【対話形式】【4】〈新人教育〉が難しいのは、指導者の正義感が原因だった。

新人教育

 

——これは、僕と同僚Aさんとのたわいもない会話です。

 

■新人の教育指導で

僕「あ、Aさん、おつかれさまでーす」

同僚A「……おつかれさまです……」

僕「ん? 元気ないですね。何かありました?」

同僚A「……う……あ……はい、ありました……」

僕「そういえば、最近、新人の教育指導の担当になったとか。もしかしてそれですか?」

同僚A「……はい。もうワケが分かりません。……もうホントなんなんですか、アレは。聞いてるのか、聞いてないのか。分かってるのか、分からないのか。あー、もう腹立つ!」

僕「あらら……。だいぶストレス溜まってますね」

同僚A「溜まりまくりですよ。……あの新人Pさんのこと知ってます? ある程度の仕事はできるようになったんですけど、いつも無愛想でつんけんしてるし、たまに私に言い返してきたりするしで、かわいくないわ〜」

僕「はははは」w

同僚A「笑い事じゃないですよ〜。周りからは『私の教育がなってない』みたいに言われるんですから、たまったもんじゃないですよ」

僕「なるほどねぇ。大変なんですねぇ、新人教育って」

同僚A「どうすればいいのか分からないんです。……あーだこーだ言うんですけど、Pさんの返事はほとんど『はい、分かりました』としか言わないので本当に分かってる?って感じなんです」

■新人のPさんは

僕「分かってない?」

同僚A「全部じゃないですよ。所々ところどころで、私が言ったことと違うことをしてたりする時もあって……」

僕「本当に分かっているのか再確認はしないんですか?」

同僚A「だから、『今、私が言ったこと言ってみて』って言うんですけど、合ってる時もあれば合ってない時もあるんです」

僕「それだったら、毎回、再確認して間違えていないか見守るしかないですよね……」

同僚A「いや……、分かっってるんですよ、指導だから一部始終を見てあげないといけないことは……」

僕「……要するに、Pさんの指導に疲れてきたのですね?」

同僚A「そうなんです。……私、本当はあーだこーだ言いたくないんですよ。きっとPさんも『この人うるさいな』と思ってるはずですよ」

僕「仕事を教えてもらってるんだから、そんなふうに思ってないと思いますよ」

同僚A「だって、全然笑わないし。私が教育担当なのが嫌なんでしょうね」

僕「そんなことないですよ。Aさんは仕事はキッチリしてるってみんなから定評があるんですよ」

同僚A「え〜、ホントですかぁ……」

僕「本当ですよ。Tさん、Sさんも『新人の指導はAさんにやってもらうと安心できる』って言ってましたよ」

同僚A「そう言ってもらえたらちょっと自信が持てますけどね……」

僕「ていうか、Aさんは何に1番疲れるんですか?」

同僚A「1番ですか……。そうですね……。例えば……私が言ったことが分かってない場合、また同じことを言わないといけない時ですね。『さっき言ったのに』って思うとイライラしてしまいます」

■教え方が分からない

僕「うんうん、なるほどね。同じことを何度も説明するのは確かに疲れますね」

同僚A「おまけに、開き直ったみたいに『はい、分かってます!』って言うし……」

僕「そうか……Pさんはそんな感じなんですね」

同僚A「何? 逆ギレしてるの?って思いますよ。元はと言えばPさんが原因でしょ!って思いながらも、落ち着いた口調で説明してるんですよ、私」

僕「まあまあ。でも、Pさんが口で説明して分からなかったとしても、実際に失敗して理解できる場合もありますし。Pさんの思う通りにさせてあげるのも指導の一環じゃないでしょうか」

同僚A「失敗してもいいんですか?」

僕「失敗から学ぶことの方が多いものですよ。Aさんも大きな失敗から成長できた経験はありませんか?」

同僚A「ん〜……ああ、あ〜、あります、ありますよ。とんでもない失敗。あんなことがあったから本当に気をつけようと思うようになったんです」w

僕「ほら、あるじゃないですか」

同僚A「でも、失敗してほしくないじゃないですか」

僕「僕は今は失敗を経験するいい機会だと思っています。もしもですよ、Pさんが本番で取り返しのつかない大きな失敗して、立ち直れないくらい挫折してしまったらどうしますか?」

同僚A「それは……困りますよ。私の立場上も」

僕「だったら、先輩というフォローしてくれる人がいる、指導中に失敗した方が自分の間違いに気づけて挫折感も少ないし、いいと思いませんか?」

同僚A「そうですね。いずれは1人でやっていかなきゃならないですし……」

僕「それと、これは僕の個人的な想像ですけど、Pさんもいろんなことを考えながら仕事を覚えようとしてるんだと思いますよ」

同僚A「え? 教えてもらうだけなのに何か考えることってあります?」

僕「例えば、〈仕事仲間1人1人の顔と名前を覚えたり〉とか、〈お客さんも顔と名前と特徴も覚えないといけないし〉とか、〈職場の雰囲気に早く慣れたい〉とか、実際には分らないけど、無愛想なのは緊張しているだけなのかも知れませんよ」

