【対話形式】【9】〈サービス残業〉は間違った努力の結果だった。

サービス残業

 

——これは、僕と同僚Aさんとのたわいもない会話です。

 

サービス残業の多い会社

同僚A「よーいちさん」

僕「Aさん。どうしました?」

同僚A「あの……前から聞こうと思ってたことがあるんです」

僕「はぁ。なんでしょう?」

同僚A「なんでそんなに仕事が早いんですか?」

僕「え?」

同僚A「だってそうじゃないですか。他の人は時間外に残業してるのに、よーいちさんはだいたい定時で帰っちゃうでしょ」

僕「あ〜、まあ、そうですね。残業は嫌です」

同僚A「誰だって残業は嫌だと思うんですけど、みんな、仕事が終わらないから仕方なく残って仕事してるんですよ」

僕「そういえば、(しっかり者の)Fさんもこの前、深夜まで仕事をしてたみたいですね」

同僚A「そうですよ。それも最近はほぼ毎日2〜3時間以上残業してます。他部署のIさんなんて残業5〜6時間は当たり前のようにしてるみたいですよ」

僕「体壊さないようにしてほしいですね」

同僚A「本当にそう思います。いつか体壊すんじゃないかってこの部署では有名な話題です」

僕「上司に相談したりしないんですか?」

同僚A「してると思いますよ。相談しても、”君だけ仕事を減らしたり、自由な時間をあげたりしたら、他の人にその皺寄しわよせが来てしまうからね。特別扱いするのは難しいねぇ。悪いねぇ”って言われるんですよ」

僕「まあ、上司の立場からしたらごもっともな意見ではありますね」

同僚A「それなら仕事が時間内に終われるように工夫してくださいよ!って話なんですよ」

僕「わかりました、わかりました。ちょっと落ち着きましょう」

同僚A「よーいちさんはこの会社をどう思います? 腹立ちません?」

僕「〈サービス残業が日常化しているのに誰も解決しようとしない〉ということに対してですか?」

同僚A「そうです。この会社、おかしいですよ。残業している社員も、残業を当たり前みたいに受け入れちゃってて文句ひとつ言わない。常識がマヒしてます」

僕「確かに、残業してる人の口から”昨日残業しまして”と聞くことはないですね」

同僚A「でしょ? 上司もそれを知ってるのに何もしない。”じゃあ、どうすればいいかみんなで考えよう”と、見て見ぬふりはしてないよのアピールだけ」

僕「いい考えは出なかった?」

同僚A「出るわけないですよ。話し合って答えが出たら苦労はしません」

僕「どうしても時間内に終わらないから時間外に仕事してるんですからね……」

同僚A「だから、よーいちさんに聞きたいんです」

僕「何でしょう」

残業は誰のせい?

同僚A「よーいちさんはこの会社をいい会社だと思いますか?」

僕「そうですね。……結論から言って、僕はこの会社とみんなの残業は無関係だと思っています」

同僚A「な、なんでそう思うんですか?」

僕「まず前提として、会社は”残業してくれ”とは言ってないですよね。はっきり言ってしまえば、社員が勝手に残って仕事してるだけなんです。会社側はただ残業を黙認してるだけだと思います」

同僚A「それってなんかズルくないですか。”残業はしなくていい”と言っておいて、たくさんの仕事を押し付けてるんですよ」

僕「でも、社員100人いたら100人とも必ず残業しているのでしょうか?」

同僚A「それは……」

僕「おそらく100人中10人、もしくは15人くらいでしょう。もしも100人中100人が毎日必ず残業しているのなら働き方を改める必要があると思います。そんなことしてたらいずれ会社は傾いていくでしょうから」

同僚A「じゃあ、会社が傾かなければ、残業は改善されないってことですか?」

僕「そうとは言ってません。残業の原因を会社に求めるのではなくて、自分たちの中にあるものとして自覚しないと、いつまで経っても解決されないというのが僕の考えなんですよ」

