まさに
神を疑う男
産業革命によって社会の規範はは変わりつつあった。教会に生まれ育った少年は、民衆に軽んじられていく神と、そんな神に従順な父の行動に疑問を抱くようになる……。
映画『マトリックス』を見ているような感覚でした。
今回はその中から『ツァラトゥストラかく語りき』を簡単5分でご紹介します。
結論
この本が教えてくれるのは、自分の価値観です。
感想
『ツァラトゥストラかく語りき』との出会い
『人間的な、あまりに人間的な』を読み、ニーチェの思想に感銘を受けました。
このタイトルの意味をまったく知りませんでした。
だから初めて見たとき、「〈ツァラトゥストラ〉って何?」「危ない本なんじゃない?」と、ヤバいものを見てしまうようなゾクっとした感覚がありました。
簡単あらすじ
神は死んだ
神は妄想であり、作品であった
幸福への妄想が、神々と背後の世界を作ったのだ
悪魔もいなければ地獄もない
ただ在るのは自我
しかし あなたがたの日常は自我を殺すことで成り立とうとしている
神は死んだのだ
聞くべきは死んだ神の言葉ではなく、自我の声である
自我は欲している
自らの意思を確立する道しるべを
それは超人への道しるべ
19世紀——世界は変革のなかにあった。
機械の導入による大量生産。農業技術の飛躍的向上。食糧生産の増加。人口の増加。階級の変化。
産業革命。農業革命。生活革命。
さらにマスメディア時代の幕開け。
あらゆる知識と情報は人々の価値観を多様化させた。
世界は神ではなく、人間が支配していた。
——「オギャア、オギャ」
路地で赤ん坊の鳴き声がコダマする。
その子は捨てられていた。
神父の夫妻は慈悲の心からその子を引き取った。
数年後
教会で掃除をする〈アレックス〉に〈ツァラトゥストラ(=以下、ツァラ)〉は小石を投げつけた。
「教会に捨て子がいるなんて噂、気分わりーんだ。早く俺んちから出て行けよ」
と、そこに神父がやってきます。「なぜアレックスが掃除をしているんだ。今日はツァラが当番のはずだ」
神父は〈ツァラ〉に「〈アレックス〉にもっと優しくしてあげなさい」と言い聞かせます。
ある日、神父は〈ツァラ〉と〈アレックス〉を連れて町へ出かけました。
「最近は教会に来る人も少なくなって、わしらのほうからおもむくことも多くなったな……」と神父は呟きます。
家々を回り、十字架を掲げて神の言葉を唱え、お布施をもらう。
〈ツァラ〉はこの様子を見てこう言います。「最近思うんだけど〜、俺たちってさあ……物乞いみたいじゃない?」神様は偉いはずなのにまるで同情されてるみたいだと言います。
神父は〈ツァラ〉の頬を叩きます。「知ったふうなことを言うな」
叩かれた〈ツァラ〉は何も言わず、どこかへ走って行ってしまいました。
気がつけば、そこは貧民街。
貧しい暮らしをしている人々が目に入ります。
すると、3人の少年グループがいきなり〈ツァラ〉が首から下げる十字架を無理矢理に奪い取ります。
そして、その中の1人がこう言います。「あー!! いいこと思いついた! これを持ってさー、適当なこと言ってまわればさー……金もらんじゃね!?」
ある礼拝の日、教会にはたくさんの村人が集まり、神父の言葉を聞いていました。
「神のご加護があらんことを」
神父はぶどう酒を村人に配ります。
——と、1人のお婆さんがぶどう酒を一気飲みをするとおかわりを要求し、あることないことを言い始めたのです。
「捨て子にあげるパンとぶどう酒はあっても年寄りにやるぶどう酒はないのか! 施しで太った捨て子は〈ツァラ〉と〈アレックス〉のどっちだ!」と。
止めようとする村人とお婆さんと〈ツァラ〉も言い合いになり、教会内は騒然となります。
「や、やめてください!!」
神父の妻が涙を流し歩みよります。
そして、〈ツァラ〉を抱きしめ言いました。「ごめんね……」
神父は村人をお引き取り願いました。
すると、神父の妻は語ります。
月が綺麗な夜、教会の近くであなたを見つけた、と。
〈ツァラ〉は言葉が出ません。
〈アレックス〉は静かに微笑んでいました……。
キーワード〈永遠回帰〉
しばらくして〈ツァラ〉は家を出ます。
この時、〈ザロメ〉という怪しい女と出会います。
〈ザロメ〉は何もかも知っているふうな様子で〈ツァラ〉に『永遠回帰』を伝えます。
永遠回帰とは、永遠に同じ人生を繰り返すこと。
同じ時代、同じ境遇、同じ人物として同じ家に生まれ、そっくりそのままの人生を永遠に繰り返すと言います。
この輪から抜け出す方法はたった1つ——自己を克服すること。
自己を克服する
ニーチェが言いたいのは、誰かの価値観をよりどころにして生きるのは本当の意味で自分の人生を生きていない、という虚無です。
その代表的な例えとして〈キリスト教〉の価値観が時代によって変化していく様子を描いていると思いました。
何かによりかかっていると気持ちがラクになります。
例えばそれは
●人間関係(友だち・恋人・師弟など)
●芸能人(アイドル・スポーツ選手・お笑い芸人など)
●権威(地位・経済力・学歴など)
●組織(会社・グループ・宗教など)
●世間(法律・規則・道徳)
しかし、これらは絶対的ではありません。
実は、心の変化・社会環境の変化によって、いとも簡単に壊れたり消えてしまうという脆さが隠れています。
信じていたものがなくなると、自分自身や人生に意味を見出せなくなってしまいます。
だから、これらが壊れたり消えたりすると、また別の価値観を探し求めることをずっと繰り返してしまうのです。
しかし、これでは根本的な解決にはならないため、ニーチェは「自分の価値観を思い出せ!」と強く言うのです。
読み方
哲学書とは思えないダークファンタジーな物語です。
「永遠回帰」「超人」など、理解しづらい言葉が出てきますが、読み進めていけば、そのイメージがつかめてきました。
ホラー要素が強い作品ですが、そのおかげでズドーンと胸を打ちました。
最後に
まずは【まんがで読破】を読むことをオススメしていますが、書籍で読むのもいいと思います。
書籍は、図書館や中古本など、たくさんあると思います。
ぜひ探してみてください。
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