
●〈先生〉は今まで一度も職に就いたこともない。
●結婚していて美しい奥さんがいる。子供はいない。
●月一回、一人で墓参りに行く。
「えっ? 何? どうしたの? 先生!」と思ってしまいますが、後に過去に起きた出来事が分かってきます。
遺書
〈先生〉が自殺するまでの話です。
〈先生〉との時間を重ねていくうちに〈私〉はどんどん〈先生〉への興味は増し、〈先生そのもの〉を知りたくなっていきます。
時代が変わりつつある明治末期。親や教師の言う言葉はもう通用しなくなって来ている。だからこそ、人生の師範として尊敬する人に人生を教えを乞いたい。先生の人生を知りたい。
その熱い思いを聞いた〈先生〉は〈私〉に「……よろしい。君に話してあげましょう。私の過去を残らず全て」と言うのです。「だが、今日はもう遅い。明日、私の家に来てください」
意気揚々とする〈私〉でしたが、家に帰ると〈チチ キトク〉の電報が届きます。
〈私〉は〈先生〉に断りを入れ、仕方なく、実家に帰ることにしました。
実家に着くと、父は思ったより元気そうにしていました。
数日後、天皇崩御の報が届きます。さらにその数日後に乃木大将殉死の報が届きます。
父はこれを機に体を悪くして、床に伏せるようになります。
そんな折、分厚い封筒に入った手紙が届きます。〈先生〉からです。
——それは〈遺書〉でした。
やっと あなたに私の過去を物語る決心がつきました
しかし どうしてもあなたの帰りを待てなかった
この手紙があなたの手に落ちている頃には 私は死んでいるでしょう
1番の疑問
この物語を読んで疑問に思うことは幾つかありますが、僕が感じた1番の疑問があります。。
〈先生〉はなぜ、友だちを作らなかったのか
〈先生〉は思い悩んでいます。長い間苦しみの中にいます。
なのに、1人孤独に生きています。奥さんにすら話しません。
解決できないにせよ、まずは誰かに話すだけでもスッキリするかもしれないのに。
仮説を立ててみました。
仮説:〈先生〉は友だちを必要としていなかった。
なぜなら、友だちが欲しくなかったから。もしくは、友だちでは自分の心を受け止められないから。
でも〈先生〉は自分の人生を無駄にはしたくなかった。
そんな時、〈私〉と出会った。
〈私〉は〈先生〉を信頼し、頼ってくれている。
だから先生はこう思った。
「この青年に自分の人生を託そう」と。
『こころ』は〈私〉と〈先生〉の人間関係の話だと僕は考えています。
明治から大正に時代が変わり、生活も仕事も将来のあり方も変わって、人間関係も変わりつつある。
この先、人は孤独になる。友だちや家族では埋められない孤独感を抱えるようになる。
夏目漱石はその埋めようのない孤独感をどうしたらいいのだろうと、この作品に落とし込んだのではないかと思うのです。
作品の中ではっきりと呼び合っているわけではないですが、主人公の〈私〉と〈先生〉は言ってみれば師弟関係なんですね。
師弟関係も立派な人間関係のひとつだと言っている気がします。
「人には人に合った人間関係の築き方がある。だから、友だちや恋人にこだわらなくでもいいんだよ」という暗黙のメッセージを感じました。
読み方
とにかく暗いです。
始めから終わりまで暗いです。
内容は難しくはないのですが、〈先生〉の言動が理解しづらいかもしれません。
そんな時は〈先生〉の目線に立って読み返すと分かりやすいと思います。
1時間ほどで読めました。
最後に
まずは【まんがで読破】を読むことをオススメしていますが、書籍で読むのもいいと思います。
書籍は、図書館や中古本など、たくさんあると思います。
ぜひ探してみてください。
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