同僚A「えー! それってまるで……」

僕「ええ、そうですよ。残業の原因はその人の仕事が遅いから起きることなのです」

同僚A「それ、ちょっとひどくないですか? みんな、頑張ってるのに」

僕「それ! それですよ。その〈頑張ってる〉がそもそもの間違いなんですよ」

同僚A「どういうことですか? 頑張ったらダメなんですか?」

僕「いえいえ、そうじゃなくて頑張り方を変えるんですよ。そうすれば仕事が速くなるんですよ」

同僚A「え? 本当ですか。是非、その方法聞かせてください」

仕事を簡単に速くする方法

僕「いいですよ。……えーっと何から説明しようか」

同僚A「簡単に速くなる方法が知りたいです」

僕「だったら、パソコンを覚えることですね。今の仕事が2倍〜10倍以上は速く終わりますよ」

同僚A「いやいや、私、パソコンはできないんですよ。昔っから機械音痴で、テレビの録画もよく分からないくらいなんです」

僕「そうなんですか」

同僚A「っていうか、最近、パソコンもスマホも難しくてついていけません。私の周りでも同じように”こんなに難しくしたら操作できない人が増えて困るだけだよ。特に高齢者の人なんてそうだよ”って言ってます」

僕「それは大きな勘違いだと思います」

同僚A「そうですか。私も苦手な方なので、事あるごとに困ってます」

僕「例えばね、銀行にATMができた時、”こんなに操作を難しくしたら操作できない人ができて困るだけだ!”と怒ってる高齢者がいたとしたら、Aさんはどう思いますか?」

同僚A「それは……”ATMの操作くらいは覚えなよ”って思います」

僕「ですよね。でも、その高齢者の人からすれば、ATMの壁は山のように高いわけです。ATMのタッチパネルをタッチして、キャッシュカードを指定の場所に挿入し、『引き出し』か『預かり』か『振り込み』かを選択し、その金額を入力し、暗証番号を入力して、やっと手続きが完了するのです」

同僚A「それくらいは当たり前のことですよ」

僕「そう、当たり前のことなんです。昔は給料は手渡しだったのが銀行振り込みになり、今はATM、インターネットバンキング、暗号資産(仮想通貨)もあって、24時間手続きができます。世の中はどんどん便利になってるんですね」

同僚A「私ついていけないです……」

僕「まとめると、”それくらいの操作は覚えなよ”ってことなんです。パソコンもスマホも同じです。知れば知るほど作業はラクになります」

同僚A「いや、無理ですよ〜。確かに、夢の機械って感じはしますよ。〇〇えもんの秘密道具みたいですよね、最近のハイテクは。でもね〜、勉強苦手なんですよ〜」

僕「そんなこと言ってたら、Aさんがお婆ちゃんになった時、1人でお金を降ろせなくなっちゃいますよ」

同僚A「え! それは困るし……恥ずかし過ぎる」

まずやってみる

僕「もう言い訳はこれくらいにして、実際にやってみましょう。そうすれば、”あれ? こんなものか”ってなりますよ」

同僚A「よーいちさんはできる人だからいいですけど、私はできない人なんですよ」

僕「パソコンはどんな仕事でも使うことが増えているので覚えて損はないですよ。仮にひとつの作業を1分短縮できたとしたら、10個の作業で10分短縮、100個の作業で100分短縮できることになります」

同僚A「でも、私、パソコン触るのがそもそも怖いんです」

僕「それは”このボタンを押したら次、どうなるかが分からない”ってことですよね?」

同僚A「その通りです」

僕「その原因は、パソコンやインターネットの仕組みを知らないからです。例えば、車の操作を知らない人が車を運転しようとしたら”怖い!”と思うのと同じです」

同僚A「私、車はすぐに運転できました」

僕「ひょっとして、子供の頃、家族が運転する車に乗ってたんじゃないですか?」

同僚A「あ、そうですね。毎日、父の車に乗せてもらってました」

僕「少しでも知っていると抵抗感が薄れるものです。もし、他の人ができたらAさんもできるとは思いませんか?」

同僚A「(仲の良い同僚)Uちゃんが出来たら私も出来そうな気がします」

僕「だったらこう想像してみてください。実は今、Uちゃんは僕にパソコンを教わっていてメキメキと実力をつけている。それを見た(上司の)Tさんは次の大きな企画にUちゃんを参加させようと言っている。……さあ、Aさんはどうする?」

