まさに
高校生の対立
とある高校の映像部で「そのセリフおかしくない?」と部員たちが揉めていると、ふわっと顧問の先生が現れて的確なアドバイスをしてくれる——。
今回はとても為になった書籍『ロンリのちから』を簡単5分でご紹介します。
もくじ
結論
この本が教えてくれるのは、論理力です。
感想・解説
『ロンリのちから』との出会い
会議や話し合いの後はいつも「ふぅー」っとため息をついていました。
「それは違う」とか「俺はそうは思はない」とか「私はこう思うからこうするけどいいよね?」とか言う人がいて、これって話し合いになってるの? と、いつもモヤモヤしていました。
そんな時に偶然、NHKの番組『ロンリのちから』に出会い、何度も繰り返し観るようになりました。
舞台設定
舞台はとある高校の映像部。
部員たちは感情を持たないアンドロイドを主人公とした自主映画作りに取り組んでいます。
主な登場人物は5人——
●杏奈……脚本・監督担当
・まじめな優等生タイプ
●マリー……アリス役(アンドロイド)
・天真爛漫な性格だが一応部長
●礼央……テレス役(アンドロイド)
・理屈っぽい
●溝口先生……映像部の顧問
・喜怒哀楽をあまり出さない
・問題を論理的に解決に導く
●新井波……ジガ(アンドロイド)
・謎の転校生
・頭脳明晰で自分の意見をはっきりと言う
01.三段論法
マリー「私はあなたが嫌い。私は女子。だから女子はあなたが嫌いなの」
礼央「僕は嫌われている。そして女子全員に……」
マリー「そうよ。私はあなたが嫌い。私は女子。だから女子はあなたが嫌いなの」
礼央「ちょっと待って、この台詞なんかおかしい……」
杏奈「カット!! 礼央、勝手に止めないで。監督は私よ」
溝口先生「どうしたの? 杏奈」
杏奈「溝口先生、礼央が私の書いた台詞をおかしいって言うの」
溝口先生「そう。おかしいのかどうか、検証してみましょう」
溝口先生は、今の台詞は”三段論法”という、2つの前提から結論を導く推論方法だと言います。
例えば——
【例1】
『鳥は卵を産む。ペンギンは鳥。だからペンギンは卵を産む。』
このように、1段目で全体のことを言っておいてから2段目で一部のことを言い、3段目で結論を述べます。
1段目……全体『鳥は卵を産む』
2段目……一部『ペンギンは鳥』
3段目……結論『だからペンギンは卵を産む』
この文章では、1段目で鳥全体のことを言ってから、2段目でペンギンが鳥の一部であることを言い、3段目で全体に当てはまることは一部にも当てはまることを示しています。
溝口先生はこんな例えも提示します——
【例2】
『ペンギンは空を飛べない。ペンギンは鳥。だから鳥は空を飛べない。』
これには礼央も杏奈も「あれ?」「なにか変ね!?」と違和感を感じます。
溝口先生は「どこがどう変なのか、見ていきましょう」と解説していきます。
○ ペンギンは空を飛ばない
○ ペンギンは鳥
× だからペンギンは空を飛べない
1段目で一部から始めて、2段目で全体のことを言ってしまったから、結論を間違えてしまった。
溝口先生は生徒たちに、最初の問題に戻ってあの台詞を考えてみるように言います。
【例2】
『私はあなたが嫌い。私は女子。だから女子はあなたが嫌いなの』
杏奈は「女子全体ではなく、私という一部から話が始まっている」ことに気づきます。
私という一部から全体を結論づけようとして意見が飛躍していたのです。
つまり、女子全員が男子を嫌いとは限らない。好きな人もいるかもしれない。
杏奈は「シナリオを書くのに使えそう。でも、これって何?」と溝口先生に聞きます。
前提から正しい結論に導くこと、そして間違った結論を見抜くのも「そう、これがロンリのちから」
不思議の国ロンリ劇場
アリスとウサギとチェシャ猫が会話しています。
アリス「ねぇねぇ、『不思議の国のアリス』を書いたイス・キャロルって人は論理学者でもあったって知ってた?」