同僚A「……緊張……ですか。う〜ん、そうか、緊張するか……」

僕「新人は仕事を覚えるのに必死だし、指導者は仕事を正しく教えるのに必死だし、初めは新人と指導者の思いは合わないものですよ」

同僚A「私も真剣に教えてるので、まあ、ちょっとそういうところはありますね……」

僕「AさんはPさんのこと、なんで言ったことをしないの!って思うかも知れないけど、Pさんからしてみたら言われたことをやってるつもりなのかも知れないんです」

同僚A「やってるつもりでも、間違ってたらダメです」

僕「最初なんだから1回や2回では覚えられないですよ」

同僚A「う……はぁ……難しいです、Pさんは」

僕「大丈夫ですよ。Pさんも日が経つうちに職場にも仕事にも慣れてきて、お互いの性格が分かるようになってきますよ」

同僚A「本当にそうなります?」

僕「なりますよ。人間関係なんてそんなもんです。もっとゆっくりでもいいと思いますよ」w

同僚A「ゆっくり……ですか。あんまり遅いのは嫌なんですけど、できるだけやってみます」

僕「うん。きっとうまくいきますよ」

同僚A「でもね。あ、ちょっと私が思ってること聞いてもらっていいですか?」

僕「ええ、もちろんですよ」

■もしも、分かってなかったら……

同僚A「もしも、私が言ったことが分かってなかったらどうしたらいいんですか? あれだけ丁寧に分かりやすく教えたことなのに全然分かってなかったら……」

僕「それはPさんの課題ですね」

同僚A「私の責任になりませんか?」

僕「僕はならないと思います」

同僚A「絶対、私の教え方が悪いって言われそうなんですよね。言われなくても心の中で思ってそうですし」

僕「そう思う人には思わせておけばいいんです。事実として、Pさんが仕事を覚えていないのはPさんの課題ですよ」

同僚A「でも……私は一生懸命教えたのにPさんが分かってないとなったら(上司の)Tさんに申し訳ないなぁと思います」

僕「Tさんは『Aさんの教え方が悪い』なんて言わない人だと思いますよ」

同僚A「私もTさんはそんなこと言わないと思いますけど、せっかく私に新人指導を任せてくれたのにと思うとTさんに申し訳ないです」

僕「Tさんが困るだろうと考えてるわけですね」

同僚A「そうです。その通りです。だから、私は一生懸命Pさんに分かるように教えたんです。なのに分かってるのか、分かってないのか、ハッキリしない顔してるし……」

僕「なるほどね。Aさんの話を聞いていて、言ってることがよーく分かりました」

同僚A「分かってもらえました?」

僕「はい。Aさんは自分がやってきた仕事を自分の経験を元に教えたのですね?」

同僚A「そうです。なぜそうするのか、理由も説明しました」

僕「なのにPさんが分かっていなかったらTさんに迷惑がかかってしまうし、Aさんも周りに悪く言われる」

同僚A「はい。よーいちさん。私、どうしたらいいか分からないです!」

僕「Aさん。さっきも言いましたが、これはPさんの課題なのでPさんが覚えていくしかありません」

同僚A「それだと、困ります!」

僕「話を聞いてみて、僕は、Aさんが本当に一生懸命Pさんに教えたのだと思いました。それだけ一生懸命教えたのなら、指導はもう十分だと思いました」

同僚A「え? 十分ですか。でも、分かってなかったら……」

僕「その時は、Tさんが教えるべきではないでしょうか。Aさんはやるべき教育指導は十分にしたのですから」

同僚A「ああ、そう言ってもらえて嬉しいです」

■人間なんて〇〇

僕「人間、誰でもミスしたり忘れたりするので、少々のことは大目に見てあげてもいいと思います。でも、指導期間が終わっても本当に分かっていないのであれば、上司であるTさんから指導してもらいましょう」

同僚A「本当にそんな感じでいいのでしょうか?」

僕「はい。AさんはAさんの役目をきちんとこなしています。それ以上のことは上司の役目です」

同僚A「は〜、そう思ったら気持ちがラクになります」

僕「新人も人それぞれなので、全員に合った指導方法なんてないと思います」

同僚A「……そう言われてみれば、完璧な教え方なんてないですよね。教え方が良くても分からない人は分からない」

僕「そうですよ。赤ちゃんと一緒ですよ。どれだけ厳しく育てても、100%親の思い通りの人間になることはないんです」

同僚A「ああ、そうですね。私って、Pさんを私の思い通りの人間にしようとしてたんですかね……」

僕「そこまでは思いませんが、Aさんの中で『私の言う通りにしなさい』という思いはあったのかも知れません」

同僚A「なんで私が言った通り出来ないの?って思ってました」w

僕「Pさんもいろいろ考えて仕事をしていると思うので、Pさんにも考えがあることを受け入れて、少し離れた位置から見守るぐらいがちょうどいいのかも知れませんね。そしたら、Aさんも腹が立ちにくいと思うんです」

同僚A「そうですね。少し離れて見守ってみます」w

僕「では、がんばってください」

同僚A「はい。ありがとうございます。よーいちさん。いつも話を聞いてもらって」

僕「いえいえ。いいですよ」

同僚A「今日はよーいちさんの言葉が聞けてよかったです」

僕「Aさんの気持ちがラクになって僕も嬉しいです」

同僚A「また話を聞かせてください」

僕「こちらこそ、また話を聞かせてくださいね」

同僚A「はい。お願いします」

僕「あんまり思い詰めないようにしてくださいね」

同僚A「また思い詰めてたらすみません」

僕「では、さようなら。また明日」

同僚A「さようなら。また明日」

⚠️これはフィクションです。実在の人物や物事は一切関係ありません。

 

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よーいち

高校中退→ニート→定時制高校卒業→フリーター→就職→うつ→休職→復職|うつになったのを機に読書にハマり、3000冊以上の本を読みまくる。40代が元気になる情報を発信しています。好きな漫画は『キングダム』です。^ ^

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