【対話形式】【8】〈アイデア〉は共同作業の賜物だった

 

——これは、僕と同僚Aさんとのたわいもない会話です。

 

Aさんは企画が苦手

同僚A「よーいちさん、よーいちさん」

僕「Aさん、お疲れ様でーす」

同僚A「あの、よーいちさんは今回の企画コンテストの応募には出されました?」

僕「ああ、出しましたよ、3日前に」

同僚A「はぁ〜、やっぱりもう出したんですね……」

僕「Aさんはこれからですか?」

同僚A「……はい。実はまだ何も思い付いてないんです」

僕「えっ! 締め切りまであと1週間しかないですよ」

同僚A「そうなんです。だから、よーいちさんに聞こうと昨日から思ってて……」

僕「分かりました。急いで企画書を作りましょう」

同僚A「あ、ありがとうございます! もうこれで企画は出来たも同然です」w

僕「いえいえ、まだ何も始まってませんよ」w

同僚A「だって、よーいちさんって企画とかスゴく上手いじゃないですか」

僕「そうですか? 周りからはそう見えるのかもしれませんが、僕自身は得意だとは思ってはいないんですよ」

同僚A「またまた〜。そんなこと言って、ホイホイって簡単に企画作っちゃうんでしょ?」w

僕「本当に違いますって。他の人のやり方は知りませんが、捉え方が違うような気はしています」w

同僚A「捉え方ですか?」

僕「はい。Aさんは企画を考える時、まず最初にどうしますか?」

みんなの企画の立て方

同僚A「そうですね……。アンケートを取ります。ニーズが何なのかを調査して、需要がありそうかなさそうかで企画を考えます」

僕「いい方法ですね」

同僚A「そうですか? 普通というか、基礎っぽいやり方です」

僕「いえいえ、基礎は大事ですよ。それで、今回は、アンケートは取ったんですか?」

同僚A「……それが……ダメなんです。コロナのせいで十分に集まらなかったんです」

僕「あ、そうかぁ」

同僚A「紙を使ったアンケートは実施できなくて……インターネットでしかアンケートが取れなかったんです」

僕「インターネットが苦手な人、特に高齢の方のアンケートはほとんど集められなかったんですね」

同僚A「そうなんです。……若い人の意見がほとんどなので、偏った企画になってしまわないかと不安なんです」

僕「なるほど……。でも、みんな同じ条件ですよね。他の人はどうしてるのか知ってますか?」

同僚A「えーっと、(Aさんと仲の良い同僚の)Uちゃんは”情報が集まらないから思いついたことを企画にした”と言ってました」

僕「うんうん。他には?」

同僚A「(上司の)Zさんは”アタシは自分の趣味・特技を活かした企画にした”と言ってました」

僕「ほうほう。他には?」

同僚A「んー、他には……(しっかり者の)Fさんは”以前に企画した内容をちょっと変えて新しい企画にした”と言ってました」

僕「……そうですか。あまり参考になるやり方はなさそうですね」

同僚A「よーいちさんはどんな企画にしたんですか?」

僕「それは……言えませんが、企画の立て方なら説明できますよ」w

同僚A「ええ〜、そんなこと言わないで教えてくださいよ〜。意地悪しないでくださいよ〜」

僕「そうじゃなくてね、教えてしまうとAさんのためにならないんですよ」

同僚A「教えてくれたらすぐに分かるのに、なんで聞いたらダメなんですか?」

【クイズ】空腹の子供

僕「例えば、ここにお腹をすかして泣いている子供がいたら、Aさんはどうしてあげますか?」

同僚A「……それは……食べ物をあげますよ」

僕「そうですね。食べ物をあげればその子の空腹感は満たされますね」

同僚A「それで解決じゃないですか。違います?」

僕「違います。それは解決とは言いません」

同僚A「なんで?」

僕「では、もう一度聞きます。明日になって、またその子供がお腹をすかして泣いていたらどうしますか? また食べ物をあげるんですか?」

同僚A「はい、あげます」

僕「その次の日も、その次の日も、ずーっとあげ続けることになると思いませんか?」

同僚A「う……まあ、そうなりますね……」

僕「飢えている子供に物をあげるのは慈悲深く素晴らしい行為だと思います。でも、これでは根本的な解決にはなっていないんですね」

同僚A「だったら、どうしたら良かったんですか?」

僕「それを考えてほしいんです」

