まさに
出向社長の大改革
大手電機メーカーで多大なる業績をあげてきた〈八田〉は突然、崩壊寸前のレコード会社への出向を命じられる。失意の八田に、同期の〈島原〉は『三略』を贈る——!

今回は【講談社まんが学術文庫】の中から『三略』を簡単7分でご紹介します。
結論
この本が教えてくれるのは、リーダーの心得です。
感想
『三略』との出会い
『六韜(りくとう)』を読んで仕事が楽しくなってきました。
仕事は実に孤独な戦いです。そんな時にまるで戦友を得たような気がしました。
『六韜』が社員視点なら、『三略』は社長視点の指南書です。
簡単あらすじ
丸の内 大手メーカー「首都電機」本社
首都電機・第一開発部部長〈八田秀明(52)〉はこの度、新型のメモリーチップとなる”三次元メモリー”を開発し、集積回路世界トップの企業・インテリとの巨額取引を成立させた。
これで三次元メモリーは世界中で売れることになる。開発部の社員たちは胸を張って喜んだ。
「……っと、そうだ。約束があった」八田は〈高橋常務〉に常務室に来るよう呼ばれていたが足取りが重かった。
高橋常務は以前から三次元メモリーの開発に反対していたし、八田を邪魔者扱いしていた。八田に懇意にしてくれたのは〈鈴木専務〉だった。
「八田です!」
常務室に入ると、高橋常務は1枚の紙を見せてきた。
財務諸表
株式会社 ホープレコード
首都電機の系列会社の財務諸表らしいが、2年連続赤字で良いとは言えない。
「八田君……君の力で立て直してみないか?」高橋常務は言った。「君には来期からホープレコードの社長に就任してもらう。とりあえず、2年をメドに存続させるかどうか考えたい。まっ、長い間ご苦労だったね!」
ちょっ……ちょっと待て……今……なんて……なんて言った……!?
八田は青ざめた。これまでの仕事への熱意と業績を振り返らずにはいられなかった。
高橋常務はそこに追い討ちにかけるように言った。「そうそう、鈴木専務がね、健康上の理由で退職することになってね。もちろん、辞令を拒否して退職するのも自由だよ」
そうか……だからか……ずっとおれを買ってくれていた鈴木専務が……。
「……考えさせてください……」
ドォン!
八田はトイレの壁に拳を叩き込んだ。
「ちくしょう!! ふざけるなっ!!」
——会社 屋上
八田はタバコを吹かしながら、今日の出来事を整理してみた。
・三次元メモリーは必ず売れる
・高橋常務はおれの発言力が大きくなる前に辞めさせたい
・傾いた子会社
・畑違いのレコード会社
「会社員か……」
——数日後
居酒屋で八田の送別会が催された。
社員たちは八田の不遇に同情してくれていた。
そこに八田の同期である〈島原〉がやって来た。彼は第一営業部の部長で、来期の役員昇格が決まっていた。2人の実績は変わらなくても待遇は雲泥の差だった。
「ホープレコードの件、受けるんだって?」島原は八田に言った。
「ああ……」八田はあっさりとした答えた。「出世のために仕事をしてきたつもりはなかったが……最後までやつらに逆らおう! 辞めたら負けだ——と思ったんだ」
島原はその言葉を聞いて少し安心したようだ。「何か、力になれる事があったらいつでも言ってくれ。これは餞別だ」そう言って八田に封筒を手渡すと、島原は帰って行った。
八田宅
八田が封筒を開けると、手紙と1冊の本が入っていた。
手紙には八田への感謝と精勤を勧奨する言葉が綴られ、本は『三略』……そこにメモがあり、”一国の王を夢見た若き日の愛読書です”と書かれていた。
「一国の王……?」八田はパラパラと本をめくってみた。
夫れ主将の法は 務めて英雄の心を攪り 有功を賞禄し 志を衆に通ず——
「主君たる者は 将兵の心を得るように務め 功績をきちんと顕彰し 自らの意思を民衆に周知しなければならない」
(『上略』第1節)
「なるほど……」
社長とはたしかに”一国の王”みたいなものかもしれないな——…………
崩壊寸前の子会社
ホープレコードは小さなビルの中にあった。
「あっ、八田社長! すみません〜。ご連絡いただければ駅まで迎えに参りましたのに〜」と言い寄って来たのは、ホープレコード取締役〈江藤耕助(60)〉だった。小柄で低姿勢な態度の男だ。
会社の中は散らかっていて、何か澱んでいるような印象を受けた。
「そうだ……レコーディングスタジオを見てみたいんだが……」
