まさに
煩悩の世
屋敷をクビになった下人の男はあてもなく、荒廃した羅生門にたどり着くのだが——。
僕は【まんがで読破】の大ファンで、全139冊読んでいます。
今回はその中から『羅生門』を簡単3分でご紹介します。
結論
この本が教えてくれるのは、人間の情念です。
感想
『羅生門』との出会い
読んだことがありました。
10代の頃でしょうか、いつ読んだのか忘れてしまいましたが、その時は心にズシっとのしかかってくるような衝撃がありました。
漫画で読んでみるのも、違った面白みがありそうだと思いました。
簡単あらすじ
舞台は平安京
京の正門・羅生門は平安京のシンボルでした。
不安定な造りだったため、816年、暴風によって倒壊。後に再建。
980年に2度目の倒壊。しかし、再建はされなかった。
そして月日は流れ——
ある屋敷に勤める青年〈多襄丸〉は、同じ奉公人たちから、近いうちにこの中の1人がクビになるらしいという話を聞いた。
なにやら、屋敷の旦那様と奥様が屋敷の財政が苦しくなってきていると話していたらしい。
「くそッ! 田舎には病気の母と弟や妹たちだっているというのに!」と、奉公人の1人が桶を塀に投げつける。
「まだ誰がクビになるなんてわからないじゃないか」と、多襄丸は彼を慰めようとするが、家族のいない多襄丸は逆に反感を買ってしまった。
——ある日。奉公人の1人が多襄丸に「これから旦那様の部屋を掃除するから手伝ってくれないか」と誘ってきた。
「いいよ」と多襄丸は快く承諾して蔵の掃除を始めた。
だが、多襄丸が高価な壺に触れた瞬間、後ろから押されて壺を落とし、ガシャアンと音がして割れてしまった。
奉公人たちは嬉々として旦那様を呼び、多襄丸が壺を割ったと報告した。蔵の中を見渡すと、誰かが暴れたかのようにグチャグチャになぎ倒されていた。
「全部こいつがやりました」
奉公人の1人はこう言いました。
「こいつが旦那様の宝を盗もうとしたので問い詰めたんです……すると突然暴れだして部屋はこの有り様!」
案の定、多襄丸はクビを告げられ、屋敷を追い出されてしまった。
途端にポツポツと雨が降り始めた。
やがてザアアアアと大きな雨となって平安京は暗雲に包まれた。
大雨の中、多襄丸は過去の出来事を回想しながら宛てもなく歩き続け、ついに羅生門の前に倒れ込んだ……。
羅生門の中
多襄丸は雨よけになると思い、羅生門の中に入った。
中は暗く、階段のきしむ音がよく聞こえるほど静かだった。
不意に階段の隅に太刀が捨てられているのが見えたので手に取った。
ガタン
階段の向こうから音がして明かりが見えた。
多襄丸は太刀を握りながら恐る恐る階段を駆け上がった——すると、そこには何十体もの死体が無下に横たわっていた。
そして、その中央で松明を片手に踊り狂う老女が1人いた。
老女はおもむろに女の死体に歩み寄ったかと思うと、なんと、その女の死体の髪の毛をブチッと引っこ抜くではないか。
その表情は歓喜にまみれ、何度も何度も女の髪を引き抜いては笑い声を上げた。
その一部始終を見ていた多襄丸にある感情が湧き起こった。——これは悪だ!
「貴様ーッ! 何をしているかーッ」その瞬間、体が前に動き、老女の体をつかんで床に押し付け、太刀を突き出して問うた。「なぜ死人の髪の毛を抜いている!?」
老女はこう答えた。「この髪を抜いてなァ、カツラにしようと思ったのじゃあ」さらに老女は言います。「死人の髪の毛を抜くなぞ悪いことかもしれぬ……じゃがな、ここにいる死人はみんな、それくらいのことをされてもいい人間ばかりだぞよ!」
この髪を抜かれた女は生前、蛇の干し物を干し魚と偽って売っていた。だが、それも生きるためにしたことだから仕方ないのだと言うのだ。
多襄丸は激怒した。「仕方がなければ何をやっても許されるのか?」
老女は弁ずる。「こうせねば餓死すると……あの女はそのことをよく知っている。きっとなァ、わしのやることも許してくれるであろうよ!」と。
「そうか」多襄丸は何かを吹っ切ったように口を開く。「それじゃあ、俺が追い剥ぎをしても、お前は俺を恨まないんだな……?」
男の行方は誰も知らない——……。
究極の選択
仕事を急にクビになって現実を突きつけられて、生きるか死ぬかの選択を強いられる。
悪として生きるか、善を言葉を並べて死ぬか。
それを読者に問うのが『羅生門』です。
その他にも、『偸盗』『藪の中』が収録されています。
偸盗とは窃盗犯・盗人のこと。つまり、盗賊の話です。
『藪の中』は、「真相は藪の中……」と言うように、意見が食い違って真相がわからないことを指す代名詞として有名ですね。
まさに、殺人事件の犯人が誰なのかわからない話です。
それ以前に、他殺なのか自殺なのかもわからない、何が何だかわからなくて頭がおかしくなりそうでした。
これら3つの作品に共通するのは、唐突に選択を迫られてまうことです。
読み方
人間の本性を垣間見てしまった気持ちになりました。
人は得体の知れない恐怖や不安に刺激されると、本当の自分の姿を発見できるのかもしれません。
これを読んだあなたは何も感じずにはいられない。目の前に置かれた選択を選ぶしか道はない。
善か悪か。
金か情か。
真か偽か。
最後に
まずは漫画で読むことをオススメしていますが、書籍で読むのもいいと思います。
書籍は、図書館や中古本など、たくさんあると思います。
ぜひ探してみてください。
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