まさに
銀行員の反撃
成績トップの〈香田〉は後輩〈矢内〉に出し抜かれ、出世を越されてしまう。愕然した香田だったが、偶然見つけた『六韜』に衝撃を受け、腐った強者に立ち向かう——!

【講談社まんが学術文庫】の中から『六韜』を5分でご紹介します。
■結論
この本が教えてくれるのは、出世戦術です。
■あらすじ
——おおなみ銀行 大河原支店
〈香田悠吾(40)〉は故郷に貢献したくて地銀(地方銀行)に就職した。
その思いやりと懸命な働きもあって、香田の成績はいつもトップだった。
ある日のこと——「お願いしますよォ、香田さぁん」
2年後輩の〈矢内智彦(38)〉が香田から成績を一部分けて欲しいと頼み込んできた。矢内が「このまま(低い成績)だと田舎の支店に飛ばされる」と言うので、香田は「しょうがないな」と分けてやることにした。
——数ヶ月後
辞令
矢内 智彦 殿
貴殿を〇〇年〇〇月付にて
課長に任命す
矢内の辞令が発表された。
「すみません。先に課長になっちゃって」と、矢内がうすら笑いを浮かべて言った。「今後は”矢内課長”と呼んでください。わかりました? 香田くん」
香田は納得がいかなかったが、今まで通り自分の仕事をやるだけだ、と思って仕事に励んだ……。しかし、自分が頑張れば頑張るほど、課長・矢内の評価が上がっていく。
矢内は「仕事ができるから昇進すると思ってます?」と香田を嘲笑い、「本部の仕分け室に異動になった〈井上課長〉のようにはなりたくないですから」と言った。
ある日、駅のホームで香田は井上課長と再会した。
居酒屋で近況について話していると、井上は突然「うっ……ううう……」と、歯を食いしばって泣き出した。
仕分け室という所では、各支店から集めれらた小銭を種類ごとに分けているらしい。しかも、手作業で。正しいことでも上に楯突けばこんな目に遭う。家族がいるので仕事を辞めることもできないと、井上は語った。
香田は自分も井上課長を同じような運命をたどるような不安を感じた。
■出世に必要なこと
——喫煙室
矢内は同僚の〈桧山〉にこう言った。「いいか桧山。出世に役立つのは能力じゃねぇ……。”平目力”なんだよ」
常に上を見て上司が何を欲しがっているかを探り、賄賂を贈ること——それが出世のコツだと言う。
その話を外で聞いていた香田は驚愕した。そんな仕組みで、そんな政治で人事が決まっているのか、と。
「オレはどう向き合えば?」
悩み続けているうちに季節が夏から冬に変わり——
香田は手土産を持って、支店長の〈鷹塔〉の家を訪問した。が、鷹塔は不在で、代わりに副支店長の〈長谷川〉が庭の水やりをしていた。
「まさか……支店長への点数稼ぎ!?」
ヤツらは自分の損得しか考えていない。そんなんじゃあ、きっと銀行は生き残れない。このままじゃダメだ。なんとかしなければ。でも、どうすれば……。
■国の安定は君主の手腕
休日、香田は小さい娘を連れて本屋に出かけた。
何かヒントになるような本はないかと探していると、古代中国の兵法書『六韜』を見つける。
”君主”が愚かであれば国は危機に瀕し民心は乱れます
”君主”が賢ければ国は安定し民心も穏やかになります
国家の安定は君主の賢愚によって決まります
天運などではありません
「君主……銀行、民……地元。見つけた。これだ!!」
■戦わずして勝つ
——正月 長谷川家
副支店長の〈長谷川〉は、家に届いた幾つかの荷物を開けていた。
「ふふふ……去年より2つ多いか……」
ひとつは、片島屋の商品券。ひとつは、伊懸丹の商品券。ひとつは、矢内が送った5万分の商品券。香田が送った荷物にはなんと……50万円分の商品券が入っていた。
『六韜』は中国の兵法書だ
文韜・武韜・竜韜・虎韜・豹韜・犬韜の全6巻、全60編にわたって、名軍師〈太公望 呂尚〉と文王・武王との問答によって多岐にわたる内容が記されているが、そのうち武韜に書かれた「第15文伐」には「武力を使わないで目的を達成する方法」が12も紹介されている
——数日後、長谷川の態度は明らかに違っていた。
いつも無愛想な副支店長が満面の笑みで香田に話しかけている。
「ここまで露骨に効果があるなんて……」香田は一瞬、開いた口が塞がらなかった。
「謀略」の第3
側近に「賄賂」を贈り その「情」を得ること
賄賂を使って「情」をこちらに向けさせれば その身は相手国の影響下にありながら心はこちらに傾いているので 相手国には害を生む
「謀略」の第1
相手を喜ばせるためにその望み通りに動くこと
そうすれば相手は驕り 必ず向こうにとって良くないことが起こる
■謀略の効果
香田はこの後、副支店長の長谷川を食事に誘い、「支店長の鷹塔が他店に異動させられるらしい」と噂話をします。
さらに「そうなれば、次の支店長は長谷川で決まり」とおだててその気にさせます。
やがて支店長と副支店長が仲違いを始めて力が2つに分断し、周囲の行員はどちらにつくかで派閥ができます。
支店長は次第に疑心暗鬼になり、内部の結束は崩れ、政治が衰えていきます。
■醜い出世欲
出世欲の強い人はどこにでもいます。
底無しの金欲と呆れるほどの保身。いつも誰かを利用することばかりを考え、裏では他人のことを馬鹿にして喜ぶ。なのに人付き合いがうまく、相手の立場によって態度を使い分けます。
そういう人はどうかと思いますが、それに気づかない会社もどうかしていると思います。そういう人が出世すれば、地域の発展は遅れ、会社の売り上げは低迷していくはずなのに、本当に悲しいことです。
ですが、泣き言ばかりを言っても仕方ありません。
『六韜』の戦術は「ズルい」と思う人もいるかもしれませんが、自分の身を守るのも勝利を掴むのも自分次第——それが現実です。
■ハイライト
・出世競争の実態
・リアルで実践的な戦略
・人間の心理
・勝利までの過程
・主人公が人間として成長していく様子
・出世、勝利とは何か