まさに
人生の清算
あの世の入り口に存在する『死役所』。自分と向き合い、これまでの人生に結末をつける不思議な場所。
「死んだらどうなるんだろう?」が漫画に。しっとりと、ほっこりと、ひっそりと。
結論
この本が教えてくれるのは、自己覚知です。
感想
『死役所』との出会い
30代後半、僕は鬱になり、毎日死ぬことばかり考えていました。
そんな時、本屋で一際目立つ、真っ黒い本に目が止まりました。
タイトルは市役所ならぬ『死役所』
冗談にも受け取れるそのネーミングは、真剣なのかブラックなジョークなのか、表紙を見ても判断できません。
なので、その場でスマホで調べてみました。
すると、死んだ人の魂が成仏して次のステップ(転生)に行く前に手続きをする場所。それが死役所だということが分かりました。
『死役所』で何をするのか?
死者には生前の記憶があり、〈氏名〉〈年齢〉〈死んだ日時〉〈死んだ場所〉〈死んだ方法〉〈死んだ理由〉などを克明に記入用紙に書かなければなりません。
なぜなら、期限日までに書かないと成仏できず、冥土の道を彷徨うことになるからです。
物語の構成は短編です。1冊に3〜4人の死者のエピソードが収録されています。
今、死んだばかりの老若男女が『死役所』にやって来て、過去を振り返り、手続きを行うパターンのようです。
その姿は死んだままの姿です。
例えば事故死なら体は欠損したまま。出血は止まらず血はダラダラと出続けています。
『市役所』の中はなんとも不気味な空間です。
僕は『死役所』を読んでみることにしました。
主役兼ナビゲーター:シ村さん
『死役所』に行くと、最初に出迎えてくれる総合案内係がいます。
それが〈シ村さん〉です。
30代半ばくらいの男性です。見た目は、黒縁メガネに七三分けで黒いスーツ。ニコニコしながら「お客様は仏様です」と言って、死者に手続きをするように導きます。
〈シ村さん〉は普段、紳士のような振る舞いをしていますが、たまに〈芯をついた毒〉を吐く時があります。それも皮肉を込めて。
良い人なのか悪い人なのか分からない謎のキャラクターです。
『死役所』の役員にはある共通点があります。
皆、名前に〈し〉の文字があり、その文字はなぜか全てカタカナなのです。
例えば〈ニシ川〉〈イシ間〉〈ハヤシ〉〈ハシ本〉など。
何か意味がありそうです。
壮絶な人生
死者たちは人生を清算するために、これまでの出来事を回想し、気持ちを整理していきます。
どれも言葉にならないほどの壮絶な人生です。
〈自殺〉〈他殺〉〈病死〉〈事故死〉〈寿命〉など、ひとり一人に事情があり、さまざまな問題を抱えていたことが分かります。
しかも、死んだからといって問題が解決しないケースもあります。死者は死んだ後も悩み続けています。
過去を振り返ったからといって、何がどうなることはありません。
しかし、自分自身を見直し、自分がどういう性格で、何を思って何をしたのか、総じて〈自分とは何だったのか〉を知る良いきっかけになっているのだと思いました。
幾つもの死者たちを見て、胸が苦しいほど熱くなりました。
読み方
僕は毎回、言葉が詰まるページがあります。
それはエピソードの最後の1ページです。
その1ページの中には、死者の生前の写真が散りばめられています。幼い頃から死ぬまでの写真が何枚も何枚も。
……涙なしでは読めません。
僕にとって、自分を見つめ直す良いきっかけになりました。
それに、ひとり一人にスポットを当ててくれているのが嬉しく、とても励みになりました。
最後に
原作コミックの他、実写ドラマ化(松岡昌宏さん主演)、アニメ化されています。
ぜひ探してみてください。
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