まさに
辛い現実
自殺寸前のところをショーペンハウアーに救われた少女〈エリザベート〉は、彼の幸福の理論を聞くうちに生きる気力を取り戻す——。
今回は【講談社まんが学術文庫】の中から『幸福について』を簡単5分でご紹介します。
もくじ
結論
この本が教えてくれるのは、楽しく生きる方法です。
感想
『幸福について』との出会い
『自殺について』を読んで心が救われました。
しかし、「自分は幸福とは無縁だ」とずっとずーっと思っていました。
簡単あらすじ
1850年3月 ドイツ フランクフルト
「……憂鬱だ! こんな日は山を登るのがいい」〈ショーペンハウアー〉は愛犬〈ヴェルトガイスト〉と山道を歩いていた。
先日、出版会社から著作の絶版(=印刷・販売中止)を言い渡されたのだが、ショペンハウアーは引き下がる気はなかった。
山道を進んでいくと、高い丘の上で1人の少女が大木にロープをくくりつけているの見えた。彼女は体を震わせ、顔を顰めて泣いていた。
「これはこれは……生娘(=うぶな娘)の自殺か。見るに耐えない光景になるねぇ……」ショーペンハウアーはつぶやいた。
「ほおっておいてください」少女は体をガクガクを震わせて言った。
「そうだよな。生きていると苦しい事しかないからぁ。でも、死ねば苦しみから解放されるとは限らないよ。……どうだい、私とちょいとデートでもしてみないかい?」
少女の膝は折れてうずくまり、「……う、うう、っうぐ」とむせび泣いた。
3時間後……
少女は彫刻家になりたいという夢を持っていたが、周囲に反対され、世間に認められるような実力も自信もなく、生きることに希望が持てなくなってしまったようだった。
「でも、もったいないねぇ」ショーペンハウアーは「キミには幸福な生き方を全うする素質があるのに」と言って自宅へ招き入れた。
少女はよほど空腹だったのか、ムシャムシャと食事を夢中食べるので、ショーペンハウアーは話を明日にすると言って、少女に今晩泊まっていくよう言いつけた。
幸福になれる要素
——翌日
少女が目を覚ますと、ショーペンハウアーは庭先で冷水摩擦をしていた。
ショーペンハウアーは「おはようさん! とても良い朝じゃないか。ガハハハ」と大笑いした。
少女がリビングに降りると、ショーペンハウアーはコーヒーを淹れ、椅子に座るように言った。
「キミは昨日言ってたね。”私に生きる価値はない。自分の運命を憎みたい。でも、出来れば芸術家の道を進みたかった”と。その中にキミが幸福になれる要素があったぞ」ショーペーンハウアーはそれは「芸術だ」と言います。
しかし少女の親は絶対にそれを許してくれそうにありません。
「他者に惑わされるな」とショーペンハウアーは言います。
人間は他人と合わせようとして 自分の4分の3を失う
自分の特技を何者にも妨げられずに発揮できる事こそ、究極の幸福。最高の幸福が自身の内部になる人間は……外部の享楽には無関心になる。よって、孤独な生活になる。
そして「他人は関係ない。もっと自分自身に意識を傾けなさい」とショーペンハウアーは言います。
天才の素質と3つの根本規定
話を聞いて少し元気が出てきた少女でしたが、いまひとつ信じきれません。
ショーペンハウアーは少女に”天才の素質”を兼ね備えていることを指摘します。
(1)活発で落ち着きがない
(2)想像力が強烈
(3)実生活上の弱点が目立つ
(4)眼光に鋭さがある
(5)インスピレーションが鋭い
(6)数字に強い嫌悪感を持っている
(7)狂気的な気質を持っている
さらに、これから賢く生きていく上で重要な"3つの根本規定"を説明します。
[1]その人の人となり
人品 人柄 個性 人間性
したがって健康 力 美しさ 気質 徳性 知性
[2]その人の持っているもの
あらゆる意味での所有物と財産
[3]その人の与える印象
その人は他人からどのように見られているか
この中で1番の幸せになるための要素は[1]人となり(人柄)だと言います。
