まさに
激動の日本
江戸時代から明治時代にかけての大転換期。 木曽路本陣(旅館)の当主〈半蔵〉は新時代の到来に期待を抱くが——。
僕は【まんがで読破】の大ファンで、全139冊読んでいます。
今回はその中から『夜明け前』を簡単5分でご紹介します。
結論
この本が教えてくれるのは、伝統的価値観・慣習のもろさです。
感想
『夜明け前』との出会い
名前をチラッと聞いたことがあるくらいでした。
新時代の夜明けはまだ来ない、という話のようです。
簡単あらすじ
木曽路はすべて山の中である——
馬籠宿は江戸と京都を結ぶ中山道のうち急峻な峠道の木曽路に位置し、参勤交代の諸大名な日光例弊使などが通行した。
宿役人の業務は休泊施設の提供のほか、荷物運搬の馬の世話から荷物の扱いまでと……一通行あるごとに心づかいも多い。
日光例弊使……江戸時代、天皇の命により神社などに進物を供えた使いの者。
作中より引用
参勤交代とは、江戸時代において各藩の主である大名や交代寄合を交代で江戸に出仕させる制度。
Wikipediaより引用
〈青山半蔵〉は木曽路馬籠本陣(旅館)の1人息子だった。
この日、父〈吉左衛門〉から「妻籠宿の〈お民〉との縁談が決まった」と聞かされた。
半蔵は国学を学びたいと思っていた。国学とは、日本古来の学問で、歴史・文学・歌・法律・儀式などがある。(言うなれば、古き良き日本を誇りとする学問である。)
しかし、いずれは当主になる身。いつまでも学問ばかりしてはいられない。でも、「働きながらでも学問はできる」と、この時、半蔵はそう思っていた……。
嘉永6年(1853年)——
この翌年、日米和親条約が結ばれ、200年以上続いた鎖国が終わる。
時代は少しずつ着実に変化していた。
平田派入門
安政3年(1856年)
〈寿平次〉がやって来た。寿平次はお民の兄で、妻籠宿の当主だ。
「半蔵さん。一緒に旅へ行きませんか?」
何でも、相州(=相模国の別名。現在の神奈川県)の三浦から来た旅人が実は親類だと分かったと言うのだ。妻籠本陣の親類ということは、同じ祖先を持つ馬籠の青山家とも血のつながりがあるということ。なので、一緒に訪ねに行かないかと誘ったのだ。
父からの許しも出て、半蔵は喜んだ。
なぜなら、偉大な国学者〈平田篤胤先生〉の跡継ぎの〈平田鉄胤先生〉に会えるからだ。いつか平田門人(=弟子)になる……。それは半蔵の長年の夢だった。
数ヶ月後、半蔵と寿平次の2人は相州へ向かう旅に出た。
そして11日目、江戸に着いた。
翌日、半蔵は平田鉄胤から入門の許可が下り、その日は有頂天だった。
横須賀の親戚宅に寄り、寿平次が言っていた親類に会うと、半蔵たちは帰郷した。
尊王攘夷思想
万延元年(1860年)
最近、江戸の攘夷運動がすごい流行しているらしい。
攘夷……外敵を撃ち払って入国させないこと。外国人を追い払って通行しないこと。特に、幕末の外国人排斥運動のこと。
コトバンクより引用
2年前(1858年)の日米通商条約によって日本は混乱していた。
物資の少ない日本では品不足が起こり、物価が高騰した。それに加えて、当時の日本では外国よりも少量の銀と金が交換させられていたため、日本の金が海外に大量流出していた。
さらに今年、幕府の後任争いの中、〈井伊直弼〉が暗殺された。江戸では外国人がらみの事件が多発していた。
今の幕府には攘夷派や諸藩を抑える力がない。となれば、幕府に代わって天皇による統治が近いのかもしれない。
幕府体制の揺らぎ
文久元年(1861年)
幕府は朝廷との関係回復と幕藩体制の立て直しのため、公武合体政策を推進。孝明天皇の異母妹・皇女〈和宮〉と第14代将軍〈徳川家茂〉との婚儀が決行された。
〈和宮〉は京都から江戸へ中山道を通り、木曽路を後にした。
文久2年(1862年)4月
京都で薩摩藩が同士討ちした。
薩摩藩の〈島津久光〉が幕府改革を天皇に進言するために上洛した。しかし、尊王攘夷派の薩摩藩士はこれを討幕だと誤解し、挙兵を企てた。そのため、久光は公武合体派によって彼らを討たせた。
また、同年1月には老中〈安藤信正〉が尊王攘夷派の水戸藩士に斬られた…。
文久3年(1863年)
長州藩は外国船を砲撃。その後、長州藩は公武合体派によって京都から追放された。
ここ数年の幕府に対する諸藩の動きは活発化していた。
そして、新時代へ
慶応2年(1866年)
徳川家茂の死後、徳川慶喜が15代将軍に就任。同じ頃、孝明天皇が崩御し、睦仁親王が皇位を継承する。
大政奉還、王政復古の大号令、明治維新によって、日本の社会情勢は大きく変わっていきます。
しかし、民衆の生活は楽にならず、古き良き日本を大切にしない新政府に対して、半蔵は不満は募ります。そして、夜明けの見えない新時代と自分の理想とのズレが次第に大きくなり、日本の未来を憂い考え込むようになっていくのです。
読み方
半蔵の視点と歴史が組み合わさった構成で描かれています。
歴史を知らない人からすれば少々読みにくいと思いますが、簡単に言うと「新時代っていうから良くなると思ったのに、かえって悪くなってるじゃないか!」と、時代の流れによって価値観を見失ってしまった男の話なのです。
著者の島崎藤村先生は実父をモデルにされたとのことですが、何を訴えて残そうとしたのか。そう思って読むと、心にじわっと染み入るものがあります。
最後に
まずは漫画で読むことをオススメしていますが、書籍で読むのもいいと思います。
書籍は、図書館や中古本など、たくさんあると思います。
ぜひ探してみてください。
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