——これは、僕と同僚Aさんとのたわいもない会話です。
■姪っ子に本をプレゼントしたいAさん
同僚A「あの……今度、姪っ子が小学生になるんです」
僕「それはおめでとうございます」
同僚A「ありがとうございます。……それでですね、入学祝いに本をプレゼントしたいんですけど、どんな本がいいですかね?」
僕「Aさんが姪っ子さんに読んでほしいと思う本でいいんじゃないですか?」
同僚A「う〜、それが分からないんですよ。私、本読まない人なので……」
僕「そうなんですね。だったら、『かぐや姫』なんてどうです?」
同僚A「『かぐや姫』ですか」
僕「『かぐや姫』は絵本にもなっているので小学校低学年でも読みやすいと思いますよ」
同僚A「はぁ〜、なるほど。絵本はいいかもしれないですね」
僕「読み聞かせてあげてくださいね」
同僚A「そうですね。私が子供の時、寝れないと、お母さんがよく童話を読んでくれました。……嬉しかったなぁ」
僕「最初は、本って面白いなぁって思えるだけでいいと思います」
同僚A「まあ、中身もある程度はあった方がいいんですが……」
僕「ええ、『かぐや姫』は子供の自立心を育むのにちょうどいいですよ」
同僚A「え? 『かぐや姫』って、竹から生まれた女の子が月に帰っていく話ですよね? なのに、自立心を育めるんですか?」
僕「実は『かぐや姫』って、女性が社会と戦う話なんですよ」
同僚A「ええ!? そんなバチバチした話でしたっけ?」
■かぐや姫のテーマ
僕「かぐや姫は、女性が成人すると嫁ぐのが当たり前。男性の家にもらわれるのが風習の社会で、”私は結婚したくない!”と言った人なんです」
同僚A「ヤバっ」
僕「平安時代ですからね」
同僚A「今でこそ、女性も働く時代なんて言われてますけど、その時代からしたらめっちゃ異端ですよね」
僕「そうだと思います。かぐや姫は世の中の風習に流されることを嫌い、自分らしく生きる道をキッパリと主張した人だと思います」
同僚A「すごっ! めちゃくちゃ自立した女性ですね」
僕「プライドが高くて美しいのがかぐや姫の魅力ですよね」
同僚A「そんな時代から自分の意見を言える、強い女性はいたんですね」
僕「立場の弱かった女性に生き方を選ばせない——そんな既存のルールから解き放たれて自立する。おそらく誰もが憧れる理想の女性像だったのでしょうね」
同僚A「それって今でもある話ですよ。この前、海外で女性デモのニュースがトレンドになってました」
僕「女性解放運動——フェミニズムですね」
同僚A「そ、そうです。フェ、フェミなんとかです」
僕「女性が受ける差別のない社会を目指す運動のことですね」
同僚A「はぁ〜、『かぐや姫』ってそんな壮大な話だったんですね」
僕「知っての通り、元々は『竹取物語』という古典なのですが、現代語訳の小説や漫画もあって、それも面白いですよ」
同僚A「へぇ〜、そうなんですか。……あの、変なこと聞きますが、なんで本を読むんですかね?」
僕「ん?」
■読書のコツ
同僚A「いや、その、読書って面倒くさくないですか? 私、ほとんど本を読まないので、その気持ちが分からなくて……」
僕「Aさんはあんまり本を読まないんでしたね。本を読むのは……”この世界の法則”を知るため”ですよ」
同僚A「世界の法則!? なんですか、それ?」
僕「この世界には人間関係とか、仕事のスキルとか、恋愛・結婚とか、どうすればうまくいくのか分からないことがたくさんあるでしょ?」
同僚A「はいはい。あります、あります」
僕「その道理や手順を教えてくれるのが本です」
同僚A「まあ、そうかもしれないんですけど、私、読むのが下手で全く身にならないんですよ。バカなんですよ」
僕「いえいえ、そんなことないですよ。ちょっとしたコツがあるんですよ」
同僚A「コツ?」
