まさに
歌姫軍師
現代の日本に転生した孔明は、歌手を目指す〈月見英子〉の歌声に感動し、彼女の夢を叶えるため、軍師としてさまざまな策・知略を駆使する——。
■結論
この本が教えてくれるのは、夢に向かう楽しさと勇気、そして知略です。
■あらすじ
西暦234年 中国 五丈原
蜀軍の丞相 諸葛亮(字:孔明)
数々の仲間を失い。幾多の敵を倒してきたが、命尽きる。
「願わくは、次の人生は命のやり取りなどない……平和な世界に生まれ変わりたいものだ……」
——と、次の瞬間、目の前に現れたのは現代の日本。しかも、ハロウィン。周りにはゾンビメイクをした若者たちが……。
孔明はこれを”地獄”に来たと勘違い。ゾンビメイクをした若者の1人に、孔明のコスプレをしたと思われて酒を飲まされてクラブに連れて行かれます。
そこで鳴り響く騒音!
「これも地獄の刑?」と思っていると、美しい歌声が聴こえる……。彼女の歌声は、華やかで心地がいい。彼女の名は〈月見英子〉。
感動した孔明は、彼女の夢を叶えて、今世でも人民のために天下泰平に力を尽くすことを決意します。
しかし、問題が……。スマホに、ペットボトル、時計に加湿器、エトセトラ……。時代の変化に落胆しますが、真摯な気持ちで一から学び、現代の日本に順応していきます。
まず最初に必要なのは軍資金、ということで、英子にクラブのオーナー〈小林〉を紹介されることになりました。小林は金髪オールバックの強面でしたが、三国志が大好きだったので、(運よく?)採用となります。
クラブのバーテンとして働くことになった孔明。持ち前の天才ぶりを発揮して、接客・対応を難なくこなしていいきます。
英子は以前、自殺しようとしたところを小林に救ってもらい、今があるという。やはり、英子の歌は素晴らしい、と再確認する孔明は宣言する。「私があなたの軍師となります」
この日より、孔明は英子のマネージャーとなり、彼女をスーパースターにするために尽力します。
■対戦イベント
孔明は、都内近郊で活動している歌手の情報を手に入れるため、渋谷のイベントに偵察に行きました。
「敵を知り、己を知れば、百戦殆からず」
看板歌手の〈ミア西表〉。客は満員、盛り上がりは最高潮。
イベント終了後、孔明は英子を連れてミアの楽屋へ挨拶に行きます。
孔明のコスプレをしてると勘違いされたおかげで会うことが許されましたが、この時、ミアが次に出るライブイベントに出してくれると約束してもらえました。
有頂天の英子。しかし、これには理由がありました。
このライブイベント、実は、どちらが多く集客できるかを競う対戦型のライブだったのです。しかも、英子の相手はミア。ミアは、無名の英子をあえて対戦相手に選び、自分の人気を誇示するのが目的だと、孔明はすでに見抜いていました。
イベント当日——
ミアのステージは超満員。英子のステージはガラガラ……。
しかし、なぜか英子のステージに少しずつ客が集まっていきます。オーナー小林は不思議に思います。
「成功のようですね」と、孔明は解説します。
・フロアに大量のスモーク
・客の動線で照明を明滅
・同じ服装の従業員を、入口・トイレ・従業員口横の3ヶ所を時間別で移動
・バーカウンターを通路に2ヶ所設置
・バーカウンターの映像を各所に投影
・クリスマスツリーを正三角形の等間隔で配置
「客は出口に辿り着けずにフロアを一周してトイレに行ってしまう」という計略だったのです。
この計略の名を”石兵八陣”……一度、足を踏み入れれば二度と元の場所に戻れない必殺の陣!
孔明はこう補足を付け加えます。
「確かに足止めをしたのは私です。しかし、彼らがここを去らない真の理由は……英子さんの歌の力ですよ」
■三国志ファンとして嬉しい
この後、孔明は次の戦略として”野外フェス”に挑戦します。今度は”兵法三十六計”を使って、ライブを成功に導きます。
三国志ファンの筆者としては、孔明が活き活きと計略を実行している姿を見ていると嬉しい気持ちになりました。
時折、孫子の兵法や兵法三十六計、太公望の話も出たりして、ちょっと説教くさく感じる部分もありますが、不遇の死を遂げた孔明だから素直にその言葉を聞くことができました。
夢に向かってキラキラしている英子を見ていると、とても前向きな気持ちになれました。
■ハイライト
・孔明の知略(孫子の兵法、三十六計)
・孔明が話す故事(あの時はこうだった……)
・孔明が語る、中国古典の一節
・音楽業界 ≒ 戦場
・月見英子は夢を叶えることができるのか
・紛うことなき諸葛亮孔明