まさに
言い返せない男
人を恐れ、自分を偽り、世間にもがき、破滅していく。——ただそれだけ。
「死にたい」と思っているなら、『人間失格』を読む心の準備が出来たということです。
結論
この本が教えてくれるのは、人生のダメな方の見本です。
感想
『人間失格』との出会い
僕はその時、いつ死んでもいいと思っていました。
ある日、何気なくスマホで漫画を見ていると、『人間失格』の文字と綺麗な絵が目に飛び込んできました。
その絵のタッチはまるで、針のように細いナイフで体をなぞるような繊細な絵でした。
原作は〈太宰治〉
漫画は〈古屋兎丸〉
タイトルだけは聞いたことがありました。元々は太宰治というちょっと昔の小説家の有名な作品です。
でも、内容は全く知りません。(どうせ、ロクでもない奴のロクでもない話なんだろう)とずっと思っていました。
しかも、現代風にアレンジしてあるようです。
「これなら読めるかもしれない」と思い読んでみたら、見事にハマりました。
そして、他にも『人間失格』が漫画化されていることを知ります。
古屋兎丸の『人間失格』
漫画家・古屋兎丸はある日、ネットサーフィンをしていると、〈痛い日記〉というサイトを発見します。
リンクをクリックすると、黒い画面に〈大庭葉蔵のアルバム〉というタイトル、その下に不気味に映し出される3つの写真……。
1つ目の写真は6歳というキャプション。
クリックすると、4人家族の写真が拡大されます。
——父、母、兄、そして引きつった笑顔の少年。
2つ目の写真は25歳というキャプション。
——白髪の男性の写真。
3つ目の写真は17歳というキャプション。
——優雅で知的な美男子が椅子に腰掛ける写真。
「この3枚の写真の間に何があったのか……」
古屋兎丸は、〈『人間失格』大庭葉蔵の日記〉をクリックします。
——恥の多い生涯を送ってきました
人の気持ちが分からない。
人の幸福と自分の幸福は違うような感覚がする。
だから人が恐ろしくて、毎日が不安でたまらない。
そこで思いついたのが道化になること。わざとバカなフリをして場を和ませる。
しかし、全ての人にいい顔ができるはずもない。
高校生になった彼は美術部予備校に心の拠り所を見出します。
そこで悪友・堀木正雄に出会います。
彼との交流の中で酒とタバコに女遊びを覚え、周囲に流されるように居場所を転々とし、いろんな女性と関わりを持っていきます。
まんがで読破の『人間失格』
東北の大地主の息子・大庭葉蔵は幼少の頃、空腹感というものが何なのか知りませんでした。
与えられる珍しい食べ物、豪華な食べ物を食べます。
しかし、家族との食事は葉蔵にとって最も苦痛な時間でもありました。
「人間はどうして食べ物を食べなければならないの?」
お父さんは言います。「食べなければ死ぬからだ」と。
葉蔵はその答えに納得できませんでしたが、何より、自分の考えと父や周りの人の考えと食い違っている感覚を持ち始めました。
……人間が分からない。ただ恐ろしい。かといって、自分が変人と気づかれでもしたら居場所を失ってしまう。
葉蔵はわざと道化を演じ、周りの人に愛してもらうように努めるのでした。
やがて、自分の本心を出すことを忘れたままに成長し、父の言いつけで東京の高校へ進学することになりました。
そこで堀木正雄に出会い、酒とタバコと淫売婦を覚え、それから出会う人々に翻弄されていきます。
伊藤潤二の『人間失格』
太宰治は女と河原で、雨に打たれながらウイスキーを飲んでいます。
1948年 6月13日 玉川上水
そして、2人は抱き合い、川の中に沈んで行きます。
——恥の多い人生を送ってきました。
自分には他人が分からない。その不安のために発狂しそうな夜さえあった。
隣人と会話ができないので道化になることを思いつき、自分を隠します。
それは小学生になっても続け、周りからお茶目に見られることに成功しました。
しかしその頃、女中や下男から哀しい事を教えられました。これもまた人間の特質……。
中学生になった葉蔵は〈竹一〉という貧弱な少年と同じクラスになります。勉強も運動もできず、しかも顔は醜い。何の取り柄もない少年でした。
ある日、授業で鉄棒をする際、葉蔵がわざと尻餅をついて痛がるフリをして見せます。
「アハハハハハハ!!!」クラスメイトや先生は大笑いです。
ただ1人、〈竹一〉は葉蔵の肩をトントンと指で突き、ニヤッと笑みを浮かべてこう言ったのです。「ワザ……ワザ……」
3つの『人間失格』の違い
原作は同じでも感じる印象はまるで違いました。
●〈古谷兎丸〉先生の『人間失格』は、現代向けで読みやすく、キャラクターの美しさが際立ちます。
●【まんがで読破】の『人間失格』は、生々しい素材の味わいです。
●〈伊藤潤二〉先生の『人間失格』は、陰湿でホラー要素が強めです。
物語の要点が作者によって異なるせいか、物語の進むスピードやエピソードの編集に違いがありました。エンディングにも違いがあります。
でも、どの『人間失格』もよかったです。
「だったら、どれがオススメなの?」と言う人もいるかと思うにで、タイプ別でオススメしようと思います。
小説を1冊もを読んだことがない人は〈古屋兎丸〉先生の『人間失格』がオススメ。現代風なのが1番の特徴です。
ホラーが好きな人は〈伊藤潤二〉先生の『人間失格』がオススメ。恐怖する精神と快楽への描写が何とも言えず痛々しいです。
そして、原作に近い内容を読みたいなら【まんがで読破】の『人間失格』がオススメ。何の先入観も持たずに読めると思います。
原作から読みたい人はもちろん、小説の『人間失格』がオススメ。著作権が失効した今、文庫本は安価で手に入ります。
読み方
「まずは漫画か? 小説か?」
馴染みのある方でいいと思います。僕は漫画からでした。
それぞれの〈大庭葉蔵〉の人生が楽しめるはずです。
僕は、『人間失格』は人生に行き詰まった時に読むべき本だと思っています。
最後に
漫画は〈古屋兎丸〉〈伊藤潤二〉【まんがで読破】があります。
映画やアニメもあります。
ぜひ探してみてください。