まさに
人工知能〈SORAI〉の政令
——2055年 人口減少に財政難。未曾有の危機に、政府は人工知能〈SORAI〉に政策を委ねた。 ミュージシャンを目指す〈マコト〉は果たして夢を叶えることができるのか——?

今回は【講談社まんが学術文庫】の中から『政談』を簡単7分でご紹介します。
結論
この本が教えてくれるのは、規制とは何かです。
感想
『政談』との出会い
「政談?」「荻生徂徠?」どちらも知りません。
難しそう……でも【講談社まんが学術文庫】が好きなので読みます。
簡単あらすじ
—2055年 東京
駆け出しのロックバンド・ボルドは、ヴォーカルの〈マコト〉・ギターの〈リュウイチ〉・ベースの〈タクヤ〉・ドラムの〈シロウ〉の4人メンバー。
本日、ライブを開催したが、今夜も客の入りはいまいちで終了。今や日本は不景気。経済は停滞し、治安も悪かった。
〈マコト〉がアパートに帰宅すると彼女の〈マリ〉が来ていた。
マリが勤める会社の上司が中国人で、日本人を侮辱してくるらしい。
「昔は日本も豊かだったんでしょ?」と、〈マコト〉の彼女〈マリ〉が言う。マリが勤める中国企業は日本企業の2倍の給料だった。最近はそうやって外国の企業に勤める日本人が増えていた。外からパトカーのサイレンが鳴り響いていた。
——と、急にテレビがつき、政治家らしき人物が「これからお知らせすることは国民の皆様に大変驚きを与えることと思いますがどうか冷静に聞いてください」と話し始める。人口減少、経済停滞、財政難は、全て政治家のせいであり、これ以上どうすることもできないと判断したため、政府は人工知能による統治をすると宣言したのである。
〈マコト〉がコンビニのアルバイトから帰宅すると、ちょうどSORAIが政策発表をするところだった。
国民の住居は 会社 業績ごとにまとめ 国が定める
つまり、職業によって住む場所を決められてしまうのだ。
SORAIは、この政令によって治安の向上と自治の活性化が実現すると言う。
かつて江戸では、武士は役職ごとにまとまって町を作っていた。同じ役職の隣人が公私ともに深く関わり合うことによって近所のコミュニティが増え、助け合いの精神が向上すると言うのだ。
さっそく地区割りが発表された。
〈マリ〉はIT会社勤務なので、都会の恵比谷地区。フリーターの〈マコト〉は練鹿地区の西。よく見ると、中心地には官僚や金融、医療などのエリートが集中していた。
——1ヶ月後 国内はもはや民族大移動。
意外にも国民は混乱せずSORAIの政策を受け入れているようだった。
金融関係地区に住む、大手証券会社勤務の男性は賛成のようだ。以前は隣人がどんな人か分からず不安だったが今は安心して生活できていると言う。
しかし、フリーター地区の低所得者は「これは差別だ!」と反発する人が多いようだ……。
度重なる規制
SORAIの第二の政令が発表された。
原則 他県に引っ越してはいけない
江戸時代、奉公人が物を盗んで逐電(=逃亡)する者が多かった。その者たちは犯罪予備軍となって江戸に住みつき、地方では人手不足となった。
SORAIは、進学や就職が決まっている者以外の他県への移住を禁じ、卒業・離職した者は出生県への出戻りを義務とした。
「まるで中国だな」バンドメンバー〈シロウ〉が言った。中国には、都市戸籍と農村戸籍があって、都市に出ることが制限されている所があるそうだ。
続けて、第三の政令が発表された。
無職を禁ずる
無職の者には国家が仕事を与え、学生や配偶者が職に就いている者以外は無職を禁止すると言う。働けない事情のある者は程度に合わせた労働を、高齢者にも何らかの仕事に従事させることを義務とした。
——またひと月経ち、これも意外に国民に受け入れられたようだった。
脱退
マコトとマリはIT地区のオープンカフェでお茶していた。
マコトは「IT地区はおしゃれだなー」と言うと、マリは「そりゃ中心産業だもん」と答えた。最近、マリはマコトの家に来なくなっていた。
「やあ、真理さん」と声をかけてきたのはマリの上司〈シュウ課長〉だった。
シュウは嫌味たらしく「どこに住んでるの」と、マコトに住んでいる地区を詰問してきた。マコトは答えることが恥ずかしく「俺、帰るわ」と言ってその場から逃げた。
そんな折、SORAIの次の政令が発表された。
契約社員 フリーター等を禁ずる
江戸時代、武家には譜代者という世襲制による奉公人がいた。しかし、譜代者を養うのには手間も金もかかったので、一年契約の奉公人(=出替り奉公人)が増えた。すると、奉公人の質はおち、忠誠心も薄く良い働きは望めなくなってしまった。
現代の会社も同じである。契約社員やアルバイトを大量に雇っているが、これでは人は育たないし、会社内の分裂を生む。
「クビ。正社員はこの2人に決まったから」
そんな理由でマコトはコンビニを辞めさせられ、SORAIによって国に従事する仕事が与えられた。
「バイトが変わったようなものだ」とマコトは前向きに考えることにした。それにミュージシャンを目指すのに今の仕事が何だっていいと思った……が、「ごめん。俺、長崎に帰るわ」と、タクヤが言った。タクヤは、「国のために地元で人の役に立つ仕事をしたい」と言って去っていった。
AIに抗議
「全部あいつのせいだ!」「あいつが俺たちの夢を奪ってんだ!」マコトとリュウイチは苛立っていた。
タクヤがバンドを抜けてしまったのも、住居や仕事まで奪ったSORAIのせいだと文句を言った。
またしても突然テレビがつき、アナウンサーがこう言った。
「この度、SORAIが国民との直接対話の機会を設けると発表しました」
マコトたちは「これだ!」——ということでテレビに出ることになり抗議した。
人間は一人一人が違う。フリーターの中にもダラダラ生きている奴もいれば頑張っている奴もいる。それをひとくくりにしないでほしい。「俺たちから夢を取り上げないでくれ!」と。
それに対してSORAIは、私は国民としての義務を課しているのであって夢を奪ってはいない、と答えた。
「本当にやりたいなら、どんな障害があってもやればいいんじゃない」
お小遣いの安定と不満
SORAIがやっていることは国という全体の安定です。
しかし、全体の安定は一部の個人から反感を生みます。
例えば、親に「今日から1ヶ月のお小遣いは1000円だ」と決められる。
毎月安定したお小遣いがもらえるのは嬉しいが、一方的な取り決めに少々不満が残る。
最初は我慢していたが、やがて「お小遣いを上げろ」と訴えるようになり、交渉の末、〇〇%の上乗せで合意させられる……。
親は家計(全体)のことを考え、子は自分のことしか考えていない。
そして、親は子の思いを知ろうとせず、子は親の思いが見えていない。だから反発が起きてしまうのでしょうね。
読み方
AI〈SORAI〉に翻弄される、未来の日本のストーリーです。
規制がゆるいと、誰かが犯罪を犯しても取り締まれない”無法地帯”になってしまう。かと言って厳しすぎると、窮屈で生きた心地がしない”暗黒世界”になってしまう。
全体と個人のバランスが大事だと言えますが、どちらの意見も取り入れることなど出来るのでしょうか?
あなたが家庭、学校、会社で新たな取り決めやルールを決める立場になった時、どうすればうまくいくのか——つまりはそういう本なのです。
最後に
まずは漫画で読むことをオススメしていますが、書籍で読むのもいいと思います。
書籍は、図書館や中古本など、たくさんあると思います。
ぜひ探してみてください。


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