同僚A「え? また教えてくれないんですか? ケチだなぁ。Sさんはすぐに教えてくれますよ」

僕「Aさんは今まで自分で考えていろんなことを決めてきたんじゃないんですか?」

同僚A「……まあ、はい……」

僕「そうですよね。もう少し1人で考えてみましょう」

同僚A「……わかりました。考えてみます」

解決手段を人に聞いてはならない

僕「……ちなみに、Sさんに相談した人は問題が解決していますか?」

同僚A「はい、解決してると思います。でも、ことあるごとに相談しに行く人をよく見ます。ん?……ってことは解決になってないってこと?」

僕「表面的には解決してるのかもしれませんが、根本的な解決には至っていないのでしょうね」

同僚A「どういうことですか?」

僕「例えば、仕事に行き詰まってSさんに相談に行き、Sさんは自分の経験から良い解決案を出してくれる。一見、解決しているように見えますが、なぜ相談者が仕事に行き詰まってしまったのか、その原因が解決されていないので、後で何度でも同じような問題に苦しむことになるのです」

同僚A「なるほど。一時的な満足感を得ているだけなんですね」

僕「そうですね。それって”空腹の子供”と似ていると思いませんか?」

同僚A「あ! 本当ですね。私、今、よーいちさんに解決案を聞いてしまったら、また企画に悩むたびに何度でも聞きに行くことになりますよね。今、言ってる意味がスゴく分かりました。」

僕「……では、改めてきますが、Aさんなら、空腹の子供をどうやって救いますか?」

同僚A「そうですね……私なら……そうですね……あ、料理! 料理の作り方を教えます」

僕「ほう……」

同僚A「最初の材料は私が買います。でも、これから料理を自分で作れるようになれば、いずれ外でも働いてお金を稼げるようになると思うんです」

僕「うんうん。とってもいい答えですね」w

同僚A「よーいちさんならどう解決しますか?」

僕「いろんな方法があると思います。野菜や果物の種をあげるのも1つの方法だと思うし、自分の仕事を手伝わせて対価(お金)を支払うのも1つの方法だと思います」

同僚A「なるほど〜。勉強になる〜。方法は1つじゃないんですね」w

僕「本質を捉えて想像することが大事なんですね」

同僚A「本質を想像ですか?」

僕「はい。さっきAさんは空腹の子供がどうすれば解決できるか、頭で想像したでしょう?」

同僚A「ああ、しました、しました。こうなれば解決するんだろうなって」

僕「こうやって想像力を鍛えていけば、アイデアが浮かんできそうな気はしませんか?」

同僚A「……うーん。まだできそうな気はしませんね……」

僕「まだ、実感が湧かないようなので、アイデアを出すコツをもうちょっと説明しますね」

同僚A「それ、待ってました! 是非、お願いします」w

アイデア発想法

僕「まず、成功する企画と失敗する企画の違いは何だと思いますか?」

同僚A「……斬新な発想、あ、奇抜な発想ですか?」

僕「僕の考えるアイデアの発想法には優劣がないんです。なので、いい企画も悪い企画もありません」

同僚A「でも、よーいちさんの企画は評判良いですよ」

僕「ありがとうございます。でも、僕の発想は意外でも突拍子がないものでもなくて、実は、昔からある堅実な方法なんです」

同僚A「そうなんですね。それが意外です。よーいちさんの企画はいつも誰も思いつかないものばかりで……」

僕「ありがとうございます。褒めるのはその辺で」w

同僚A「いやいや、本当ですよ」

僕「話を戻しますが、僕のアイデア発想法は共同作業で作り上げる方法です」

同僚A「誰と誰が共同作業するんですか?」

僕「自分とお客さまです」

同僚A「え? どうやって?」

僕「自分の知識とお客さまのニーズの理由を合わせて、まるで共同作業のようにアイデアを作り上げていくのです」

同僚A「ちょ、ちょっと待ってください。急に難しくなりましたよ」

僕「わかりやすく説明しますね。まず企画を考えた時、自分の頭の中には仮のアイデアがあると思います」

同僚A「まあ、なくはないですよ。でも、そのアイデアは自信ないですよ」

僕「それでいいんです。とにかく、良くも悪くも思いつきのようなアイデアが頭に浮かびます。それだけで企画を推し進めては自分勝手な自分よがりな企画になり、周りに同意されないことが増えます」

