まさに
戦争体験記
南太平洋、ニューブリテン島。ジャングルに展開する500人の部隊に配属された〈丸山二等兵〉。そう……ここは全員が天国にゆく場所だったのだ——。

■結論
この本が教えてくれるのは、戦争の狂気です。
■あらすじ
昭和18年末 ニューブリテン島 ココボ——
「こんどいくところはパパイヤのようけある、天国みたいなとこらしい」と赤崎が言うと、丸山は「俺もそんなところへ一度いってみたかったんだ」と言った。
2人がぶらぶら歩いていると、上等兵に「おい、お前ら、なにしてるんだ」と呼び止められた。「ピー屋に行ってこい」と言うのだ。ピー屋とは慰安所のことだ。
日本の慰安婦
第二次大戦終結までに主に日本軍人を相手として、また連合国占領下の日本においては連合国軍兵士を相手として、専用施設「慰安所」において性労働に従事した女性
Wikipediaより引用
——慰安所の前には行列ができていた。数十人はいるだろうか。
「皆さん、もう五時ですからおしまいですよ」
慰安婦はそう言うと[女郎の歌]を歌い始めた。兵士たちも一緒になって歌う。
日本から遠く離れたニューブリテン島の前線にやってきた日本の若者たち。しかし、することといえば陣地構築の重労働。兵士たちは空腹に耐えかねて、そこらに生えている木の実を食べようとするが苦くて食べられない。
すると兵士の1人が言った。
「小川は今朝死んだぞ」
そしてまた仲間が死んだ。ワニに喰われたらしく、次の日、川に下半身だけ浮いているのが見つかり、墓を作ってやるため陸まで引き上げた。
すると兵士の1人が言った。
「それにしてもくせえなあ」
何も戦争で殺されるだけが人間が死ぬ道というわけでもない。作業は続行された。
ある雨の日、敵軍の空爆によって、加山が撃たれて倒れた。
衛生兵は、「ちょっと加山の指を切るから手伝ってくれ」と言った。遺骨を作るからだという。円匙(シャベル)で指を切断した後、加山はそのまま放置された。
■ビビビビビン
丸山は新兵ということもあり、よく上等兵からビンタされた。
口答えしたり、気の抜けた返事をすると、容赦無くビンタを浴びせられた。年が明けても、敵の空襲があっても、何かにつけて丸山はよくビンタされた。
——そんなある日、敵軍が陣地を攻撃し始めた。
それは日に日に酷さを増し、ミサイルが陣地を禿山にするほどだった。情報によると、敵輸送の船団がこの方面に向かっているらしい。
戦闘配置の命令が下された。第一小隊、第二小隊、第三小隊に分かれて敵陣地に斬り込む。がしかし、敵の襲撃を受けて仲間の兵士がやられていく。一人、また一人と、撃たれて、吹っ飛ばされて倒れていく。
戦局は次第に不利になっていった。
■玉砕の夜
「玉砕あるのみ」
支隊長は、楠木正成を崇拝する人物だった。楠木正成は数万の敵にわずか500人で戦ったという。
彼が命じるのは”玉砕”。敵に対して死を顧みずに突撃、つまり、自決と同じ意味だった。
玉砕(ぎょくさい)は、玉のように美しく砕け散ること、指導層が提唱する大義、名誉などに殉じて潔く死ぬこと。
Wikipediaより引用
その夜、兵士たちは最後の酒を飲み、陽気な歌を歌って踊った。
そして、突撃は開始され、部隊は全滅した。丸山二等兵の顔は爛れ、舌は膨れ上がって、目は飛び出そうになって……。
誰にも見守られることもなく、何かを言い残すこともなく、命は消えていく。ただ死ぬだけ。
■1番恐ろしいこと
読んでいて常に思ったのは狂気です。
戦死が正当化され、意見を交わしたりするのは一部の上の人間で、下の者には発言権すらない。”天皇は神様”という根本的な思想があり、それに逆らうことは許されない。
今の人が読んだから頭上に「???」が浮かぶに違いない。別世界に来たような気がするだろう。
犠牲になるのはいつも国民。
お国(天皇)のために戦って死ぬのが本望と思うしかないことが本当に恐ろしい。しかも、それに日本国民全員が従っているのも気味が悪い。
そんな狂気が渦巻く中で時折見られる”歌”が悲しくもおかしくて、日本人の意地のようなものを垣間見たような気がした。どんな世界であっても、人間は人間なのだ。死んで喜ぶ人はいない。
総員玉砕せよ! 新装完全版 (講談社文庫) [ 水木 しげる ] https://books.rakuten.co.jp/rb/17169936/
■ハイライト
・戦争の内情
・リアルな会話
・ビビビビビン
・歌
・簡単に消えゆく命
・全滅、そして……
喜びや悲しみや怒りや笑い、時にぼんやりと楽観的な様子がいかにも人間らしく見え、実際にその場にいてるような気持ちになった。
戦争を追体験できて本当によかったと思う。


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