ちょうど今、歌入れをしているというので、八田は録音室を見学しに行った。
すると、若い女性歌手が途中で飛び出てくるのが見えた。文句ばかりを言って怒っている。どうやら、この〈キャンディー〉という女性歌手のわがままが原因のようだ。キャンディーはそのまま帰ってしまった。
江藤が言うには、キャンディーはこの前のシングルはオリコンチャート60位くらいで、ウチでは売れてる方なのだと言うから、八田は唖然とした。
社内ホールにて、八田は社員たちに挨拶をした。
まずは自己紹介をして、音楽の知識は全くないが良い商品を作りたくさん売ろう、そして——「ヒットチャート1位を出しましょう!!」と檄を飛ばした。
しかし、社員の反応は乏しく、中にはうっすら笑みを浮かべる者さえいた……。
良い王
国を治め 家を安んずるは 人を得ればなり
国を亡ぼし 家を破るは 人を失えばなり
「国を治めるにも家を安定させるにも人の心を得ることだ 国や家が滅ぶのは人心を失ったがゆえである」
(『上略』第1節)
香田はひとり考え込んでいた。「社員たちの望みはなんだ? 何が喜びなんだ?」
将たる者 能く士を思うこと 渇するが如くなれば 則ち策は従う
「渇きで水を求めるように 将が兵のことを懸命に考えれば 策はうまくいく」
(『上略』第16節)
香田は現場の声を聞くため、一人の社員をBARに誘った。
それによると、音楽事業部の仕事は7割がた、シュール・プロモーション所属のアーティストで回っていて、それは〈甲坂専務〉による太いパイプによるものらしいのだが、何かとワケありのアーティストをばかりを押し付けているのが現状らしい。
本当は、いい作品、売れるものを作りたい気持ちはあるけど、上には逆らえない。ここだけの話、甲坂専務のせいで、仕事ができる人材が何人も辞めていったと言う。
佞臣 上に在れば 一軍は皆 訟う
「口先ばかりで無能な役職者が上にいると 兵士たちは皆 不満を訴える
(『上略』第21節)
香田は彼ら(社員)がやる気がないのではなく、彼ら(社員)からやる気を奪っている奴がいることを知る。
社内大改革
香田は”社長直轄事業”を新設します。
自分がやりたいと思う企画を社長にメールし、社長の承認がおりれば事業部を通さずに予算を付与するというもの。良い作品を作りたいと思う気持ちが売れるもの作りになり、崩壊しかけた会社の起死回生にも繋がる。何より、社員たちにやりたいと思う仕事をさせてやりたいと思いからでした。
当然のように、取締役〈江藤〉や専務の〈甲坂〉はこれみよがし嫌がらせをして来ますが、香田は毅然とした態度で動じません。それどころか、気持ちの良いくらいの一喝で追い払ってしまいます。
香田はこの後も『三略』の言葉を信じてそれを実践することで、社員たちは生き生きと仕事をするようになっていきます。
会社員って何だ?
会社のために身を粉にして働き、傷つき苦しむ——それが会社員。
どんなに理不尽であろうと、会社という組織に逆らえない。従うしか道はない。
「なんのために働いているのだろう?」今こそ働き方を見直すべきです。
役職者が肩で風を切って歩いているような会社でどう働いていくのかを考えるのは今です。
あなたが社長でなくてもやりたい仕事を実現する手段はいくつもあります。あなた独自の企画を提案したり、新しい事業を立ち上げたり、上司に進言することもできるでしょう。
会社員は会社に雇用された弱い存在ですが、会社の認可さえおりれば、会社の予算(お金)を使えるという強みもあります。つまり、売上さえ見込めれば、やりたい仕事をさせてくれるのが会社であり、会社員の良さなのです。
読み方
畑違いの子会社に出向された壮年の渋い男のストーリーです。
自分の立場が不利だというのに力強く諦めない姿勢には感服するものがあり、とても勇気づけられました。
筆者も香田のように熱意を持った人間に少しでも近づけるように見習いたいと思います。
三略は、「上略」「中略」「下略」の3部から成る、古代中国の兵法書との説明がありますが、本書では「上略」の一部をストーリーに絡めたといった内容です。
これを読んで会社員としての誇りを取り戻すことができました。
最後に
まずは漫画で読むことをオススメしていますが、書籍で読むのもいいと思います。
書籍は、図書館や中古本など、たくさんあると思います。
ぜひ探してみてください。