自分の人柄を知っていれば何をすれば良いのか分かるし、外部による変化が加わっても一切変化しない。
[2]その人の持っているものと[3]その人の与える印象は相対的なものに過ぎない。つまり、時や場合、それを見る人によって変化する不安定な要素だというのだ。
——と、ショーペンハウアーは「一休みに笛を吹かせてくれ」と言って自由気ままに演奏し始めました。
「……ああ」少女はその演奏のように自分も自由に生きることができたら……と、「私、本気で彫刻家になる」と宣言します。
「それじゃあ、とことん孤独を目指して孤独を愛しなさい!」とショーペンハウアーは言います。「孤独でいる時のみ、人間は自由なのだからね」
「はい!」少女は元気を取り戻して帰って行きました。
偉大なる喧嘩相手・ヘーゲル
4ヶ月後——
ショーペンハウアーは新作の原稿『余録と補遺』を出版社に持ち込みます。一般向け、世間向けの哲学とのこと。
この時、63歳。この著作が転機となり、ついに世間から賛美されることになったのです。絶版だった著書も再発刊が決まり、その他の本の売れ行きも絶好調。まさに時代の寵児となりました。
しかし、それに至るまで苦難の道がありました。
若きショーペンハウアーが偉大なる喧嘩相手〈ヘーゲル〉へ立ち向かった話……。
——1820年 ベルリン大学
ショーペンハウアー(32歳)は主著『意思と表象としての世界』が学位論文として認められ、ベルリン大学の哲学講師として着任した。己の哲学に自信満々で一点の曇りもなかった。
しかし、講義にはわずかな人しか集まらず、対してヘーゲルの講義はいつも満席の人気ぶり。周囲はヘーゲル派一色。ショーペンハウアーの陰口を言って嘲笑う者も少なくなかった。
弟子の〈グヴィナー〉だけはショペンハウアーの良き理解者ではあったが、世間の風当たりの強さに怒りを抑えることはできなかった。
この〈グヴィナー〉は楽天的な人柄として、ショーペンハウアー哲学の参考例として紹介されている。彼は一見、明るく見えるが実はとんでもなく不幸な人間だ。
幼少期、ナポレオン戦争にて目の前で両親を亡くし、過酷な収容所生活を経て、妹を黒死病で亡くしている。その後、右目を失明したが、それを克服して独学でベルリン大学へ入学、ショーペンハウアーの弟子となった。嫌われ者の弟子になったせいで、よく大学や外で災難に遭っている。それにもかかわらず懲りもせず師事してくれる。
ショーペンハウアーは、自分と正反対な明るい気質を持った彼を尊敬していた。
ショーペンハウアーの人柄
この後、ショーペンハウアーの生い立ち、ショーペンハウアーの苦難が描かれます。
ショーペンハウアーの幸福の理論がどうしてこんなに素晴らしいのか——それは彼自身が苦しみの当事者だったからです。
自分の愚かさ、醜さを知り、何度も挫折を味わいながら決して諦めず、この世界に感謝した。偉大な哲学者・ショーペンハウアーは感情的で嫉妬心の強い、誰よりも人間らしい人間だったのです。
読み方
自殺しようとした少女〈エリザベート〉が立派な大人になり、亡きショーペンハウアーの幸福論と人柄を語るストーリーです。
冒頭で、大人になったエリザベートは、ショーペンハウアーは幸福についてこう述べていたと言います。「人間が幸福になる事は難しい。しかし、できる限り楽しく生きる術はある」と。
弱く愚かな自分と正しく向き合った人だからこそ、万人に受け入れられたのだと思いました。
筆者もまるで自分の事を言われているような気がして、親しみを感じながら読ませていただきました。今もそばに置いていて、挫けそうな時に勇気をもらっています。
最後に
まずは漫画で読むことをオススメしていますが、書籍で読むのもいいと思います。
書籍は、図書館や中古本など、たくさんあると思います。
ぜひ探してみてください。
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