僕「ええ。例えば、ドラマや映画を観てると、なぜか分からないけどすごく惹かれてしまう、なんてことがあると思います」
同僚A「私よくあります。実は……主演の俳優目当てで観てたり……」
僕「主人公が魅力的なのか、ストーリーが面白いのか、その奥にあるテーマに関心があるのか。とにかく目が離せない。それって、心の奥にある欲求や願望を満たそうとしてると思うのです」
同僚A「恥ずかしい話、私の場合、”この俳優さん、かっこいい!”っていうのだけで観てます」
僕「でも、本当にそれだけの理由でしょうか?」
同僚A「え?」
僕「エンターテイメント性が強いとテーマが薄れて見えにくくなってしまっている場合もありますが、物語はテーマに沿って作られているので、そこには必ず法則が用意されているものなのです」
同僚A「……その……法則がなんなのかを考えないとダメなんですか?」
■おすすめの楽しみ方
僕「いえいえ、どういう気持ちで楽しむかは人それぞれでいいと思います」
同僚A「ですよね。そんなことを思いながら観ても楽しくないので」
僕「僕がなぜ法則の話をしたかというと、理解度が増すからです」
同僚A「”あ〜、おもしろかった”じゃ、ダメなんですか?」
僕「姪っ子さんが『かぐや姫』を読んで同じことを言ってたらどう思いますか?」
同僚A「”物語の意図が何なのか本当に分かって言ってる?”って思います」
僕「さっきAさんは『かぐや姫』は、竹から生まれた女の子が月に帰っていく話だと言いました。それは間違いではありませんが、女性が社会(既存のルール)と戦う話、というテーマを踏まえた上で読むと、より深みが増しますよ」
同僚A「確かに、孤児だったかぐや姫がかっこいい女性に見えてきますね」
僕「僕が子供の頃、学校の先生から”読書は作者の心を読み取ることが大事”だと教わりました。でも、作者のことを思って読んでみたらちっとも面白くないのです」
同僚A「そりゃそうですよ。なんか勉強みたいで楽しくなさそう……」
僕「全然楽しくないんです。作者の気持ちとか考えてたら物語に入り込めないんですよね」
同僚A「私は現実とかけ離れてまくってるぐらいの海外ドラマが好きですね」
僕「その非日常感が楽しいんですよね」
同僚A「やっぱり楽しくないとダメですよ」
僕「非現実感を楽しみつつ、理解を深めるのが理想の読み方ですね」
同僚A「じゃあ、1回目で楽しんで、2回目で理解を深めたらいいんじゃないですか?」
僕「そうですね。何度も繰り返し楽しむのもいいですよね」
■読みたい時が読みどき
同僚A「それにしても、本って簡単に手に入りますよね」
僕「知りたいことや興味関心があることを手っ取り早く知るには、本が1番身近なツールですよね」
同僚A「なんか今、読みたくなってきました」
僕「それはよかったです」
同僚A「レシピ本でもいいですか?」
僕「ええ、もちろん。興味があれば何でもOKです。絵本でも漫画でも図鑑でも、Aさんが”今知りたい”って思えることがAさんにとって今必要な知識——知的好奇心なのですよ」
同僚A「なるほどぉ。何でもいいんですね」
僕「”読みたいと思った時が読みどき”というのが僕の持論です」
同僚A「どんなに面白くても興味がなければ読む気しないですもんね」
僕「ええ、そういうものです」
同僚A「今日帰りに本屋に寄ってみます」
僕「ちなみに、何のレシピなのですか?」
同僚A「あ……それは……その……『おいしい昆虫食のレシピ』です」
僕「え……ああ、それはまたマニアック……ですね」
同僚A「よかったら、よーいちさんも」
僕「ごめんなさい。まだその領域には達してないもので……か、帰りましょうか。お先でーす」
同僚A「あ、逃げた……」
⚠️これはフィクションです。実在の人物や物事は一切関係ありません。