同僚A「私、やります! 負けたくありません」

僕「ははは」

同僚A「こんな気持ちでパソコン始めていいんですか?」

僕「動機は何だっていいんです」

同僚A「っていうか、そもそもなんですけど、パソコンを覚えるだけで仕事が速くなるんですか?」

僕「もちろんです。さっきも言いましたが、2倍〜10倍以上は速くなります」

同僚A「何ヶ月も経っても私、出来るようになってる自分が想像できないんですよ」

僕「僕の個人的なイメージの話ですけどね。パソコンは飛行機なんです」

同僚A「パソコンが飛行機!?」

僕「そうです。目的地に向かう時、パソコンなら飛行機のように一瞬でたどり着くことができるんです。だったらみんなも飛行機を使えばいい。なのに、使い方が分からないから歩いて行こうと頑張るんです。何時間かかろうとも。せめて自転車なり自動車を使えばいいのに、それも使わない。だから時間がかかってしまう」

同僚A「はぁ〜、なるほど。よーいちさんにはそう見えるんですね」

僕「あくまでイメージの話ですが、旅行に行くのに”手続きが面倒だ”と思うより旅行の楽しさを考えるでしょ?」

同僚A「そうですね。”着いたらどこで何しよう”とか、”何食べよう”とか。そんなことで頭がいっぱいですね」

僕「パソコンも旅の手続きのようなもので、”この書類が出来たら誰に見せよう”とか、”今日は早く帰ろう”とか思いながらするとそれほど辛くはありません」

人に聞くより、人にさせるより

同僚A「なるほど……。ちなみに自転車と車は何の比喩なんですか?」

僕「そうですね。自転車は、誰かに相談したり誰かの力を借りることですね。車は、自分の仕事を誰かにしてもらうことですね」

同僚A「ああ、分かる〜。そういう人いてる〜。すぐに誰か相談して自分で考えない人! 自分の仕事を他人に押し付けて丸投げする人!」

僕「でも、そんなふうに嫌われるリスクを背負うよりも、自分でパソコンを覚えた方がダントツぶっちぎりで速い飛行機になれるんです」

同僚A「それはよーいちさんだから、ということはないですか?」

僕「そんなことはありません。僕だって最初から分かっていたわけではありません。コツコツ覚えた結果です」

同僚A「でも、ヨーイチさんはだいたいのことを1人でしてしまうじゃないですか。本当にスゴいと思います」

僕「あれは、あれこれ考え悩むより行動をしているからです。」

同僚A「考えないんですか?」

僕「悩むのは5秒と決めています。例えば、”レストランでAランチとBランチどっちにしよう”と30分悩んだとしても、結局は最初にいいなと思ったAランチを選ぶのです。だったら、悩んだ30分はなんだったのか……」

同僚A「無駄な時間でしたね」

僕「そうですよね。今日はAランチにして明日はBランチにすればいいだけの簡単な問題なんです」

同僚A「なるほど。確かにそうですね」

僕「だから、パソコンも”できるかな、できないかなぁ”と思いながらではなくて、”パソコン覚えるぞ!”って気持ちで学ぶことが早く身に付くコツです」

同僚A「ああ、なんか、できそうな気がしてきました」

僕「よかったです。では、早速やりましょう」

同僚A「はい。パソコン覚えるぞ!」

僕「いいですね。その意気です」

同僚A「私がパソコンを覚えて、みんなに教えてあげるんです。そうしたら、会社の残業は減らせるかもしれない」

僕「それはいい考えですね」

同僚A「よーいちさんも手伝ってくださいよ」

僕「え……では、条件をひとつ」

同僚A「なんですか?」

僕「……残業しないこと」

同僚A「あっ……ははは」

僕「ははは」

⚠️これはフィクションです。実在の人物や物事は一切関係ありません。

 

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よーいち

高校中退→ニート→定時制高校卒業→フリーター→就職→うつ→休職→復職|うつになったのを機に読書にハマり、3000冊以上の本を読みまくる。40代が元気になる情報を発信しています。好きな漫画は『キングダム』です。^ ^

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