同僚A「あります、あります。私もよくそれで空回りするんです」w

僕「そうならないために、ニーズを調査するのですが、ニーズをそのまま使うのではなくて、そのニーズの理由(=本質)を捉えようとします」

同僚A「ニーズの理由ですか?」

僕「そうです。何かしら理由があって発言しているはずです。だから、なぜそれがしたいのか、なぜそれがいいと思ったのかを深く探るのです」

同僚A「それってお客さまに聞いてもいいですか?」

僕「もちろんです。聞いてください」

同僚A「だったら簡単ですね!」w

僕「ええ。でも、今回の場合のようにアンケートで回答が得られなかったり、回答者も自分自身でニーズの理由が分かっていない場合があります」

同僚A「確かに、アンケートは表面的な言葉で中身が分からないことがよくあります……」

僕「だから、自分でニーズの理由(=本質)を探り、捉えるんです」

ニーズの理由の捉え方

同僚A「ん? でもそれって、アンケートを取って企画を立てるのとどう違うんですか?」

僕「Aさんは需要がありそうかどうかで企画を立てると言ってましたね?」

同僚A「はい。だって、誰も注目してくれないのは嫌ですから」

僕「需要は過去の情報ですよね。必要とされている需要に対して供給する物と数量を決める。要するに、収益を導き出す判断材料です」

同僚A「それは……ダメなことですか?」

僕「いいえ、それも方法の1つだと思います。データ戦略は大事なことです。でも、今回は企画を募集しているのですから、セオリーから少しくらい外れてもいいのでは?と思うのです」

同僚A「なるほど。せっかくだから、ありきたりな無難な企画よりオリジナリティーな企画にしたいですね」

僕「ここからが本題です。ニーズの理由に対して、なぜそう思ったのかをアンケートや、お客さまとの会話や表情の中から本当の理由を見つけ出すのです」

同僚A「あの……どういうことですか?」

僕「使い心地がいいとか、楽しいとか、人気があるとか……」

同僚A「それならアンケートでもよく見る回答です」

僕「では、なぜそう思ったのか?」

同僚A「え?……」

僕「使い心地の良いものを望むのは以前に使いにくいと感じたからなのかもしれません。楽しいものを望むのは最近楽しくないからなのかもしれません。人気があるのを望むのは買い物に失敗したくないからなのかもしれません」

同僚A「それがニーズの本当の理由(=本質)なんですね?」

僕「はい。本質を捉えさえすれば、アイデアはニーズに合わせて形をいくらでも変えることができます。例えば、使い心地の良いものがニーズであれば、自分の知識や情報の中で最高の使い心地の良いものがアイデアで生み出せるはずです」

同僚A「なるほど! 楽しいがニーズなら、自分の思う最高の楽しいを考えればいいんですね?」

僕「その通りです。目的は人それぞれですが、お客さまの心が分かれば、アイデアを生むのは難しくはありません」

同僚A「ああ、そうですね……私、お客さまの気持ちを分かったつもりになってたんだと思います。たぶん、こんなふうに思ってるんじゃないかって。だから、アイデアが出せなかったんですね」

情報は近くにある

僕「前に成功したから今回も似たような方法ですればまた成功するだろうというのは、ただの過信です」

同僚A「だから、いつもお客さまの反応を見るんですね」

僕「お客さまの心はずっと同じではないですから」

同僚A「世の中もどんどん変わっていきますよね……」

僕「Aさん、最初に高齢者の方のアンケートが集まらなかったと言ってましたが、自分の周りの人からアンケートを取るのもいいと思いますよ」

同僚A「そうですね。でも、ちょっと遅いですよ。あと1週間で締め切りなんですから」

僕「それなら僕の母に電話で聞いてもいいですよ?」

同僚A「本当ですか!」w

僕「ええ、ありきたりな回答しか得られないかもしれませんが、それも貴重な情報だと思います」

同僚A「ぜひ、意見を聞かせてください」

僕「ちなみになんですが、母の友だちにも聞いてもらえないか頼んでみます。10人くらいの意見はもらえると思います」

同僚A「あ、ありがとうございます。もう感激です。さすがです」

僕「感激もいいですが、僕の言ったアイデア発想法とニーズの理由を捉えることを忘れないでくださいね」

同僚A「えーっと、アイデアは自分とお客さまとの共同作業で……ニーズの本当の理由を探る、でしたよね。はい、やってみます」

僕「じゃあ、このあと、さっそく母に電話してみますね」

同僚A「うれしい! お願いします」

僕「ははは」w

同僚A「笑わないでくださいよ」w

僕「すみません。でも、Aさんが元気になってよかったです」w

同僚A「ありがとうございます。感謝が尽きないです」w

僕「まあ、やれるだけやってみましょう」

同僚A「はい!」

⚠️これはフィクションです。実在の人物や物事は一切関係ありません。

 

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高校中退→ニート→定時制高校卒業→フリーター→就職→うつ→休職→復職|うつになったのを機に読書にハマり、3000冊以上の本を読みまくる。40代が元気になる情報を発信しています。好きな漫画は『キングダム』です。^ ^

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