ウサギ「そうか、だからわざと非論理的にしたりして、論議で遊びまくっているわけだ!」
チェシャ猫「ところで三段論法って他にも種類があるって知ってるかい? 例えばこんなの『三段論法の消去法』」
アリス「昨日の夜、帽子屋かウサギに遭ったわ。でも暗くてよくわからなかったの」
チェシャ猫「紅茶の臭いはしたかい?」
アリス「いいえ、しなかったわ」
チェシャ猫「それは帽子屋ではないね。彼はいつも紅茶を飲んでいるから」
アリス「ということは、私が会ったのはウサギね!」
全員「昨日の夜会ったのは、帽子屋かウサギだ。帽子屋ではない。だとするとそれはウサギだ〜!」
監修者 解説
”2つの前提から結論を導く——三段論法は論理の基本”
三段論法にはさまざまなタイプの推論があります。
例文であったような、1段目で全体・2段目で一部、3段目で結論するタイプもありますし、不思議の国ロンリ劇場のような、1段目で「AかBだ」と言い、2段目で「Aではない」と言ってから「だからBだ」と結論するタイプの推論もあります。他にも、「夕焼けの翌日は晴れる。今日は夕焼けがきれいだ・だから明日は晴れる」といったタイプの三段論法もあります。
なので、まずは2つの前提が示されたときに、そこから的確に結論を導くということを意識するようにしてください。
この三段論法を「なんとなく」で済ませていては、論理力はけっして身につきません。
CONTENTS 目次
10個の”ロンリのちから”を学ぶことができます。
01.三段論法
「鳥は卵を産む。ペンギンは鳥。だからペンギンは卵を産む」
02.誤った前提・危険な飛躍
「ウサギは亀だ。亀は卵を産めない。だからウサギは卵を産めない」
03.逆さまのロンリ
「図書館には本がある。逆に言うと、本がたくさんあるのが図書館だ」
04.接読表現・ことばをつなぐ
「このレストランは美味しい。しかし高い」
「このレストランは美味しい。ただし高い」
05.水掛け論・理由を言う
「感情は必要だ」「感情は必要ない」「必要だ」「必要ない」……
06.暗黙のロンリ
「彼は愛想が悪い。だから、営業に向かない」
07.仮説形成
「犯人は映像部以外の生徒だ」
08.否定のロンリ
「私はあなたのことが好きだ」の否定は「私はあなたのことが嫌いだ」?
09.類比論法
「友だちのうちは、夏休みに海外旅行に行く。だから、うちも海外旅行へ行きましょう」
10.合意形成
「意見の対立を人と人との対立にしないこと」
イラストと対話、スッキリとまとめられた図解で、とても分かりやすく楽しんで理解を深めることができました。
読み方
NHKの番組『ロンリのちから』を文章化して解説する内容となっています。
「だったらNHKの方を観ればいいんじゃない?」と思う人もいると思います。もちろん、そうです。筆者もNHKの方のファンになってから「もっときちんと知りたい」と思ったので本書を買いました。なので、まずはNHKの『ロンリのちから』を観ることをオススメします。
こういう時、NHKは再放送してくれているのが有り難かったりします。
ちなみに、杏奈役の女優さんは〈山崎紘菜〉さんです。『舞いあがれ!』や『汝の名』『春は短し恋せよ男子。』などのテレビドラマに出演されています。
そして溝口先生役は〈緒川たまき〉さん。表情をほとんど変えずに生徒たちを論理に導く様子はまるで知恵の女神のような印象を受けました。
最後に
まずはNHKの『ロンリのちから』をご覧になってください。
「もっと深く知りたい」「論理力を身につけたい」と思うようになったら書籍の方もご覧になっていただけたらと思います。
Amazonでは新品も中古本もありますので、ぜひ探してみてください。
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